26 / 45
冒険者としての日々
しおりを挟む私が冒険者になってから、一週間ほど。
初日と二日目こそ色々あったけれど、それ以降は比較的平和な毎日が続いていた。ゴブリンだけとはいえ、お肉もたくさん食べられたし。なんか知らないけどギルドでゴブリン調査の依頼ばかり掲示されるのよね。
そんな日々の中、課題として挙がってきたのが宿泊場所だ。
どうやら冒険者というのは宿泊場所に困りがち、らしい。
冒険中はもちろんテント生活なのだけど、問題は街に帰ってきたあと。
せっかく街にいるのだから屋根のある場所で寝たいというのが人情。でも、数日の宿泊なら街の宿でいいとしても、長期滞在となると高額になってしまう。
かといって冒険者の仕事柄、長期契約で部屋を借りたのに一月の半分以上が野宿でした、なんてことにもなりかねない。
そんな冒険者向けにギルドが建物内の部屋を貸し出しているとはいえ、人気があっていつも満員状態だし、冒険者ばかりなのでうるさくて喧嘩も多いみたい。
で。新参者の私がどうしていたかというと……街の近くで野宿していたのだ。
だって騎士は遠征や長期訓練だと何日もテントで寝るのが普通だし。結界の魔石を使えば魔物や不審者対策も万全。衛生的に問題のある安宿に泊まるよりもむしろ健康にはいい気すらするのだ。浄化を使えばお風呂に入らなくても清潔だし。
そんな生活を始めてから数日経ったある日の夕方。『暁の雷光』のメンバーに野宿がバレてしまった。冒険が終わってギルドへの報告を終えたあと、わざわざ街の外に行く私を訝しんで尾行してきたらしい。
使い慣れたテントを眺めながらニッツたちが呆れた声を上げる。
「お前なぁ、一応は年頃の女なんだから……」
「一応は公爵令嬢なんだろう?」
「一応は凄い魔術師なんですから相応の住まいにですね……」
「一応美人なんだから、危ない」
いちいち『一応』って付けるの、やめてもらえません? まるで私がちょっと変わっているかのような物言いじゃないの。
「ちょっと?」
「ちょっと?」
「ちょっと?」
「ちょっと?」
ちょっと、私がものすごい変わり者みたいな物言いはやめてよ。
「とにかく! セナさんにはちゃんとした屋根のある場所に住んでもらいます! 女の子として! そして優秀な魔術師として!」
高々と宣言するミーシャだった。魔術師って『実力者はいい家に住みなさい』みたいな決まりでもあるの? ……なんかありそうね。いかにも権威とか気にしそうだし。
「とりあえず部屋探しは明日からするとして……今日のところは私の部屋に泊まってもらいます!」
え? 決定事項ですか? いきなり部屋にお邪魔するのも気が引けるというか……。
いや、友達とのお泊まり会と考えればありかな? 公爵令嬢時代は難しかったけど、騎士になってからは三人部屋だったので毎日がお泊まり会みたいなものだったし。
「……それに、一緒の部屋なら色々と聞き出せますし……。実績解除とか、コツとか、魔術の相性とか……。自動展開の結界も教えて欲しいですし……」
ぶつぶつとつぶやくミーシャだった。魔導師団の人といい、なんでこう魔術師は知識欲が強すぎるのか……。いや知識欲がなければ魔術師なんて目指さないか。
というわけで。
今日はミーシャの借りている部屋でお泊まり会となった。
◇
ミーシャに手を引かれるセナ。そんな彼女をニッツとガイルは微妙な顔で見送っていた。
「……ミーシャ、ずいぶんと懐いたなぁ」
「あいつはエルフであるせいか、どこか壁を作りがちだからな。友達ができたのは喜ばしいことだが……」
「あの『雷光』と同室とは羨ましいぜ」
「おいおいリーダー。変な意味で聞こえるぜ?」
「下心なんてねぇけどよぉ。ちょっと心配というか……セナは美人だしなぁ……」
「とはいえ、女同士だぞ? 変なことにはならんと思うが」
「……最近は女同士で深い仲になるのを『百合』と言うらしいぜ?」
「なんだそりゃ?」
「セナによると、王都でそういう小説が流行っているらしい」
「むぅ……」
「う~ん……」
唸るニッツとガイルに対して、フェイスがどこか冷たい目を向ける。
「嫉妬?」
「……はっはっはっ」
「生意気言うようになったじゃないか、コイツ」
ガシガシと。フェイスの頭を乱雑に撫でまくるニッツとガイルだった。ごまかしの下手な男たちである。
子供扱いが不満なのかフェイスがボソッとつぶやく。
「セナの独り占めが気に入らないなら、パーティハウスでも買えばいい」
「……活動拠点か」
「ノブレスの連中はデカい屋敷を宿舎兼事務所として使っているよな」
「ま、あそこは規模がでかいからな。……しかし、パーティハウスか。悪くねぇな」
「安宿に泊まると変な連中に絡まれるし、野宿も多いから長期で部屋を借りるのも勿体ないからな。いっそ手頃な建物を買い取ってしまうのもありか」
「だな。ま、それはともかく、あとでミーシャとセナにも聞いてみるか」
聞いてみる、といいながらも、すでに屋敷の購入は決定事項になっているニッツであった。
11
あなたにおすすめの小説
子ドラゴンとゆく、異世界スキル獲得記! ~転生幼女、最強スキルでバッドエンドを破壊する~
九條葉月
ファンタジー
第6回HJ小説大賞におきまして、こちらの作品が受賞・書籍化決定しました! ありがとうございます!
