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学舎編 一
下世話な懐古
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ナジュと桃栗による、その時代の色話が終わりの兆しを見せると二人から距離を取っていた丹雀は、そろりそろりと距離を詰め、側に帰ってきた。互いの話を聞いて感心するようなこともあったのか、また話そうと約束を取り付けていた。それを丹雀は下品だという目で見ていたが、羽織の中の目は二人には見えず、丹雀自身から発せられる空気を感じ取り、返事を返した。
「男の子が集まればこんなもんだよ?下世話なシモ話が大好物なんだから」
「色事に興味持ったことないのか?俺のとこでは聞いてもいねえのに酒が入ると過去のアレやコレやを話し出すから、そこで学んだり興味を持ったりしていたが……まあ精一杯良く言えば、備えみたいな役割…とも言えなくはない」
「そういう作法は一通り専門の者から学んでいるし、興味が無いとは言わないが、往来で堂々と話すなと言っているんだ!」
「えー、でも出合茶屋の前だよ?今まさに…じゃない!?」
桃栗自身のは両手を使って出合茶屋の内部で起きている事を伝える。その指の形と動きを見た丹雀はこら!と怒って桃栗の両手を拘束した。
「ねえ、料金っていくら位なのかな?僕の時代の相場とどの程度解離があるか気になるね。お布団も綺麗な所って少なかったから、此処はふかふかだといいなあ」
「外なら無料だぞ」
「こいつ…!力付くで卑猥な指遊びを継続してっ…!」
桃栗は細身の丹雀の拘束など意に介さず、何度も動きを繰り返した。生きた時代が違っても察する部分はあるらしく、ナジュはその形と動きの意味を汲み取り、うんうんと頷いた。
「冬なんかは農作業もなくて暇な時間も結構あったから、真昼間とか関係なかったな…用事があって余所んち行くときは中の様子を伺わないといけなくてなぁ……」
「そうそう!皆考えは同じだから、同じような月にまとまって子が産まれるんだよね!知り合いのお家なんて子ども全員同じ月の生まれで…」
ナジュと桃栗が懐かしそうに話し始めると、丹雀はまた始まった!と声を荒げる。
「ええいっいつまでも色話をしているんじゃない!今日来た目的は町の案内だろう!?この町にはそういう目的の宿ばかりでなく、旅の者が泊まる普通の宿や、高級な宿もある!話すならそちらの素晴らしさを話せ!さっさと次の通りに行くぞ!」
「わっ!丹雀くん、もう少し出入りする人見せてよ!」
ナジュと桃栗は丹雀に背中を押されながら町の中心部へ進んで行く。気になる店があり、停まってくれと言っても丹雀はぶつぶつと文句を垂れ、聞く耳を持たない。漸く止まったのは、桃栗が「あっ!」と大きな声を出して片方の足でそれ以上進まぬように踏ん張った時であった。
「丹雀くん!あれ見ようよ!懐かしい!」
「なに……あれは…まあ、良し」
「何だ?」
丹雀は二人の背を押すのを止め、解けかかった羽織をきつく結び直した。桃栗が興味を持った場所は人だかりが出来ており、道行く人も足を止めていた。ナジュは桃栗に腕を組まれて人だかりに近付いて行った。
「男の子が集まればこんなもんだよ?下世話なシモ話が大好物なんだから」
「色事に興味持ったことないのか?俺のとこでは聞いてもいねえのに酒が入ると過去のアレやコレやを話し出すから、そこで学んだり興味を持ったりしていたが……まあ精一杯良く言えば、備えみたいな役割…とも言えなくはない」
「そういう作法は一通り専門の者から学んでいるし、興味が無いとは言わないが、往来で堂々と話すなと言っているんだ!」
「えー、でも出合茶屋の前だよ?今まさに…じゃない!?」
桃栗自身のは両手を使って出合茶屋の内部で起きている事を伝える。その指の形と動きを見た丹雀はこら!と怒って桃栗の両手を拘束した。
「ねえ、料金っていくら位なのかな?僕の時代の相場とどの程度解離があるか気になるね。お布団も綺麗な所って少なかったから、此処はふかふかだといいなあ」
「外なら無料だぞ」
「こいつ…!力付くで卑猥な指遊びを継続してっ…!」
桃栗は細身の丹雀の拘束など意に介さず、何度も動きを繰り返した。生きた時代が違っても察する部分はあるらしく、ナジュはその形と動きの意味を汲み取り、うんうんと頷いた。
「冬なんかは農作業もなくて暇な時間も結構あったから、真昼間とか関係なかったな…用事があって余所んち行くときは中の様子を伺わないといけなくてなぁ……」
「そうそう!皆考えは同じだから、同じような月にまとまって子が産まれるんだよね!知り合いのお家なんて子ども全員同じ月の生まれで…」
ナジュと桃栗が懐かしそうに話し始めると、丹雀はまた始まった!と声を荒げる。
「ええいっいつまでも色話をしているんじゃない!今日来た目的は町の案内だろう!?この町にはそういう目的の宿ばかりでなく、旅の者が泊まる普通の宿や、高級な宿もある!話すならそちらの素晴らしさを話せ!さっさと次の通りに行くぞ!」
「わっ!丹雀くん、もう少し出入りする人見せてよ!」
ナジュと桃栗は丹雀に背中を押されながら町の中心部へ進んで行く。気になる店があり、停まってくれと言っても丹雀はぶつぶつと文句を垂れ、聞く耳を持たない。漸く止まったのは、桃栗が「あっ!」と大きな声を出して片方の足でそれ以上進まぬように踏ん張った時であった。
「丹雀くん!あれ見ようよ!懐かしい!」
「なに……あれは…まあ、良し」
「何だ?」
丹雀は二人の背を押すのを止め、解けかかった羽織をきつく結び直した。桃栗が興味を持った場所は人だかりが出来ており、道行く人も足を止めていた。ナジュは桃栗に腕を組まれて人だかりに近付いて行った。
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