虚口の犬。alternative

HACCA

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10.愛してやまない

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「…手で、慰めてもらえますか」

「していい、から、」

理央の薄く赤い唇はそんなことを簡単に言う。

「挿入りませんよ、わかるでしょう」

理央の手に自分の器官を握らせた。

「…ッ、大き、…」

「…挿れたら多分もっと、」

「っ、挿れて、」

腰を揺らした理央はシーツまで濡らしていて、理性がとびそうになる。

「…っ理央、」

チョーカーの上から首筋を咬んだ。

「っあ、」

ガチガチの自分の器官を、理央の白い手の上から握って擦る。

「もう少し強く握って下さい、」

「っここ、気持ちいいのか、」

「イイですよ、理央は、?」

黙りこんだ理央の薄い胸を無理矢理掴んだ。

「っあ、」

「…ッは、自慰、したことないんですか、」

「ッ、ない、ヒートがくるまで、」

「俺はしましたよ、何度も」



あなたで。



「っ、ん、ッン、…っっ、」

何か言おうとした唇をキスして塞ぐ。

「…ッ、」

理央の白い腹に射精(だ)した。

「…っ、ぁ、」

唇を離すと同時に、理央の目の縁から涙がこぼれる。

小さく身体を震わせて射精せずに達する様子は殊更庇護欲を感じさせた。

窺うように俺の頬に鼻先を擦らせる理央は堪らなく可愛い。



他の誰にも見せたくないと思わせるほどに。








夕食前に眠ってしまった理央の耳に口付ける。

「…ん、」

身動いた理央の髪を撫でながら、腕時計で時間を確認した。

夕食まではまだある。

理央の襟足にも口付け、俺も微睡んだ。

一時間の後、寝ている理央をシーツごと抱え、浴室に向かう。

「…大和、」

ぼんやりと目を開け、俺の瞼に口付ける理央にキスした。

「よく眠れたようですね」

頷く理央をバスチェアに座らせ、チョーカーを外す。

ガーゼをとれば、傷はほぼ消えていた。

理央の身体を洗いながら、ぼんやりと、紫香楽の言葉を思い出す。

オメガは一人寝が苦手だと。

いや、あれはヒート中の話のはず。

あるいは暁の血がオメガ性の特性を増長させるのか。

そんなことを考えながら理央の腕を丁寧に洗う。

不意にその白い手が俺の顎を持ち上げた。

「どうかされましたか」

「…夜も頼む」

「理央が、…俺でいいのでしたら」

「…」

無言で目を伏せた理央はどう見てもオメガには見えない。

オメガの愛らしさではなく、アルファの美しさ。

「…理央」

「…っ、」

内腿に触れた瞬間、理央が身体を震わせる。

「体調に問題はありませんか?」

「っない、」



…嗚呼。



今は、オメガだ。



「…そんなに頑なに脚を閉じられては洗えません」

「自分で、」

「俺の仕事です」

確かに子供の頃はそうだった。だが今は、理央一人での入浴がほとんどだ。

こじつけだとわかっていながら告げた。

「…っあ、」

小さな穴に指を挿れたが、理央は抵抗しない。

「こんなに狭くては時間がかかりますね」

「っ挿入るのか、…本当に、」

「オメガはアルファを受け入れるようにできていますから大丈夫ですよ」

知識ではオメガはもっとアルファを受け入れる造りになっていると思っていたが、これは理央がオメガとして奇形であるせいか。

オメガとしての成熟が遅かったせいもあるかもしれない。

だが周囲のアルファはそんなことを気にしないだろう。

紫香楽に相談すべきかもしれない。



護らなければ。



浴室を出て眼帯を耳にかけ、メイドに引き継いで自室に戻った。

濡れた服を着替えて厨房に向かう。

「宮野。夕食の準備は」

「いつでもお出しできます」

「では理央様のお部屋に。給仕はメイドに任せます。俺の部屋にも簡単な、軽いものをお願いしていいですか」

「かしこまりました」

理央の部屋に戻り、寝室のシーツを換え、クリーニング用のダストシュートに投げ込んでから自室に戻った。

浴室で頭からシャワーを浴び、指輪が戻った薬指を眺める。



理央はまだ純潔を保ったまま。

吉良に許したのなら、自分も抱いてしまえばいいと思った。

理央がいいというなら。



よかったと、内心で囁いた。



美しいままでいてほしい。

誰にも、…俺にも、手折られることなく。



理央がオメガであるかぎり、無理だとわかってはいるが。



理央の姿態を思い出して喉が鳴った。

ヒート時でなければ、遮断剤で冷静でいられる。

理央の役にたてる。

あの身体に触れさせてもらえる。

吉良と番うまでの繋ぎだとしても。



この上なく歓喜した。



薬指のリングに口付け、浴室を出る。

いつも通りにクローゼットから適当に服を選び、髪から落ちる雫をタオルで拭きながら携帯端末を確認した。

寝室を出て紫香楽のIDにメッセージを送り、ソファに放る。

ローテーブルに置いたままになっていた校内の教師のバース性資料を確認しながら部屋に届けられている配膳用のワゴンに乗せられている皿からレタスドッグをとり、口に入れた。

資料を頭にいれながら食事を終えて支度を済ませ、時間を確認する。内線でティーカップを温めておくよう頼んでから眼帯を耳にかけ、ワゴンを自室の外に出して厨房に向かった。

「今日はベルガモットにしてくれ」

「かしこまりました」

ティーワゴンを押してエレベーターに乗る。

もう一度時間を確認し、理央の部屋のドアをノックした。

「入れ」と返事があってからドアを開ける。

「紅茶を」

「ああ」

デスクに座る理央の首にはチョーカーが無く、理央のデスクに紅茶を用意してから、浴室に足を向けた。

放置されたチョーカーを手にとり、苦笑する。

この鍵指環があるかぎり、入浴時、理央は俺の手が必要だ。

部屋に戻り、ティーカップを傾ける理央の首筋を眺めた。

真っ直ぐに伸びた首は細く、頼りない。

「…どうした」

「チョーカーをお忘れです」

「…好きにしろ」

ティーカップを置いた理央の首筋にかかる髪に指を通し、項にチョーカーをかけ、指輪でロックする。

消えてしまった自分の咬み痕を惜しむように首筋を見つめていたら、理央が「咬みたければ咬んでいい」と笑った。

「…」

何も言えず、理央の首筋にキスする。

俺はアルファらしい主人もあいしている。

片膝をつき、手の甲に口付けたら、理央はこの部屋での決まった手順であるかのように俺の眼帯を白い指に絡めとり、デスクに置く。

瞼に唇が触れるこの瞬間を、俺は愛してやまない。

「綺麗な蒼だな」

「理央に差し上げます」

「…お前の綺麗な顔にあるほうがいい」

「では俺をいつまでも側に置いて下さい」

美しい夜色の双眸が、俺を映した。

「…お前が望むなら」

俺の前髪を払った理央の手をとり、手首にキスする。

「俺があなたを望まない日などありません」

「大和、」



躊躇いがちに俺の名前を呼ぶ理央は、アルファのように美しいオメガだった。
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