七歳の少女リーナは突如として前世の記憶を思い出した。
しかし、戸惑う暇もなく『銀髪が不気味』という理由で別邸に軟禁されてしまう。
食事の量も減らされたリーナは生き延びるために別邸を探索し――地下室で、ドラゴンの卵を発見したのだった。
孵化したドラゴンと共に地下ダンジョンに潜るリーナ。すべては、軟禁下でも生き延びるために……。
これは、前を向き続けた少女が聖女となり、邪竜を倒し、いずれは魔王となって平和に暮らす物語……。
転生したら王族だった
みみっく
ファンタジー
異世界に転生した若い男の子レイニーは、王族として生まれ変わり、強力なスキルや魔法を持つ。彼の最大の願望は、人間界で種族を問わずに平和に暮らすこと。前世では得られなかった魔法やスキル、さらに不思議な力が宿るアイテムに強い興味を抱き大喜びの日々を送っていた。
レイニーは異種族の友人たちと出会い、共に育つことで異種族との絆を深めていく。しかし……
この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました
okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。
伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります
竹桜
ファンタジー
武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。
転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。
『悪役』のイメージが違うことで起きた悲しい事故
ラララキヲ
ファンタジー
ある男爵が手を出していたメイドが密かに娘を産んでいた。それを知った男爵は平民として生きていた娘を探し出して養子とした。
娘の名前はルーニー。
とても可愛い外見をしていた。
彼女は人を惹き付ける特別な外見をしていたが、特別なのはそれだけではなかった。
彼女は前世の記憶を持っていたのだ。
そして彼女はこの世界が前世で遊んだ乙女ゲームが舞台なのだと気付く。
格好良い攻略対象たちに意地悪な悪役令嬢。
しかしその悪役令嬢がどうもおかしい。何もしてこないどころか性格さえも設定と違うようだ。
乙女ゲームのヒロインであるルーニーは腹を立てた。
“悪役令嬢が悪役をちゃんとしないからゲームのストーリーが進まないじゃない!”と。
怒ったルーニーは悪役令嬢を責める。
そして物語は動き出した…………──
※!!※細かい描写などはありませんが女性が酷い目に遭った展開となるので嫌な方はお気をつけ下さい。
※!!※『子供が絵本のシンデレラ読んでと頼んだらヤバイ方のシンデレラを読まれた』みたいな話です。
◇テンプレ乙女ゲームの世界。
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾もあるかも。
◇なろうにも上げる予定です。
封印されていたおじさん、500年後の世界で無双する
鶴井こう
ファンタジー
「魔王を押さえつけている今のうちに、俺ごとやれ!」と自ら犠牲になり、自分ごと魔王を封印した英雄ゼノン・ウェンライト。
突然目が覚めたと思ったら五百年後の世界だった。
しかもそこには弱体化して少女になっていた魔王もいた。
魔王を監視しつつ、とりあえず生活の金を稼ごうと、冒険者協会の門を叩くゼノン。
英雄ゼノンこと冒険者トントンは、おじさんだと馬鹿にされても気にせず、時代が変わってもその強さで無双し伝説を次々と作っていく。
【モブ魂】~ゲームの下っ端ザコキャラに転生したオレ、知識チートで無双したらハーレムできました~なお、妹は激怒している模様
くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
よくゲームとかで敵を回復するうざい敵キャラっているだろ?
――――それ、オレなんだわ……。
昔流行ったゲーム『魔剣伝説』の中で、悪事を働く辺境伯の息子……の取り巻きの一人に転生してしまったオレ。
そんなオレには、病に侵された双子の妹がいた。
妹を死なせないために、オレがとった秘策とは――――。
乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった俺
島風
ファンタジー
ブラック企業で過労死した男がいた。しかし、彼は転生し、ある貴族の侯爵令嬢として再び生を受けた。そして、成長につれて前世の記憶を取り戻した。俺様、クリスティーナ・ケーニスマルク公爵令嬢七歳。あれ? 何かおかしくないか? そう、俺様は性別がおかしかった。そして、王子様の婚約者に決まり、ここが前世ではやっていた乙女ゲームの世界であることがわかった。
自分が悪役令嬢になってしまっている。主人公がハッピーエンドになると死刑になり、バットエンドになるとやっぱり死刑・・・・・・あれ、そもそも俺様、男と結婚するの嫌なんだけど!!
破滅エンド以前に、結婚したくない!!!
これは素晴らしい男性と結ばれるの事をひたすら回避しようとして・・・ドツボにハマっていく物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる