127柱目の人柱

ど三一

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学舎編 一

学舎の秘密の一端

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「何だよ」
「この学舎の建物……なかなかに面白い造りとなっておりまして」

オウソウは白髪を手でかき上げて頭の後ろに向かって流すと、湯殿の天井を見上げた。面白い造りとはオウソウの視線の先にあるのかと思い、ナジュも同じように天井を見上げるが、そこにあるのは湯気が立ち昇り、天井からしとしとと水滴が落下する様子だけ。オウソウは「宿舎こちらでは、まだ発見していませんが…」と前置きして続きを話す。

「学舎の所々に、隠された通路が存在するようなのです」
「隠された通路?」

てっきりオウソウの色欲がらみのしょうもない話をされるとナジュは思っていたが、予想に反してナジュも興味がある学舎の秘密についての話題であったので話に食いついた。ついさっきまでの呆れたような顔が好奇心を擽られている表情に変わり、オウソウは少々近寄っても気にはしないだろうと水面下でこっそりと距離を詰めていく。

「ええ。私は唐梳様の身の回りのお世話を主にお任せいただいているのですが、他にも警護としての役目も担っております。部屋の配置や通路の位置関係を把握する為、学舎内外を散策していた所、地図に記されていない通路や隠された部屋を発見いたしました」
「隠し通路に隠し部屋…!」

ナジュの瞳が好奇心の輝きを纏う。ナジュの中に残っている童心が擽られる言葉が登場し、さらにオウソウの話に引き込まれて前のめりになる。

(フフ……やはり、お若い方はこのような秘密がお好きにございますね。唐梳様に同様の話をした時も…)
「それでっ続きは?」

唐梳の記憶を思い出そうとした所、ナジュが沈黙が終わるのを待ちきれずに続きを催促する。その無邪気さにくすりと笑ったオウソウは、少しだけ遠回りをしてその愛らしい感情の起伏を眺める事とした。

「フフ……そのように焦らずとも、ナジュ様に秘密の通路の一つをお教えいたしますので、暫しお待ちください。警護の話に戻りますね。……唐梳様は、己の身は己で守る故不要…と申されますが、学舎ここは父君の結界に守られた安全な屋敷ではありません。今はまだ平穏な日々が続いておりますが、後々……各々の思惑が動き出す頃合いが来るでしょう。唐梳様もその思惑に巻き込まれる事は確実……競合相手がいらっしゃいますから。その為、今の内から周囲の環境にも常に気を配らねばなりません。これはナジュ様への助言ともなります」
「早いうちに学舎の中を把握しとけってことか?」
「ええ、その通りにございます。隠された場所を見つけ、その場所をどう利用するのか……。その用途は……敢えて口に出さずにおきましょう。現在の私は、”近道”として偶に利用いたしますが…」
「ふーん……」

近道以外の用途が何なのか、ナジュは深く考えず思考を流した。オウソウと同じように近道をできたら良い位にしか考えていなかった。
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