勇者学校の指南役~私、魔王だけどいいのかしら?

九條葉月

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咆吼

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 キャラガチャがない。
 つまり推しのシンシアちゃんにも会えないのだ。ゲーム世界この世に夢も希望もありゃしない。シンシアちゃんさえいれば前世(?)を諦めこの世界で生きていくことも辞さないというのに!

『俗物』

 辛辣なティナ様だった。泣いていいですか?

『俗物は俗物らしく、与えられた魔石で装備ガチャを回せばいかがです?』

 おぅ、さらに辛辣ぅ。これは泣いても許されるはず。

 しかし私はくじけることなく装備ガチャ画面を凝視し、『10連回す』ボタンを押した。なんかこう、武器。武器が欲しいのだ私は。さすがにデコピンで戦うわけにはいかないし。原作ゲーム通りならポーションとかのアイテムや武器、防具などがゲットできたはず。

 ガチャ画面が光り輝き、画面から飛び出る形でタロットのようなカードが表示された。

 くるくると回るカードが止まったとき、そこに描かれていたのは……ポーションだった。

 ぽんっ、という音を立ててカードが本物のポーションに変換される。慌てて手を伸ばして受け取ると、ガラス瓶の冷たい感覚が『本物』であると教えてくれた。

 ポーション。
 原作ゲームで言えばHP回復薬。効果は(小)だ。他にも中級ポーションや上級ポーションもガチャから出てくるはず。

 ちなみにアイテムや武器などは希少性によって上から URレア > SSR >SR > R > N という順番になっている。URレアともなると当たる確率は0.1%くらいなのだとか。

 10連回したので次々にカードが出てくるのだけど……ポーション。ポーション。ポーション。ちょっとカードの光が強くなってSRの中級ポーション。ポーションガチャかな?

 なんかもう流れ作業でカードから変換されるガラス瓶を受け取り、地面に置いていく。

 ポーションガチャという私のツッコミが聞こえたわけではないだろうけど、今度は武器が出てくるようになった。N(ノーマル・最低レア)のナイフ、ナイフ、ナイフ、ナイフ……ナイフガチャかな?

 そうして10連が終わり、そのうち9つがN、一つだけSRという結果になった。これはひどい。

 稀によくあるガチャ結果に私が絶望していると、もう一枚カードが出現して回転し始めた。もう10連は終わったはずなのに。

 これは、あれでは? スマホゲーでよくある『10連すると1回オマケ!』というやつでは?

 まぁでも悲惨なガチャ結果を突きつけられたばかりなのであまり期待しないでいると――なんか、回転するカードの回りにパチパチと稲妻が走った。さらにはカード自体も虹色に光っている。

 これは、もしや、SSRとかURなのでは?

 くるくると回るカードをドキドキワクワクしながら凝視していると、回転が止まった。カードに描かれていたのは……革手袋? よくよく見ると五本の指の先から糸のようなものが伸びている。

 ……なんだろう、これ?

 私もそれなりに『夢幻のアレクサンドリア』をやりこんでいたけれど、こんな装備は見たことがない。そもそもアイテムなのか、武器なのか、防具なのか……。

 カードの下に文字が書いてあったので読んでみる。類別としては武器。レア度はLR。そんなのあったっけ? 他のゲームを参考にすると――レジェンドレア?

 ちなみに装備の名前は操糸そうし手袋グラン=ファルンだった。名前とイラストから察するに、糸を操って攻撃するとか?

 ぽんっ、という音を立ててカードが革手袋に変換された。先ほどのイラストとは違い指先から糸は出ていない。たぶん使うときに初めて糸が伸びるのだと思う。

 糸を操って攻撃するキャラクターは『夢幻のアレクサンドリア』にはいなかったはずだけど、他の創作物では何人か心当たりがある。糸を巻き付けて拘束したり、敵をスパスパと輪切りにしてしまうのだ。

 もちろん糸なので扱いには熟練の技が必要なのだけど、だからこそ使いこなせるキャラは格好いいんだよねぇ。

 これはさっそく試してみなければ。ドキドキワクワクしながら左右それぞれに手袋を装着。おぉ、サイズが私ぴったり。不思議~。

「えーっと……?」

 手袋を凝視していると、視界にポップアップ画面のようなものが表示された。どうやらこの武器の取り扱い方らしい。……ふんふん? 魔力を糸に変換して伸ばすと? なるほど物理的な糸だとどこに収納しているのかという問題があるけど、魔力ならどこまでも伸ばせそうだものね。合理的~。

 では! さっそく!

