61 / 83
ころす
お爺さまが乗ってきた馬車に同乗し、公爵家に戻ることになった。
「おうおうおうおう」
馬車、けっこう揺れるね? そりゃ前世のサスペンションなんてものはないだろうから少しは覚悟していたけどさ。まさかここまで揺れるとは……。
ちなみにアリスは馬車の揺れにも慣れているのかキラキラした目で窓の外を眺めていた。両親と共に馬車でお出かけする機会も多かっただろうからね。可愛い。
しばらくガコガコ揺られていると、なんとなく揺れるタイミングというか揺れ方も分かってきた。慣れてきたので私もアリスに習って窓の外を見る。
「ほー」
いかにも中世の高級住宅街って感じだった。壁とフェンスに囲まれた広い敷地。噴水まである庭園。お貴族様が住んでいそうな四階建ての屋敷……。いや実際貴族が住んでいるのか。ここ、中級貴族が屋敷を構える場所らしいし。
元軟禁娘的には王都の地理なんてまるで分かっていないけれど、どうやら王城を中心として同心円状に街が広がっているらしい。王城から一番近い円が上級貴族が住む街、次の円が中級貴族が住む街、って感じに。
で。私たちは今中級貴族が住む街から上級貴族が住む街に移動しているのだけど……なんか、城壁と城門で区切られていた。金属鎧を着た騎士が馬に乗って警備している。
ここは異世界だし魔物がいるのだけど、馬車を引いているのは普通の馬だし騎士が乗っているのも普通の馬だった。もしかしたらマジカル☆ホースかもしれないけど。
『みゃー……』
マジカル☆ホースってなんだよ……みたいなツッコミをされてしまった。私にも分からん。
ちなみに城門はフリーパスだった。公爵家ってすげぇ。
「おっと、そうだった」
何かを思い出したっぽいお爺さまが顎髭を撫でた。
「リーナはまだ教会でスキル鑑定をしていないのだな?」
この世界の子供は7歳になったら教会に行って保有スキルを鑑定してもらう。というのは誰から教えてもらったんだっけ?
先日の私の誕生日を思い出す。あの父親がいきなり私と晩ご飯を食べると言ってきた日のことだ。
「そうですね。たぶんあの晩ご飯の時に話をしてくれる予定だったと思うんですけど――あ、」
口を噤む私。何も考えずに答えていたけど、これってそのあと『頭にコップを投げられて出血&治療もされずに別邸へ軟禁』と説明しなきゃいけない流れじゃないか。
別にあのクズを庇うつもりはないけど、もうすでに終わった話でお爺さまを心配させたくはない。傷口もたぶん残ってないし。残っていたとしてもどうせ髪の毛で隠れる範囲だ。
けれど、口を噤むのはちょっと遅かったみたいだ。
「……何かあったのか?」
圧が。圧が凄い。なんかもうドラゴンにも負けない圧がお爺さまから私に向けられていた。
ここでケンカを売ってきているなら実力でねじ伏せることもできる。けど、私を心配しているからこその圧だからなぁ。嘘やごまかしをするのもなぁ。
「えーっと、あの父親から晩ご飯を一緒にと誘われて食堂に行ったら、『バケモノめ!』と罵られながらコップを投げられまして。頭に当たって出血を」
「なんだと!?」
「なんですって!?」
鬼のような形相で私に接近するお爺さまとアリス。そのまま遠慮することなく私の髪を掻き上げ、頭を覗き込んでくる。
「なんと……傷痕が……」
「美しいお姉様に、傷痕が……」
わなわなと震える二人だった。あれ傷口治ってなかった? 血は止まっていたし痛くもなかったから自動回復で治ったものとばかり。いやあのときはまだ自動回復のスキル持ってなかったんだっけ? あるいはまだレベルが低くて傷痕が残っちゃったとか?
