127柱目の人柱

ど三一

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学舎編 一

問答時間

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「お前ら…やっぱり着いてきたのかよ」
「勿論!兄ちゃんの目的地はすぐそこで良かったな。いくら撒こうと思っても、この距離じゃあ俺達は撒けないぜ」
「あちらの菊花錠の間は畳が敷き詰められて、菊花を模った装飾がこれでもかとあしらわれていたが、こちらは随分と質素な造りの板間だね!一応、菊に梅と花の名が付いた錠前の掛かった揃いの部屋ならば、ここも梅に関する装飾がありそうだけれど、一目ではわからないな」

二人が履物を脱いで上がってくると、流石の雷蔵も観念するしかなかった。不思議な穴を見ようと屈んでいた姿勢を元に戻し、近付いて来る二人の前に立ち塞がる。これから急に戦闘となる可能性がある為、ナジュの着物の端をくいくいと引っ張って警戒するよう言外に促すが、“うるさい”というふうに後ろ手で振り払われる。この梅花錠の間に四人が揃う羽目になったのは雷蔵にも一因があるので、巻き込まれた形のナジュを背に隠すように立ったが、手を払われた事は、一応の親切心を無碍にされたようで少々腹が立つところもある。いっその事着物を思いっきり掴んで強制的に隣に立たせてやろうかと考えていると、飛鳥田が咳払いをして、内装を眺めている佐渡ヶ銛に“これから話をするぞ”と合図する。
それに佐渡ヶ銛が「承知した!」と元気に答えると、とことこと歩いて飛鳥田の隣に立つ。ナジュと雷蔵とは違い、息が合った遣り取りである。二人が揃うと、飛鳥田が本題へ向けて話し始めた。

「まずだな……大前提として、雷蔵は本気で雷座を狙ってるんだよな?誰を押しのけても、蹴落としても座を得るって覚悟はあるのか?」
「答えるまでもねえよ」
「ハハ、これは失礼な問いになってしまったな、飛鳥田」
「当然って事か。うんうん」

雷蔵の剣呑な表情に対して、答えを聞いた二人は朗らかで余裕がある。背後からは、ナジュが呑気に穴の数を一つひとつ指差しで数える声が聞こえ、内心で“そんな場合じゃねえだろ”と思っている。更に質問は続く。

「術の素養が低い事が弱点であるけれど、体力訓練で抜きんでた実力を見せつけていたし、雁尾師の術による攻撃を上手く避けていた。これから血生臭くなる争いを耐え抜く体力と丹力はありそうだね」
「呪いへの対処は出来るのか?」
「それには答える必要を感じねえな」
「どうしてだい?」
「出来ても出来なくても、答えたそれが嘘かもしれねえし、本当かも知れねえだろう?第一…この選定に集まった奴が、同じ座を狙う競合に対して易々と自分の弱みを打ち明けるかよ」
「うん!それなりに考えているみたいだね。お喋りが過ぎる者は、自慢屋は余計な事をついつい口にしてしまうから。これなら安心材料に入れていいかい?」
佐渡ヶ銛お前は当てはまりそうな……まあいいだろう」

再び何らかの納得に至った様子の二人。この状況でまだ本題に辿り着かないもどかしさを解消すべく、雷蔵は「おい」と言って鋭い視線で二人を射抜く。

「焦らし過ぎてしまったようだ。苛立って片眉が上がっているよ」
「…鷺鶴の件が懸念だが、まあ俺達の考えは一致してるからな。じゃあ…」

いよいよ本題、という空気に変わる。穴の方を気にして振り返らなかったナジュだったが、流石に二人の目的が気になっていた為、聞き耳は立てていた。雷蔵はいつでも動ける準備をして飛鳥田の言葉を待つ。
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