115 / 159
22.無様に
6
しおりを挟む逆の手のひらでその白い内腿を撫でる。
(駄目だ)
柔い太腿から手を離し、理央の上から身体を起こした。
「…大和」
「いけません、あなたは吉良の番になるオメガです」
「…いずれ他人のものになるオメガじゃ興がのらねーか、?」
「理央、」
「…この部屋にいる間のことは全て不問にすると言っただろ。誰にも責任は問われねーよ、嘘じゃない」
「ですが、…俺は、…」
(あなたを俺で汚したくない。あなたはいつか必ず後悔する)
「…、…そうか、」
手繰ったシャツを羽織り、理央はそうポツリと呟くように零して僅かに残っている釦をかけた。
俺は何も言えず、理央は下を向いていて表情は窺えなかったが、どうにもその様子が儚げに見えて抱き寄せる。
「好きです、理央…」
美しい黒髪に口付けた。
「…嫌いだって言え」
白い頬に影を落とす長い睫毛を見つめながら、理央の頬を両手で挟んで唇の端にキスする。
「俺に嘘を言わせないで下さい…」
「…」
「あなたは俺だけではなく一族の全て。俺の愛する主人です」
「…主人…か、…」
俺の主人であることに苦痛を感じているかのように、理央は眉を寄せた。
「俺が剱では不満でしたら、理聖様にそうお伝え下さい。司もお気に召さなかったのなら、父がもっと上等な剱を用意します」
俺の言葉に諦めたように笑い、理央が「…それだよ」と呟く。
「…?、どれですか」
何も思い当たらなかった愚鈍な俺は、理央の意図を察することもできず、失礼だと分かっていながら無様に問い返すことしか出来なかった。
「…何でもない」
何かを諦めるように目を伏せ、俺の瞼にキスする理央を抱き締める。
(誰か教えてくれ。俺はどうしたらいい)
唯一何を望むのかと訊かれれば願うのは理央の安寧だ。
それを叶えられるのが自分では無いのが虚しいだけで。
理央の甘い匂いに目を閉じる。
「好きです、理央」
「…」
何も答えない理央の手を取り、手首に口付けた。
それから理央を抱きかかえて寝室に足を向ける。
ベッドにおろしたら、理央は目を閉じてシーツの間に潜り込んで「少し寝る」と呟いた。
「おやすみなさい、理央」
自室に戻ろうとしたら、理央は俺の腕を掴んで「ここにいてくれ」と俺に背を向けたまま、俺のほうを見ずに言う。
「…俺でよろしければ」
俺の腕を掴んでいる白い手を取り、甲に唇を落とした。
華奢な理央の身体を抱き寄せ、美しい黒髪にキスする。
俺は息を潜めてチョーカーの縁から僅かに覗く理央の項をじっと見つめながら、理央が目を覚ますまでその寝息を聞いていた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
運命の番ってそんなに溺愛するもんなのぉーーー
白井由紀
BL
【BL作品】(20時30分毎日投稿)
金持ち社長・溺愛&執着 α × 貧乏・平凡&不細工だと思い込んでいる、美形Ω
幼い頃から運命の番に憧れてきたΩのゆき。自覚はしていないが小柄で美形。
ある日、ゆきは夜の街を歩いていたら、ヤンキーに絡まれてしまう。だが、偶然通りかかった運命の番、怜央が助ける。
発情期中の怜央の優しさと溺愛で恋に落ちてしまうが、自己肯定感の低いゆきには、例え、運命の番でも身分差が大きすぎると離れてしまう
離れたあと、ゆきも怜央もお互いを思う気持ちは止められない……。
すれ違っていく2人は結ばれることができるのか……
思い込みが激しいΩとΩを自分に依存させたいαの溺愛、身分差ストーリー
★ハッピーエンド作品です
※この作品は、BL作品です。苦手な方はそっと回れ右してください🙏
※これは創作物です、都合がいいように解釈させていただくことがありますのでご了承くださいm(_ _)m
※フィクション作品です
※誤字脱字は見つけ次第訂正しますが、脳内変換、受け流してくれると幸いです
オメガ修道院〜破戒の繁殖城〜
トマトふぁ之助
BL
某国の最北端に位置する陸の孤島、エゼキエラ修道院。
そこは迫害を受けやすいオメガ性を持つ修道士を保護するための施設であった。修道士たちは互いに助け合いながら厳しい冬越えを行っていたが、ある夜の訪問者によってその平穏な生活は終焉を迎える。
聖なる家で嬲られる哀れな修道士たち。アルファ性の兵士のみで構成された王家の私設部隊が逃げ場のない極寒の城を蹂躙し尽くしていく。その裏に棲まうものの正体とは。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる