16 / 38
16
しおりを挟む「――いや~、死ぬかと思ったわ!」
目の前にはかなりの惨状が。爆発の威力によって三方の壁が吹き飛び、外の廊下の窓ガラスも窓枠ごと消し飛んでいた。
そんな中、私は無傷だった。私だけでなく、私の近くにいたシンシアちゃんやガンちゃん、奥様までもが。
これが自動防御結界スキルかぁ。
室内にはまだ煙が漂っているけれど、私を中心とした半径2メートルほどが透明のドームに包まれていて、煙が流れてくるのを防いでいた。煙のおかげでドームの形がよく分かるわね。
全自動で私だけでなく周りの人間まで守ってくれるとか、自動防御結界、便利すぎない?
「死ぬかと思ったって……エリカさんは冗談がお上手ですね。余裕で私たちまで守ってくださったのに……」
ちょっとひくついた顔をしているシンシアちゃんだった。そんな顔も可愛いぞ?
「――あっ!? お父様! セバスが!」
慌てた様子でシンシアちゃんが隣の部屋を指差した。爆発で壁が吹き飛ばされ、隣の部屋と繋がっているんだよね今。
シンシアちゃんが指差した先には瓦礫に埋もれた人の姿が。身体から悪魔がしみ出してきたばかりのセバスさんだ。爆風に吹き飛ばされたのか虫の息となっている。
念のためにマップを確認。……うん、セバスさんも青い点表示。つまり魔族じゃなくて味方だと。
……周囲には赤い点もないし、悪魔は発破筒で爆発四散したようだ。
おっと、今はそんなことをしている場合ではない。
すでにシンシアちゃんとガンちゃんがセバスさんに駆け寄っていたので、私も近づいてみる。
執事服は大きく破損し、皮膚は広範囲に焼けただれている。さらには吹き飛ばされた影響か手足もあらぬ方向に曲がってしまっていた。
これは致命傷というか、原形を留めているのが不思議な状況ね……。床に倒れていたことが功を奏したのかしら?
この治療は初級ポーションじゃ無理そう。
というわけで、私は一本しかない中級ポーションを取り出し、セバスさんにかけてあげたのだった。まぁ一本しかないとはいえ、装備ガチャを引き続ければどんどん貯まるものだし。
「おー」
さすがに執事服までは修復されなかったけど、皮膚はみるみるうちに治療されていき、折れ曲がった手足も元に戻っていた。
何とも不思議な光景なのだけど……さらに驚愕の事態が巻き起こった。
なんというか、こう、若返ったのだ。セバスさんが。
焼けただれた皮膚は艶やかな潤いを保ち。顔に刻まれていたほうれい線は綺麗さっぱりなくなっている。元々は初老だったというのに、今はもう20代後半くらいにしか見えなかったのだ。
…………。
……あれー? なんで若返ってるのー? ポーション? でも、原作ゲームにそんな効果なかったよね?
『やらかしましたか』
なぜ私が悪いみたいな物言いなのか。悪いのは装備ガチャか中級ポーションでしょう。厳重に抗議します。
◇
セバスさんと奥様を別の部屋に移動させたあと。私は応接間でガンちゃん、シンシアちゃんと向かい合うソファに座っていた。
これは事情説明をしなきゃいけない流れよね?
というわけで――嘘八百の開始である。
「人間的には占いというか、未来予知とでも言うのかしらね?」
「占い……」
「未来予知、ですか……」
ガンちゃんとシンシアちゃんの反応は上々。疑っている様子はなさそうなのでこのまま嘘で嘘を塗り固めていく。
「私としても胡散臭いなーとは思っていたし、たまには人間の社会を見物するのもいいかなー程度の軽い気持ちだったのよ。で、まさかまさかの大当たりってわけ」
もちろん、嘘である。こういうときは堂々としていた方が嘘はバレない。私は前世でそう学んだのだ。
まさかここまで堂々と嘘をついているとは夢にも思わないのか、ガンちゃんはゴクリと唾を飲み込んだ。
「……セバスに取り憑いていた悪魔のような存在は言っていました。『偉大なる魔王猊下、万歳』と」
「えぇ、そうね」
なんでやねん、というのが本音だ。原作ゲームで奥様を呪っていたのは公爵家を逆恨みした男だったし、セバスさんに悪魔が取り憑いていたなんて事実はないはずだ。
まさか、『夢幻のアレクサンドリア』とこの世界は別物?
