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27・ただ一つ、仄暗い喜び
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しおりを挟む「それが理央様の望みだ」
「自分は望んでおりません」
「君が望んでいようといまいと。そのように手配される」
「全ての元凶が俺だとわかっていて理央様一人が全て背負うと?」
「…理央様がそう望み、『そうなった』。理央様が勝手にそうしただけだ。君に責任は無い」
「そう言えと言われましたか」
「…」
「…主人に安寧を提供するどころか主人に護られるなど」
あの高潔で美しい主を、俺が手折った。
俺が。
「君はもう二度と、理央様に会うことはない」
「…それが、理央様の望みですか」
「イニシャライズされた剱が新たな主人に尽くすのを見るのは、暁には酷なことだ。わかるだろう。まして理央様は覚えておられるのだから」
「…ならばお仕えさせてくださればいい。番うことが出来なくとも、お仕えさせてくだされば俺は――」
「君が忘れるとわかっているから、理央様は君に懺悔にも等しい告白をした」
顔を上げて神木の目を見た。
今日は何故か眼鏡をしていないと気付く。
「…どういう、ことですか」
「そうでなければ、暁である理央様は剱である君に告白することも懇願することもなかった。暁は弱味など見せてはならない。それがたとえ自分の剱だとしても。暁が剱を拒絶することも、剱が暁を支配することも、本来あってはならないことだ。だからこそ問題が発生した場合は『リカバリ』や『イニシャライズ』で関係をリセットする。剱だからこそのリスタートシステムだがね」
ローテーブルに置かれた本の背表紙を眺めながら、神木の言葉を反芻した。
「理央様を、忘れる…、?」
ありえない。
理央は俺の全てだ。
俺の始まりで、俺の終わりだ。
「…大和」
「俺だけが全てを忘れ、新しい主人と番って生きろと、…」
「諦めろ」
「理央様が諦めたように、?」
「…」
「自業自得だと仰りたいのですか」
理央を諦めて、理央を失い、この感情、衝動全てを消失したとき。
――一体俺に、何が残る。
「感情だけで語るな、大和」
「これまでひたすら感情を抑えてきました。その結果がこれとは」
「大和」
「俺が…!…理央様にこの結果を選ばせてしまった」
主人が強く振る舞っていたのは全てを隠す為だったと。
今更知ってどうする。
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