行き遅れた私は、今日も幼なじみの皇帝を足蹴にする

九條葉月

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先帝

 なんやかんやあったあと。後宮に戻ってきた私だった。

「――後宮というか宮中って魑魅魍魎しかいないのですか?」

 お茶会相手の瑾曦様と雪花に愚痴る私だった。

「なんだい? また何かやらかしたのかい?」

「なんで私がやらかす側なんですか……」

 簡単に今日あったことを説明する私。雷獣を追いかけていたら太妃様と遭遇してー、医局に行って患者を一人治療してー、大臣の毒殺未遂事件に巻き込まれてー、っと。ほーら完全に被害者じゃないですか!

「……よくもまぁ」

「一日でそれだけの騒動トラブルを……」

 まるで私が悪いみたいな目をする瑾曦様と雪花だった。あれー?

「というか、太妃様の宮に突撃して、喧嘩を売るって……」

「しかも皇帝陛下と面会している最中に……」

 なぜか呆れられてしまう私だった。あれー?

「いやいや、太妃様は中々話が分かりそうな人物だったですよ? 打てば響くというか」

「あの女傑にそんな感想を抱けるのはアンタくらいのものだよ」

「気に入らない妃は次々に排除したと聞きますのに……」

「いやぁ、実際会って話してみると意外とね? いい感じでしたよ?」

「いい感じだと思っているのはアンタだけじゃないのかい?」

「毒殺未遂事件が太妃様の仕込みなら、思いっきり排除されそうになってますし……」

 ジトーッとした目を向けられてしまう私だった。あれー?

「でもでもー? やっぱり一筋縄でいかない人の方が楽しいですよね? 海藍様とか。子猫とか」

 まぁ、その意味で言うと瑾曦様と雪花もそうなんだけどね。さすがに本人の前では口を噤むのだった。

「…………」

「…………」

 もはや何も言ってもらえない私だった。あれー?


                  ◇


「ところで。先帝ってどんな人だったんですか?」

「なんだいいきなり?」

 ちょっと嫌そうな顔をする瑾曦様だった。楽しい話題ではないみたい。

「いえ、よく話題に出てくる割にあまり知らないなーっとですね」

「あぁ、まぁ気になるか。それに皇后になるなら知っておいた方がいいからね」

「だから、皇后になんてなりませんって」

「はいはい」

 私の将来を「はいはい」で済まされてしまった。解せぬ。

「そうだねぇ。先帝陛下についてはどれだけ知っているんだい?」

 私と雪花に視線を向ける瑾曦様。年齢的に雪花もよく知らないと判断したのでしょう。

「そうですねぇ。欧羅趣味の噴水を作るために上水道を整備したんですよね?」

「いきなり出てくるのがそれかい」

 なぜか呆れられ以下略。だってこの前縮地に失敗して「ばしゃーん」しましたし。

「雪花はどうだい?」

「そうですわね。噂程度の知識ですが。最初は『賢帝』として多くの民に慕われていたそうですわね。革新的な政策を次々に打ちだして。欧羅との交易も公式にお認めになって。――しかし、晩年には不老不死を追い求め、怪しげな道士と交流を持つようになったと聞いています」

「おっ、さすが雪花。ちゃんと勉強しているようだね。そう、不老不死を求め始めてからこの国の内政は滅茶苦茶になった。欧羅趣味を追い求めたり、怪しげな本を収集したり、道士とその関係者をまつりごとで重用しようとしたり……。ま、賢帝が晩年には暗君になるというのはよくある話だね」

 賢帝ねぇ?
 たしか梓宸も賢帝と呼ばれていたはず。
 これは、梓宸が将来暗君になる可能性もあったりして? ほら、実の父親が暗君になったのだし。

 …………。

 ……ま、その時は『おねーさん矯正鉄拳パンチを喰らわせればいいか。

「んで、滅茶苦茶になった内政をどうにか建て直したのが太妃様と、張の爺さんだな」

 そういえば張さんって『三代宰相』と呼ばれた凄い人だったのだものね。

「その先帝、不老不死を求める過程で水銀を飲むようになったのですか?」

「らしいね」

「それで寿命を縮めたら世話ないですね」

 やれやれと肩をすくめる私だった。


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