でも、登場人物やアイテムなど、同じものが多すぎる。これで完全に別物だと考えるのは無理があるし……。
「――エリカ様」
「? はい?」
「これはもはや国家的――いいえ、人類の危機であると邪推いたします」
「え、えぇ」
え? そんな感じなの? 魔王は出ませんよ? 私、魔王ロールプレイなんてするつもりはないし。
「我々もできうる限り協力いたします。つきましてはエリカ様が行動しやすいよう身分証の発行と、拠点としてこの屋敷の一室を提供いたします。何か必要なものがありましたらお気軽に申しつけください」
「あ、はい。ありがとうございます?」
……なんだろう? なんかメッチャ好待遇なんですけど? これはあれか? 妻と娘の命の恩人だから? あるいはハイエルフ効果? まぁ日々の宿代の心配をしなくていいのは助かるけど。
13
あなたにおすすめの小説
収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?
木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。
追放される理由はよく分からなかった。
彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。
結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。
しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。
たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。
ケイトは彼らを失いたくなかった。
勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。
しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。
「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」
これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。
政治家の娘が悪役令嬢転生 ~前パパの教えで異世界政治をぶっ壊させていただきますわ~
巫叶月良成
ファンタジー
政治家の娘として生まれ、父から様々なことを学んだ少女が異世界の悪徳政治をぶった切る!?
////////////////////////////////////////////////////
悪役令嬢に転生させられた琴音は政治家の娘。
しかしテンプレも何もわからないまま放り出された悪役令嬢の世界で、しかもすでに婚約破棄から令嬢が暗殺された後のお話。
琴音は前世の父親の教えをもとに、口先と策謀で相手を騙し、男を篭絡しながら自分を陥れた相手に復讐し、歪んだ王国の政治ゲームを支配しようという一大謀略劇!
※魔法とかゲーム的要素はありません。恋愛要素、バトル要素も薄め……?
※注意:作者が悪役令嬢知識ほぼゼロで書いてます。こんなの悪役令嬢ものじゃねぇという内容かもしれませんが、ご留意ください。
※あくまでこの物語はフィクションです。政治家が全部そういう思考回路とかいうわけではないのでこちらもご留意を。
隔日くらいに更新出来たらいいな、の更新です。のんびりお楽しみください。
俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕
断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます
山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。
でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。
それを証明すれば断罪回避できるはず。
幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。
チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。
処刑5秒前だから、今すぐに!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』
透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。
「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」
そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが!
突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!?
気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態!
けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で――
「なんて可憐な子なんだ……!」
……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!?
これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!?
ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆
乙女ゲームのヒロインに転生したのに、ストーリーが始まる前になぜかウチの従者が全部終わらせてたんですが
侑子
恋愛
十歳の時、自分が乙女ゲームのヒロインに転生していたと気づいたアリス。幼なじみで従者のジェイドと準備をしながら、ハッピーエンドを目指してゲームスタートの魔法学園入学までの日々を過ごす。
しかし、いざ入学してみれば、攻略対象たちはなぜか皆他の令嬢たちとラブラブで、アリスの入る隙間はこれっぽっちもない。
「どうして!? 一体どうしてなの~!?」
いつの間にか従者に外堀を埋められ、乙女ゲームが始まらないようにされていたヒロインのお話。
伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります
竹桜
ファンタジー
武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。
転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる