127柱目の人柱

ど三一

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学舎編 一

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我先に火付け棒が入った小箱を求める客達に混じりながら、桃栗と丹雀はそれぞれ一箱ずつ確保して集団の外で待っていたナジュと合流した。ナジュは客の子ども達に囲まれて、持っている火起こし器が生まれる前の昔話をしていた。

「…てことで、昔はそりゃあ大変だったわけだ。度重なる火起こしで皮も厚くなる」
「つらのかわ?」
「ナジュくんお待たせ~!」
「二人とも買えたぞ」

駆け寄って来た桃栗と丹雀が火付け棒の入った小箱をナジュに見せた。小箱の面には火付け棒という文字と、中に入っている棒に火が付いた絵が描かれている。よく見ると丹雀のと桃栗のとでは文字も絵も少々の違いがあり、一つひとつが比良坂の手書きである。三人はまさか学舎の師の手製とは知らない。桃栗は一本取り出して試してみようと思ったが、少し考えて次に行きたい場所を二人に伝える。

「ねえ、この町にお香屋さんってあるかな?」
「香か……」
「屋敷で使ってた線香っていうやつか?それとも…あの……茶器みたいな奴が欲しいのか?」
「ナジュくんが想像しているのは香炉の事かな?そうだね、可愛い香炉があれば買いたいね。それと香りの方も!丹雀くん、ある?」
「あるにはあるが……」

丹雀は複雑そうな表情をして答えを渋る。その視線は香を売っている店がある方角を見ていた。ナジュがその視線の先を辿ると、町の中心から南東の方を見ていた。そこは町の中でも特に密集し入り組んだ路地の辺りである。一見の旅人ではあまり寄り付かない区域で、そこを通る殆どは決まった目的がある者達。先日丹雀が街を散策した時には、それなりに人がいる時間帯で、その中にちらほらと人相の良くない者達も出入りしていた印象があった。そんな場所に二人を連れて行っていいのか悩むところもある。

(しかし…あまり良い所ではないと知らせておくのも大切だな。危険とまではいかないが、場所だと知れば安易に近付く事もあるまい。それにこの二人…それなりの経験がありそうな下世話な話をしていたからな…)

盗み見た二人は、部屋に良い香りがあると気分も良くなると桃栗がナジュにも香りを置くことを勧めていた。なんでも部屋に染みついた臭いが少々埃っぽいらしく、学舎に来る前に居た屋敷では、主様が方々から取り寄せた香を楽しんでいたという。ナジュはその話に、会合前の用意で稲葉が幾つかの香りを持ってやって来た事を思い出す。女香だとよくわからない事を言われて散々な目に遭ったナジュは、香等…という思いであったが、念の為男香を身に付けて周囲に示しておくのもいいかと、桃栗に「かっこいい香を選んでくれ。次の休みにでも買いに行く」と頼んでいる。

「では、連れて行こう。あまり治安が良さそうな場所ではないので、客引きやスリには気を付けるんだぞ?」
「大丈夫だ、俺は着の身着のままで来た。何も持ってない」
「素寒貧だね!僕は、香炉は多分買えないけれど、香りが買える位かな?そんなに大きい金子は持ってないよ!」
「よし」

丹雀を真ん中に、二人がその脇を固めて目的の店に向かった。
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