127柱目の人柱

ど三一

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学舎編 一

三人と一人

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列の後方では、ナジュと雷蔵が講義中の話をしていた。ふらふらと何処ぞへ行ってしまわぬように他夏は雷蔵に手首を掴まれ、二人の間でぼんやりと高い天井を見上げている。

「今回は二人で戦わなかったのか?他夏、起きてるみたいだが……あ、でも今起きたのか?」
「いや、講義中も起きてる時間は結構あったんだが、それ程動きたくなさそうな感じがしてよ」
「へえ…」
「それに…他夏を背負いながらだと、どうしても動きが限られる。前回かなり考えて、他夏を抱えながらやれる作戦を練ったが、結局見切られてたからな」

前回は何とも後味の悪い勝利という結末で終わったが、雷蔵はそれを勝ち誇れるほどに五島師を追い詰めたとは思っていない。雷蔵が主体となって動き、他夏が何となく放つ術で五島師を翻弄し隙を作ったが、それは他夏が夢見心地で殺気が皆無であったから出来た事。もし他夏が、以前のようにしっかりとした意思を持った状態で、雷蔵と共闘していたならば、五島師は簡単に回避していただろうと考える。

「あの戦い方に慣れてる訳じゃねえし、そう簡単に新しい動きを思いつくもんでもねえ。背負って戦うのは、他夏が調子良さそうな時にした方がいいと思ったんだ。それと、俺単体で五島師に挑んでみてえって気持ちもあったしな。桃栗の啖呵で気合が入ったってのもあるけどよ」
「あれには皆乗せられたもんなあ……。俺はもう少し考えながら色々と試してみたかったが、もう目まぐるしくて……気付いた事は一つだけだったなあ」
「何だよ」
「別に大した事じゃねえよ。それより唐梳の刀の…」
「勿体ぶりやがって……一度話したんだから、言えよ」
「いいって」
「気になるだろ」

雷蔵がナジュの肩を掴もうと手を伸ばした時、それより先に三人以外の手が現れた。

「おやおや…いつも美しい他夏様のお世話をさせていただいている果報者だというのに、愛らしいナジュ様にまでその食指を伸ばすとは……両手に花は私も好む所ですが、私の好みの方々を独占されますと、嫉妬心が芽生えてしまいます」
「うわあっ!?」
「…なに」
「はあっ!?」

三人の背後をとったオウソウは、両手を広げてナジュと他夏を腕の中に閉じ込めて抱き寄せた。他夏は粘液を被っていないが、ナジュは五島師にお手玉のようにされて、身体は滑りに滑る状態だ。抱き寄せた腕と胸に感じる、つるりと滑る肌の感触は、オウソウを喜ばせる。

「てめえっオウソウ!なにしてんだ、離せっ!助平野郎が…っ」
「はあ…そのようなつれない御言葉を申されますと、私の一途な心が割れてしまいそうになります」
「だれ…?」

腕の中で他夏がそう呟くと、悲しげな表情から一変して普段の笑顔に変わったオウソウは、嬉々として自己紹介をする。

「こうしてお話しさせていただくのは初めてにございますね、他夏様。私はオウソウ…唐梳様の従者にございます。せっかくこの学舎でお会いできました縁を大切にして、今宵私の閨に…ッ!」

ゴッと鈍い音がして、オウソウの動きは止まった。もがくナジュを捕まえたまま他夏を口説くオウソウの頭を、雷蔵の拳が襲ったのだ。
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