行き遅れた私は、今日も幼なじみの皇帝を足蹴にする

九條葉月

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文官


 いきなりの犯人扱いに私が混乱していると、

「――あの男、太妃派の文官ですね」

 すすすっと近づいて来た宰相・維さんがそんな情報を教えてくれた。

「では、私を嵌めるために狂言を?」

「そんなところでしょう。……排除することも可能ですが、いかが致します?」

「ま、自分で何とかできるから平気ですよ」

 いざとなれば安心安全な神仙術で洗脳――じゃなくて、改心させればいいし。

 ちなみに。この場には大臣とやらと会食していた梓宸もいたけれど、特に動く様子はなかった。先ほど『余計なことはしなくてよろしい』と言っておいたので静観しているのでしょう。

 ここで動いてくれれば好感度ポイント上昇するというのに。そういうところだぞ梓宸。

 まぁ肝心なときにダメダメな皇帝は放置するとして。

 この場の雰囲気としては「この女が犯人か……?」という訝しみの目と、「いきなり何言ってんだコイツ……」という呆れの目が半々ってところかしら? 意外とみんな冷静というか、乗ってこないわね。

 まぁ、普通に考えれば私が毒を混ぜられるはずがないというのは分かるか。この前の毒殺未遂があって監視は厳しくなっているだろうし。

 自分に賛同する者が少ないと察したのか、太妃派の文官だという男はさらなる証拠(?)を積み重ねた。

「大臣は毒検知の指輪(指環)をしていたのに毒を食べた! この女が偽物の指輪を渡し、油断した大臣を毒殺しようとしたのだ!」

「……うーん?」

 指摘ツッコミしどころが満載なので、私は一歩前に出て文官とやらと向かい合った。

 女が向かってきたのが意外だったのかたじろぐ文官。いや、弱っ。

「私はこの大臣を治療しましたが。もし私が犯人だとして、なぜ毒殺しようとした大臣を救ったのですか?」

「そ、それは……事件を起こし、それを解決することで皇帝陛下の歓心を買おうとしたのだろう!?」

「なぜこんな男の歓心を買わなければならないのか」

「な……っ!?」

 皇帝陛下への暴言が予想外だったのか言葉に詰まる文官。あー、残念。あのまま勢いに乗って追求すれば、もうちょっと賛同者も増えたかもしれないのにねー。

「私がどうやって毒を混ぜたと?」

「そ、それは……料理人を買収したのだろう!」

「証拠は?」

「むっ」

「……維さん。料理人と、料理を運んできた侍女の確保を。もしかしたら脅されて虚偽の証言をするかもしれませんし」

「安心して欲しい。すでに別室で取調中だ。信頼できる人間の手によってな」

 さすが維さん仕事が早い。……最後の発言だけ声を絞っていたのは、こちらが証言を捏造していると思われないためでしょう。そつがないわね。

 とても仕事のできる維さんに感心しつつ、再び文官に向かい合った。

「偽物の指輪を渡したと言いますが、私が作った指輪は皇帝陛下に献上し、暗部が試験したあと陛下自らの手で下賜されたものです。――まさか、皇帝陛下が偽物を用意させ、大臣の毒殺を計ったと?」

「な!? い、いや、そんなことは言っておらん!」

 陛下の名前が出てくるのは予想外だったのか、顔を真っ青にして動揺する文官だった。……つまんない。どうにも格下すぎるわ。やっぱりこう海藍様や太妃様みたいに打てば響くような人だったり、子猫みたいに大げさな反応をしてくれる相手じゃないとねぇ。


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