127柱目の人柱

ど三一

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学舎編 一

怒りの麒麟

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三人は麒麟の前に正座させられ、長々と説教を受けていた。せめて何かしら身体を隠す物が欲しいとナジュが言うと、麒麟は「我も全裸である、気にするな」と答えて取り合ってくれなかった。ナジュは両手で胸を隠し、雷蔵は前を隠す。他夏はぼんやりと麒麟を見上げ、喧しく人語を操る馬の幻影を見ていた。

「よいか、神様候補同士の性行為について学舎は基本的に関与しないが、宿舎でも公共の場、共有部分での性行為は推奨しない。我が管理する神聖な湯殿で、それも三人で乳繰り合う等言語道断!衝動的行動に誘うその陰茎を我が踏みつぶしてやろうか…!」

麒麟は前足で素早く蹴りぬくような仕草を見せて、態度次第ではそれも選択肢の一つであると三人に分からせると、ナジュと雷蔵は顔を青くして身を縮こませる。

「偶々こいつ、他夏が俺のを握ってきただけで別に変なことする心算無かったんだって!」
「そうだ、他夏はいつも錯乱ぎみで…幻覚が俺達の…アレを…そう、埋まってる大根とでも思ったんじゃないかと…」
「何だいつも錯乱気味とは!それでよくこの学舎の神様候補となれたな…!この者の推薦者は誰か!」
「…金竜様です。他夏と、俺の主様でもあります」
「金……竜…殿…」

その名を聞いた麒麟は、二角に雷を纏わせて毛皮を逆立てた。他の獣と同じように敵意や警戒を表すその姿に、ナジュは「麒麟、怒ってないか…?」と雷蔵にひっそりと聞いた。雷蔵は金竜の素行を思い出し、(麒麟に何かしたのか…主様…)と普段のあれやこれを雷蔵の知らぬ麒麟と金竜の関わりの空白に当てはめてみた。どれもこれもしっくりときて、湯殿での冤罪の他に、主様の行いの咎めを受ける事になるかもしれないと、小さくため息を吐いた。

「金竜殿については、我の耳にも届いている。昨夜の激励会に乱入したばかりか、一人の神様候補に御業を用いて攻撃、神様候補辞退に追い込むという凶行。連行された後も術で脱出して雁尾殿の催しを天井から見ていたり、我が宝…時の為政者より捧げられし究極にして至高の寝具の上で転がり回るという愚行!許すべからず!」
「寝床…?」
「主等の背後を振り返って見よ!」

麒麟の怒りがこちらに向かないように大人しく従うナジュと雷蔵。背後にあるのは高級そうな座布団。これの事だろう。

(主様…麒麟の寝床で転がり回ったのか……)
「我が蹄の餌食にせん!と踏みつけたが、金竜殿は瞬きの内に学舎から脱出した。口惜しいとはこの事…!我が蹄に宿った憤怒は未だ燻ったまま、放出する場を探している。因って主等への罰はこの蹄の…」
「待ってくれ!本当に悪かったよ、俺達湯殿で…イチモツを触り合っちゃ駄目なんて知らなくて!学舎案内に書いてあったなら絶対にしなかった!!今回は許してくれ、この通り」
「ぐうっ」
「あれ…視界が……暗く…」

ナジュは自身の頭を下げながら、雷蔵と他夏の後頭部を掴んで床に伏せた。雷蔵は額を冷たい床にぶつけてうめき声を出した。

「…一理ある。今度からは学舎案内に湯殿での規則を記しておこう。それはそれとして不埒な行為を行った者は必罰である。主等、尻を向けよ」
「え」

ナジュ達は、尻を麒麟に踏みつけられるという罰を受けた。それぞれの尻には麒麟の蹄の証が残り、それが消えぬうちにまた行為に及んだならば、憤怒の蹄が尻を穿つと約束させられた。
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