127柱目の人柱

ど三一

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学舎編 一

従者の絆

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「フフ…私は、私が悶えるよりも、愛らしい方が悶え喘ぐ様を楽しみたいのですが……ぐっ」
「オウソウ!」

五島師の触腕は、唐梳の代わりになったオウソウの足首を絡め取ると、上半身に向かって一気に這い上がり、頭のてっぺんまで巻き付いた。仕合には相応しくない不埒な発言を発する唇は吸盤で塞いで、他の神様候補達よりもきつく締め上げておく。オウソウの苦しそうな声を聞いた唐梳は、キッと目付きを鋭くさせ、床に倒れた神様候補の身体を足場にして跳躍し、再び五島師に切り掛かる。

「随分とお優しいな、大蛸!全身の骨を折るくらいでなければ、そいつの回る口は止められん…!」
「ンうううう…」

顔面を粘液塗れにされ、吸盤で吸いつかれて呼吸もままならないオウソウは、主である唐梳の言葉を聞いて、吸盤の下でフフフと笑う。上から下へ振り下ろされる妖刀の一太刀を回避した五島師は、唐梳の次の攻撃をどう凌ごうか考える。初回講義から共闘していた唐梳オウソウの二人は、オウソウが唐梳の攻撃をお膳立てするような形が多く、偶にオウソウが効かないとわかっている術を隙作りに放つくらいだ。ある程度の形は決まっているが、日頃鍛錬を重ねた結果がその連携から読み取れる。二人の間には信頼が伺える。そこで五島師は、趣味の悪い作戦を思い付く。

「一つ試してやろうか…」

五島師の瞳に薄い影が掛かる。大海を支配した大蛸の冷酷な狩の対象に、唐梳はなった。五島師は、触腕を巻き付けたオウソウを自身の頭上より高い場所に掲げ、態と唐梳や他の神様候補に見せつけ、視線が集まった頃合いに巻き付けた触腕にジリジリと力を込めて締め上げる。捕まえているオウソウの顔から触腕をどかし、敢えて苦痛の表情と声を見聞きさせる。唐梳の身代わりとなった直後は、冗談か本気か判断の難しい戯言を言う余裕のあったオウソウだが、今度の締めには微笑んで耐える余裕はない。

「かっ……ハッ……!」

オウソウはこの触腕から脱出する手段を持っていたが、今は講義中、しかも多くの神様候補達の目がある。今後の有利を取るためにも、この状況でその手段が露見する事は避けたい。そんなオウソウの心情を悟った唐梳は、更に眉を吊り上げて大蛸を睨み付ける。しっかりと握った妖刀を正面に構え、オウソウを締め上げる触腕に狙いを定める。

「その男はどうしようもない色狂いだが、俺の父が選んだ配下であり、俺の従者…!全身の骨を、とは言ったが……考えを改めた」
「ほう……いかに」
「その男が動けないとなると俺が困る。それに主として……思うままに戦えぬ従者の心中を汲んで……加減を知らぬ大蛸を叩き切るッ!」

唐梳は五島師の腕の付け根を狙って滑る床の上を駆け出す。五島師は、同時に攻撃を仕掛けた桃栗の額を撞いて転ばせ、ゆらりと触腕を蠢かせる。

「その妖刀に切り伏せられては、腕が再び生えるまでに長い時を要するだろう。それはちと困る」
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