勇者学校の指南役~私、魔王だけどいいのかしら?

九條葉月

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「――いや~、死ぬかと思ったわ!」

 目の前にはかなりの惨状が。爆発の威力によって三方の壁が吹き飛び、外の廊下の窓ガラスも窓枠ごと消し飛んでいた。

 そんな中、私は無傷だった。私だけでなく、私の近くにいたシンシアちゃんやガンちゃん、奥様までもが。

 これが自動防御結界スクトゥテラノーラスキルかぁ。

 室内にはまだ煙が漂っているけれど、私を中心とした半径2メートルほどが透明のドームに包まれていて、煙が流れてくるのを防いでいた。煙のおかげでドームの形がよく分かるわね。

 全自動で私だけでなく周りの人間まで守ってくれるとか、自動防御結界スクトゥテラノーラ、便利すぎない?

「死ぬかと思ったって……エリカさんは冗談がお上手ですね。余裕で私たちまで守ってくださったのに……」

 ちょっとひくついた顔をしているシンシアちゃんだった。そんな顔も可愛いぞ?

「――あっ!? お父様! セバスが!」

 慌てた様子でシンシアちゃんが隣の部屋を指差した。爆発で壁が吹き飛ばされ、隣の部屋と繋がっているんだよね今。

 シンシアちゃんが指差した先には瓦礫に埋もれた人の姿が。身体から悪魔がしみ出してきたばかりのセバスさんだ。爆風に吹き飛ばされたのか虫の息となっている。

 念のためにマップを確認。……うん、セバスさんも青い点表示。つまり魔族じゃなくて味方だと。

 ……周囲には赤い点もないし、悪魔は発破筒で爆発四散したようだ。

 おっと、今はそんなことをしている場合ではない。

 すでにシンシアちゃんとガンちゃんがセバスさんに駆け寄っていたので、私も近づいてみる。

 執事服は大きく破損し、皮膚は広範囲に焼けただれている。さらには吹き飛ばされた影響か手足もあらぬ方向に曲がってしまっていた。

 これは致命傷というか、原形を留めているのが不思議な状況ね……。床に倒れていたことが功を奏したのかしら?

 この治療は初級ポーションじゃ無理そう。
 というわけで、私は一本しかない中級ポーションを取り出し、セバスさんにかけてあげたのだった。まぁ一本しかないとはいえ、装備ガチャを引き続ければどんどん貯まるものだし。

「おー」

 さすがに執事服までは修復されなかったけど、皮膚はみるみるうちに治療されていき、折れ曲がった手足も元に戻っていた。

 何とも不思議な光景なのだけど……さらに驚愕の事態が巻き起こった。

 なんというか、こう、若返ったのだ。セバスさんが。

 焼けただれた皮膚は艶やかな潤いを保ち。顔に刻まれていたほうれい線は綺麗さっぱりなくなっている。元々は初老だったというのに、今はもう20代後半くらいにしか見えなかったのだ。

 …………。

 ……あれー? なんで若返ってるのー? ポーション? でも、原作ゲームにそんな効果なかったよね?

『やらかしましたか』

 なぜ私が悪いみたいな物言いなのか。悪いのは装備ガチャか中級ポーションでしょう。厳重に抗議します。


                    ◇


 セバスさんと奥様を別の部屋に移動させたあと。私は応接間でガンちゃん、シンシアちゃんと向かい合うソファに座っていた。

 これは事情説明をしなきゃいけない流れよね?

 というわけで――嘘八百の開始である。

「人間的には占いというか、未来予知とでも言うのかしらね?」

「占い……」

「未来予知、ですか……」

 ガンちゃんとシンシアちゃんの反応は上々。疑っている様子はなさそうなのでこのまま嘘で嘘を塗り固めていく。

「私としても胡散臭いなーとは思っていたし、たまには人間の社会を見物するのもいいかなー程度の軽い気持ちだったのよ。で、まさかまさかの大当たりってわけ」

 もちろん、嘘である。こういうときは堂々としていた方が嘘はバレない。私は前世でそう学んだのだ。

 まさかここまで堂々と嘘をついているとは夢にも思わないのか、ガンちゃんはゴクリと唾を飲み込んだ。

「……セバスに取り憑いていた悪魔のような存在は言っていました。『偉大なる魔王猊下、万歳』と」

「えぇ、そうね」

 なんでやねん、というのが本音だ。原作ゲームで奥様を呪っていたのは公爵家を逆恨みした男だったし、セバスさんに悪魔が取り憑いていたなんて事実はないはずだ。

 まさか、『夢幻のアレクサンドリア』とこの世界は別物?

 でも、登場人物やアイテムなど、同じものが多すぎる。これで完全に別物だと考えるのは無理があるし……。

「――エリカ様」

「? はい?」

「これはもはや国家的――いいえ、人類の危機であると邪推いたします」

「え、えぇ」

 え? そんな感じなの? 魔王は出ませんよ? 私、魔王ロールプレイなんてするつもりはないし。

「我々もできうる限り協力いたします。つきましてはエリカ様が行動しやすいよう身分証の発行と、拠点としてこの屋敷の一室を提供いたします。何か必要なものがありましたらお気軽に申しつけください」

「あ、はい。ありがとうございます?」

 ……なんだろう? なんかメッチャ好待遇なんですけど? これはあれか? 妻と娘の命の恩人だから? あるいはハイエルフ効果? まぁ日々の宿代の心配をしなくていいのは助かるけど。

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