「……殺す」
「殺しますわ」
すっくと立ち上がるお爺さまとアリスだった。ちなみにお爺さまはガタイがいいので馬車の天井に頭がぶつかっている。じゃなくて。
「ちょいちょい、うぇいとうぇーいと。待ってください大丈夫ですから」
あんなクズを殺して家族が殺人犯になるとかバッドエンドなので全力で止める私だった。いいんですよー別にー。今まで気づかれなかったってことは髪で隠れているんですからー。
「おうおうおうおう」
馬車、けっこう揺れるね? そりゃ前世のサスペンションなんてものはないだろうから少しは覚悟していたけどさ。まさかここまで揺れるとは……。
ちなみにアリスは馬車の揺れにも慣れているのかキラキラした目で窓の外を眺めていた。両親と共に馬車でお出かけする機会も多かっただろうからね。可愛い。
しばらくガコガコ揺られていると、なんとなく揺れるタイミングというか揺れ方も分かってきた。慣れてきたので私もアリスに習って窓の外を見る。
「ほー」
いかにも中世の高級住宅街って感じだった。壁とフェンスに囲まれた広い敷地。噴水まである庭園。お貴族様が住んでいそうな四階建ての屋敷……。いや実際貴族が住んでいるのか。ここ、中級貴族が屋敷を構える場所らしいし。
元軟禁娘的には王都の地理なんてまるで分かっていないけれど、どうやら王城を中心として同心円状に街が広がっているらしい。王城から一番近い円が上級貴族が住む街、次の円が中級貴族が住む街、って感じに。
で。私たちは今中級貴族が住む街から上級貴族が住む街に移動しているのだけど……なんか、城壁と城門で区切られていた。金属鎧を着た騎士が馬に乗って警備している。
ここは異世界だし魔物がいるのだけど、馬車を引いているのは普通の馬だし騎士が乗っているのも普通の馬だった。もしかしたらマジカル☆ホースかもしれないけど。
『みゃー……』
マジカル☆ホースってなんだよ……みたいなツッコミをされてしまった。私にも分からん。
ちなみに城門はフリーパスだった。公爵家ってすげぇ。
「おっと、そうだった」
何かを思い出したっぽいお爺さまが顎髭を撫でた。
「リーナはまだ教会でスキル鑑定をしていないのだな?」
この世界の子供は7歳になったら教会に行って保有スキルを鑑定してもらう。というのは誰から教えてもらったんだっけ?
先日の私の誕生日を思い出す。あの父親がいきなり私と晩ご飯を食べると言ってきた日のことだ。
「そうですね。たぶんあの晩ご飯の時に話をしてくれる予定だったと思うんですけど――あ、」
口を噤む私。何も考えずに答えていたけど、これってそのあと『頭にコップを投げられて出血&治療もされずに別邸へ軟禁』と説明しなきゃいけない流れじゃないか。
別にあのクズを庇うつもりはないけど、もうすでに終わった話でお爺さまを心配させたくはない。傷口もたぶん残ってないし。残っていたとしてもどうせ髪の毛で隠れる範囲だ。
けれど、口を噤むのはちょっと遅かったみたいだ。
「……何かあったのか?」
圧が。圧が凄い。なんかもうドラゴンにも負けない圧がお爺さまから私に向けられていた。
ここでケンカを売ってきているなら実力でねじ伏せることもできる。けど、私を心配しているからこその圧だからなぁ。嘘やごまかしをするのもなぁ。
「えーっと、あの父親から晩ご飯を一緒にと誘われて食堂に行ったら、『バケモノめ!』と罵られながらコップを投げられまして。頭に当たって出血を」
「なんだと!?」
「なんですって!?」
鬼のような形相で私に接近するお爺さまとアリス。そのまま遠慮することなく私の髪を掻き上げ、頭を覗き込んでくる。
「なんと……傷痕が……」
「美しいお姉様に、傷痕が……」
わなわなと震える二人だった。あれ傷口治ってなかった? 血は止まっていたし痛くもなかったから自動回復で治ったものとばかり。いやあのときはまだ自動回復のスキル持ってなかったんだっけ? あるいはまだレベルが低くて傷痕が残っちゃったとか?
「……殺す」
「殺しますわ」
すっくと立ち上がるお爺さまとアリスだった。ちなみにお爺さまはガタイがいいので馬車の天井に頭がぶつかっている。じゃなくて。
「ちょいちょい、うぇいとうぇーいと。待ってください大丈夫ですから」
あんなクズを殺して家族が殺人犯になるとかバッドエンドなので全力で止める私だった。いいんですよー別にー。今まで気づかれなかったってことは髪で隠れているんですからー。
あなたにおすすめの小説
【完結】テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~
永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。
転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。
こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり
授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。
◇ ◇ ◇
本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。
序盤は1話あたりの文字数が少なめですが
全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
【魔力商人】の僕は異世界を商売繫盛で成り上がる~追放で海に捨てられた為、海上ギルド建てたら実力も売上も波に乗って異世界最強に~
きょろ
ファンタジー
飛ぶ鳥を落とす勢いで、たちまち一目を置かれる存在となったギルド【フレイムナイツ】
この剣と魔法の異世界では、数多の冒険者達が日々活躍していた。
基本は4人編成のパーティから始まるが、ランクや実績を重ねたパーティは人数を増やし、自分達でギルド経営をする事が多い。
この世界では、10歳になると全ての人間が“職種適正”を受け、その適正で【剣士】や【魔法使い】といった職種が決まる。そうして、決まった職種と生まれ持った魔力を合わせて冒険者となる人が多い。
そんな中で、パーティ結成から1年しか経たないにも関わらず、その確かな実力で頭角を現してきたギルド……フレイムナイツー。
ギルドには【剣士】【魔法使い】【ヒーラー】【タンク】等の花形の職種が当然メインだが、ギルド経営となるとその他にも【経営】【建設】【武器職人】等々のサポート職種もとても重要になってくる。
フレイムナイツのマスターで剣士の『ラウギリ・フェアレーター』
彼を含めた、信頼できる幼馴染み4人とパーティ結成したのが全ての始まり―。
ラウギリの目標は異世界一の最強ギルドを築き上げる事。
実力も仲間も手に入れ、どんどん成長していくラウギリとその仲間達が織り成す怒涛の異世界成り上がりストーリー!!
