行き遅れた私は、今日も幼なじみの皇帝を足蹴にする

九條葉月

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御簾

 ま、先に雷獣を捕まえましょうか。お高い壺でも倒されたら大変だし。

「――――」

 雷獣の動きを視て、未来位置を予測。その場所に転移して雷獣の尻尾を掴む私だった。手足の爪で床を引っ掻かれると傷つくので、そのまま持ち上げる。

『モォオオォオ!』

 尻尾を鷲づかみにされ吊り下げられたのが不満なのか暴れ回る雷獣だった。身体をくねられるだけでなく、バチバチと稲妻まで放っている。

 ははは、だが甘い。そんな雷撃、この私に効くはずがないでしょうが。

『モォオォオオォオ!』

 余裕綽々な私が気にくわないのかさらに雷を強める雷獣。

「きゃああ!?」
「なによもう!?」
「なんでこんな室内に稲妻が!?」

 慌てて逃げ惑う侍女たち。別にそんな慌てなくても。ちょっと痺れるくらいなのに。

 さーって、どうするか。もう面倒くさいから雷獣を『きゅっ』と気絶させちゃうかなぁと考えていると、

「――騒がしいわね」

 そんな声が室内に響き渡った。御簾の向こう側から。

 ほほう? なんとも威厳たっぷりな声。『その人が歩んできた人生の重みが声には乗るもの』と教えてくれたのは師匠だったかしら? それを信じるなら声の主は中々波瀾万丈な人生を送ってきたようだ。

 声から判断するに、年齢は40~50代くらい? 初老とか老人と言われてもおかしくはない年齢かしら。まぁ貴人は過労しないし良いものを食べているので普通より若々しくてもおかしくはないけれど。

「……梓宸。あの人が太妃様?」

 ちょうど近くにいた梓宸に尋ねてみる私。

「あばばばば」

 おん? なに? ふざけてるの? 私相手にふざけるとはいい度胸――とは思ったけど、雷撃が当たって痺れているだけらしい。軟弱な。私なんて素手で尻尾を掴んでいるというのに。

『……モォオオオォオ……』

 なぜだか呆れたような目を向けてくる雷獣だった。何を言いたいのかイマイチ分からないけど、動きと雷撃が止まったからまぁいいか。

 となると、喫緊の問題は御簾の向こうにいる人物(推定太妃様)か。

 ま、私に敵意を抱いているっぽいし? ここは初手から視て・・しまいましょう。むーん、ぬーん、ぴかーん……。

「……うわぁ」

 思わず声を上げてしまう私だった。うわぁ。

 御簾を挟んでいるけれど、私の『うわぁ』顔はよく見えたらしい。

「この哀家アイジャを前にして、ずいぶんと面白い反応をする小娘ね?」

 哀家というのは、偉い未亡人の一人称だっけ? たしか『夫がいない憐れな人』みたいな意味だった、ような気がする。

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