「――操糸!」

 格好良く叫びながら手を伸ばす私。そんな私の指先から糸が射出され――ることはなく、すぐに地面に落ちてしまった。『ちょろちょろ』って感じで。

 あれー? なんか、ショボくない? 私のイメージだと『ビシューン!』と糸が飛んでいくと思ったのだけど。

『その装備がショボいのではなく、主様の腕が未熟なだけです』

「ぐぅ」

 ティナの容赦ない指摘に心がグサッとなる私だった。しょ、しょうがないじゃん初めて使ったんだから。むしろ最初から魔力を糸に変換できた私、天才なのでは?

『はいはい』

 なんとも面倒くさそうな『はいはい』だった。ちょっと泣きそう。というか泣いた。しくしくしく。


                ◇


 操糸は一朝一夕じゃ習得できそうもないのでゆっくりやっていくとして。とりあえずここから先のことを考えないと。

「あー、ティナ。ここはどこかな?」

『はじまりの森ですね』

 はじまりの森というと……ゲームの開始地点か。ここから商都に向かい、いくつかの事件を解決して名を売り、勇者学校の先生になるというのが初期シナリオの流れだったはず。

 なのでまずは商都を目指さないといけないのだけど……。

「ティナ、商都ってどっち?」

『さぁ?』

「さぁ、って」

 まぁ森の中で正確な方角を把握しろという方が無理な話か。となるとどうなるのかなぁ? テキトーに歩き回って遭難するのもなぁ。というかこの世界ってご飯を食べなきゃいけないのかな? 原作ゲームだと体力(HP)が減少したらポーションを使うか宿で一泊すると回復したのだけど。

 あ、そうだ。ホーム画面があるのだから冒険画面もあるはず。MMOのオープンワールドみたいなもので、ダンジョンに潜ったりクエストをやったり、ボス戦でレイドをしたりもできるのだ。商人や冒険者をやるのもこの冒険画面でのお話だ。

 ホーム画面を起動し、画面左にある『冒険』ボタンをクリック。すると、ホーム画面が消滅し、私の視界に様々な情報が表示された。左上に『アイテム』や『スキル』、『魔法』ボタンとか、左下にHPゲージとMP(魔力)ゲージなどなど。

 まぁホーム画面(液晶みたいな画面)を見ながら歩いたり戦闘したりするのは危険だし、視界に直接表示されるのは仕方ないか。

 そんな冒険画面の視界右上には少し大きな丸が。原作ゲーム通りならこれが地図(マップ)であるはずだ。周辺の地形だけでなく、近くにいる敵や味方まで表示される便利機能。

 このマップを使えば商都の場所も分かるはず。なのだけど……うーん? 地図が真っ暗だなぁ? なんだこれ?

 真ん中の緑の点がプレイヤーわたしで、すぐ近くにある青い点が味方ティナだとは思うのだけど。それ以外の情報が何も表示されていないのだ。

『行ったことのない場所は地図に表示されないのでは?』

「あー、そういう系か……」

 地図拡張のために自分の足で歩かなきゃいけないヤツ。ゲームだとよくあるパターンだよね。じゃあしょうがない。歩いて探すしかないのだけど……大まかな地形くらいは分からないかなぁと地図を拡大してみる。

「お?」

 拡大してみると、地図の端っこに何かが表示された。

 赤い点と、青い点?
 ゲームだと赤い点が敵で、青い点が味方だったはず。

 で、赤い点と青い点がほぼ重なり合っているように見えるから……たぶん戦闘中なのだと思う。

「うーん……」

 ちょっと気になった私は赤い点と青い点がある場所に向かってみることにした。

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