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歓迎会
しおりを挟む「――ふん、また問題を起こした騎士を寄越したのか。王都はうちの騎士団を何だと思っておるのだ?」
騎士団長の執務室に通されて。室内にいたのはデブ……いや、ふくよかすぎるお腹をした中年男性だった。
なんとこの肉人形……じゃなくて、まん丸な男性は、この騎士団の騎士団長であるらしい。
いやいや、騎士団長って有事の際は騎士を指揮する立場にある人でしょう? そんな出っ張ったお腹で馬に乗れるのかしら? この騎士団長を見てしまうと、王都の第五騎士団長(元上司)がまともに見えてしまうのだから不思議なものね……。
騎士団長は舐めるような目つきで私の頭からつま先までを見てくる。……顔と胸、そして腰というかお尻で視線が止まったことは気づかぬふりをするべきだろうか?
「ふん、王都では有能な騎士として名を馳せていたらしいが、どうせその顔と身体で男を籠絡していたのだろう? ――お前の態度次第では、うちでも重用してやってもいいぞ?」
つまり、愛人とかやれと?
「ははは、私は豚顔の魔物と寝る趣味はありません」
おっとしまった。ついつい本音が口から。ポロッとね。
これは激高されるかなと思ったけど、意外と騎士団長は顔をゆがめるだけで怒鳴ったりはしなかった。どうやらオーク呼ばわりは慣れているらしい。
「……ふ、ふん、まだ自分の立場を理解していないようだな……」
不敵に笑った騎士団長が副官らしき騎士に命令する。
「おい、演習場に人を集めろ。まずは歓迎会と行こうじゃないか」
「はっ」
さっそく準備に向かう副官と、下卑た顔を私に向けてくる騎士団長。うーん、これはオークの方がイケメンかもしれないわね。
◇
歓迎会。
という名の腕試しは騎士団の恒例行事と言っていい。新しくやって来た人間がどれほどの実力かを把握するのは、戦闘を生業にする人間にとって必須ですらあるからだ。
ただ、容赦なく三対一を強要されているのは呆れるしかないけれど。
広い演習場には騎士団の人間が壁沿いに並び、『いいぞ!』『やっちまえ!』『顔には当てるなよ!』『服で隠れるところを狙え!』といった下品な声援を送っている。
そんな騎士たちの中心。空いたスペースで私と向かい合っているのは三人の男たち。自己紹介もされてないし、身長順に大・中・小でいいか。
それぞれの武器としては、大が大剣。中が片手剣と盾。小が両手にナイフ。
対する私に武器はなし。
いや、刀は空間収納に入れてあるから問題はないのだけど、私が空間収納を使えると知らない人間からすれば武器なしに見えるはず。だというのに剣を貸してくれる様子すらないとは……。なぁんか、思ったよりゲスな連中みたい。
「――はじめ!」
審判役らしい騎士が試合開始を告げる。いや私まだ武器を持っていませんが? いくらなんでも嫌がらせが過ぎません?
「へっへっへっ、」
「泣いて許しを請うなら許してやるぜ?」
「お前みたいな美人を傷つけるのは本意じゃねぇからな!」
とか何とか言いながら、嗜虐的な笑みを浮かべる三人。
――よし、容赦する必要はなさそうね。
魔力で糸を紡ぎ出し、一番大きい男の両足に巻き付ける。
「うお!?」
足が思うように動かなかった男がその場で転ぶ。無駄に図体がでかいので倒れただけで大きな音がするし、砂埃も舞う。残った男二人も無視しきれなかったようだ。
「おいおい――」
「なにをして――」
中と小が振り返ったところで身体強化を発動。一歩で中と小との距離を詰め、中の鳩尾に肘を叩き込み、続けて小の股間を蹴り上げた。
「うっ!」
「ぐぅ!」
悶絶しながら倒れ込む中と小。残った大にも魔法で電撃。気絶させる。
勝利。
武器対素手。
三対一でも完勝であった。
「……いや、弱っ」
あまりにもあっさり制圧できてしまったので、思わず声を漏らしてしまうと、
「ふざけやがって!」
「てめぇら! やっちまえ!」
壁際にいる騎士たちが一斉に襲いかかってきた。ちょっとー。こっちはか弱い美少女なんですけどー? そんな纏めてかかってきて恥ずかしくないんですかー?
……なにやら王都の親友たちだけではなく、暁の雷光の皆まで『え? か弱い?』という反応をしたような気がするけれど、気のせいに決まっているので気にしないことにする。
か弱い美少女に向かって、容赦なく集団で襲いかかってくる騎士たち。というか、筋肉の塊たち。
容赦する必要はなさそうね、第二弾。
右手の指を握ったり開いたりして準備運動。
「――雷よ、我が敵を討て!」
室内の演習場でありながら。突如として発生した雷は私と団長以外の騎士たちを瞬時に行動不能にしたのだった。
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