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学舎編 一
同異
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「そうだ……”同じ”なんだ……」
散らばった複数の鍵と錠前の中から、正解の組み合わせを発見した時のような爽快感が頭の中を通り抜け、居座った疑問のモヤを薙ぎ払う。これまで眼前で繰り広げられた先鋒戦、次鋒戦、五将線、中堅戦の記憶が一気に蘇り、"濃い既視感"を覚えた箇所を強調し、思い付いた仮説に根拠を付け加えた。
(麒麟陣営の行動の中で、注目しなければいけないのは五将戦の順番決めの様子。雁尾陣営はこれまで行われた順番決め全てだ)
号左は相手陣営の頭である雁尾が、暇そうに扇子をひらひらと仰いでいる様子を盗み見した。今日の茶会に限った話であるが、雁尾がやけに静かなことに最初号左は違和感を感じていた。共に花見をしている時は、いつものように麒麟の神経を逆撫でしては、のらりくらりと交わして遊んでいたように見えたが、茶道で勝負をすると決まった時から、何やら静かであった事を覚えている。
(あの時からこの作戦を考えていた?有利な後攻を引く為の仕込みをしていたのか?)
号左がその考えに行き着いた時、遊びながら、してやられた気分になった。何故抱いた違和感を軽んじてしまったのか、号左は今胸に湧き出てくる後悔によって瞼をきつく閉じる。
(まず雁尾殿は順番決めの際、密かに術を使用していた。自陣の神様候補達が後攻を確実に弾けるように。それができる仕掛けを仕込んだのはいつだ…?雁尾殿自ら遠見の術を使って伏せた絵柄を見て?いや、そのような術が使えるとは聞いた事はない。だいたい、順番決めの最中に術を放つなんて事を繰り返したら、誰かは絶対に気付くはず。衆目監視の上で見つからない方法を使ったはずだ。順番決めの際にもし術を飛ばしたのでは無いのなら……ああ、あの時だ)
号左の脳内に、先鋒戦の光景が蘇る。自分の提案した花札による順番決め。先鋒戦では麒麟陣営が桜を引き、雁尾陣営が紅葉を引いた。麒麟陣営の先鋒は花札を自分で持っていたが、雁尾陣営の先鋒が引いた紅葉の札は、一度雁尾の手に渡っている。
(あの時思いついたのだろうか…。紅葉の札に術を仕掛けて、"花札に触れれば、絵柄がわかる"ようにするなど)
号左が感じた”濃い既視感”の正体。それは、雁尾陣営の神様候補達の順番決めの最中の、ある行動にあった。
(雁尾陣営の神様候補達は順番決めの際、"花札に触れる"か、"指先を花札に近付ける"という、どちらかの行動を必ず行っていた。それぞれの動き方は違って当然、偶然同じような前屈みの体勢になって、偶然手を花札に近付けた可能性も完全には否定出来ない。だけど、皆同じというのはやはりきな臭い。先鋒以外の神様候補は有利な出番を取れるように、雁尾殿から助力があったと考えてもおかしくはない。もし不正が露見しなければこのまま大将戦まで有利な出番を取り続けるつもりでいるのかな…?五将戦のあの場面は、流石の雁尾殿でもひやりとしたのだろうか?)
号左は、五将戦における氷頭見と猪熊の順番決めの様子を思い出していた。
散らばった複数の鍵と錠前の中から、正解の組み合わせを発見した時のような爽快感が頭の中を通り抜け、居座った疑問のモヤを薙ぎ払う。これまで眼前で繰り広げられた先鋒戦、次鋒戦、五将線、中堅戦の記憶が一気に蘇り、"濃い既視感"を覚えた箇所を強調し、思い付いた仮説に根拠を付け加えた。
(麒麟陣営の行動の中で、注目しなければいけないのは五将戦の順番決めの様子。雁尾陣営はこれまで行われた順番決め全てだ)
号左は相手陣営の頭である雁尾が、暇そうに扇子をひらひらと仰いでいる様子を盗み見した。今日の茶会に限った話であるが、雁尾がやけに静かなことに最初号左は違和感を感じていた。共に花見をしている時は、いつものように麒麟の神経を逆撫でしては、のらりくらりと交わして遊んでいたように見えたが、茶道で勝負をすると決まった時から、何やら静かであった事を覚えている。
(あの時からこの作戦を考えていた?有利な後攻を引く為の仕込みをしていたのか?)
号左がその考えに行き着いた時、遊びながら、してやられた気分になった。何故抱いた違和感を軽んじてしまったのか、号左は今胸に湧き出てくる後悔によって瞼をきつく閉じる。
(まず雁尾殿は順番決めの際、密かに術を使用していた。自陣の神様候補達が後攻を確実に弾けるように。それができる仕掛けを仕込んだのはいつだ…?雁尾殿自ら遠見の術を使って伏せた絵柄を見て?いや、そのような術が使えるとは聞いた事はない。だいたい、順番決めの最中に術を放つなんて事を繰り返したら、誰かは絶対に気付くはず。衆目監視の上で見つからない方法を使ったはずだ。順番決めの際にもし術を飛ばしたのでは無いのなら……ああ、あの時だ)
号左の脳内に、先鋒戦の光景が蘇る。自分の提案した花札による順番決め。先鋒戦では麒麟陣営が桜を引き、雁尾陣営が紅葉を引いた。麒麟陣営の先鋒は花札を自分で持っていたが、雁尾陣営の先鋒が引いた紅葉の札は、一度雁尾の手に渡っている。
(あの時思いついたのだろうか…。紅葉の札に術を仕掛けて、"花札に触れれば、絵柄がわかる"ようにするなど)
号左が感じた”濃い既視感”の正体。それは、雁尾陣営の神様候補達の順番決めの最中の、ある行動にあった。
(雁尾陣営の神様候補達は順番決めの際、"花札に触れる"か、"指先を花札に近付ける"という、どちらかの行動を必ず行っていた。それぞれの動き方は違って当然、偶然同じような前屈みの体勢になって、偶然手を花札に近付けた可能性も完全には否定出来ない。だけど、皆同じというのはやはりきな臭い。先鋒以外の神様候補は有利な出番を取れるように、雁尾殿から助力があったと考えてもおかしくはない。もし不正が露見しなければこのまま大将戦まで有利な出番を取り続けるつもりでいるのかな…?五将戦のあの場面は、流石の雁尾殿でもひやりとしたのだろうか?)
号左は、五将戦における氷頭見と猪熊の順番決めの様子を思い出していた。
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