………ではなく、
「無能で役立たずなお前はもういらねぇ!俺のギルドの邪魔だ!消え失せろッ!」
「え……そんな……嘘だよね……?僕達は幼馴染みで……ここまで皆で頑張ってきたのに……!」
「頑張ったのは“私達”ね!【商人】のアンタは何もしていない!仕方なくお世話してあげてたのよ。アンタはもう要らないの」
信じて疑わなかったラウギリと幼馴染達……。仲間達から突如お荷物扱いされ、挙句にギルド追放で海のど真ん中に放り棄てられた【商人】担当、『ジル・インフィニート』のお話――。
「そういえば……ギルドって沢山あるけど、この“海”には1つも無いよね……」
役立たずと捨てられたジルであったが、開花した能力と商才で1からギルドを立ち上げたら何故か実力者ばかり集まり、気が付いたら最強勢力を誇る異世界No.1のギルドになっちゃいました。
婚約破棄された人魚に蛙と融合した武術家、剣を抜けない最強剣士に追放された聖女から訳アリ悪役令嬢までその他諸々……。
変わり者だが実力者揃いのジルのギルドは瞬く間に異世界を揺るがす程の存在となり、国の護衛から魔王軍との戦いまで、波乱万丈な日々がジル達を迎える―。
【完結保証】僕の異世界攻略〜神の修行でブラッシュアップ〜
リョウ
ファンタジー
僕は十年程闘病の末、あの世に。
そこで出会った神様に手違いで寿命が縮められたという説明をされ、地球で幸せな転生をする事になった…が何故か異世界転生してしまう。なんでだ?
幸い優しい両親と、兄と姉に囲まれ事なきを得たのだが、兄達が優秀で僕はいずれ家を出てかなきゃいけないみたい。そんな空気を読んだ僕は将来の為努力をしはじめるのだが……。
※画像はAI作成しました。
※現在毎日2話投稿。11時と19時にしております。
※2026年半ば過ぎ完結予定→七月に完結(決定)
1歳児天使の異世界生活!
春爛漫
ファンタジー
夫に先立たれ、女手一つで子供を育て上げた皇 幸子。病気にかかり死んでしまうが、天使が迎えに来てくれて天界へ行くも、最高神の創造神様が一方的にまくしたてて、サチ・スメラギとして異世界アラタカラに創造神の使徒(天使)として送られてしまう。1歳の子供の身体になり、それなりに人に溶け込もうと頑張るお話。
※心は大人のなんちゃって幼児なので、あたたかい目で見守っていてください。
まったく知らない世界に転生したようです
吉川 箱
ファンタジー
おっとりヲタク男子二十五歳成人。チート能力なし?
まったく知らない世界に転生したようです。
何のヒントもないこの世界で、破滅フラグや地雷を踏まずに生き残れるか?!
頼れるのは己のみ、みたいです……?
※BLですがBがLな話は出て来ません。全年齢です。
私自身は全年齢の主人公ハーレムものBLだと思って書いてるけど、全く健全なファンタジー小説だとも言い張れるように書いております。つまり健全なお嬢さんの癖を歪めて火のないところへ煙を感じてほしい。
111話までは毎日更新。
それ以降は毎週金曜日20時に更新します。
カクヨムの方が文字数が多く、更新も先です。
魔道具頼みの異世界でモブ転生したのだがチート魔法がハンパない!~できればスローライフを楽しみたいんだけど周りがほっといてくれません!~
トモモト ヨシユキ
ファンタジー
10才の誕生日に女神に与えられた本。
それは、最強の魔道具だった。
魔道具頼みの異世界で『魔法』を武器に成り上がっていく!
すべては、憧れのスローライフのために!
エブリスタにも掲載しています。