ベノムリップス

ど三一

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不思議な同居編

第16話 3人の午前

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2人が就寝した後、ニスはひとり日が昇るまで起きて眠るを繰り返していた。
牢に囚われていた時と同じように、熟睡はしなかった。

「……?」

隣のグンカが寝起きの声を上げるのを聞いてそちらを向いた。
グンカは本当に一晩中制帽を被っていたらしい。顔の上に帽子が乗り、顔が隠れている。
起きたのだろうか、ニスが様子を見ているとグンカが寝返りを打つ。

「……なんだ」

まだ半分意識が覚醒していない視界で、ニスと向かい合う。2人の距離は20センチも無かったが、それにグンカが何か言うこともなく、思考が半分しか機能していないのだろう。グンカは寝ぼけ眼でニスをじっと見た後、窓から差し込む日の光を眩しそうに見て、室内の時計を探したが見つからなかったので、直接聞いた。

「……今、何時だ」
「5時」

ニスの答えに不機嫌そうに目を細めて、ずれていた枕を直した。再度眠りにつくつもりなのだろう。

「…起床時間は6時だ。まだ眠っていろ……大人しく…側で…」

グンカは目を瞑り、掛け布を手繰り寄せた。
少々乱暴に引っ張った為、グンカの掛け布がニスにもかかる。

「……」

ニスよりも体温が高いグンカに掛かっていた掛け布は、ニスの身体を温めた。
しかし布を掛けてそのまま、グンカの片腕がニスの身体の上に乗っている。
腕の主はすうすうと寝息を立てて起きる様子はなく、意識ない人の腕がずっしりとニスの腕に食い込んでいる。

「……重いっ」

ニスは暫くそのままにしていたが、だんだんと重なっている場所が痛くなってきた。

「起こしたら……駄目だし……」

この体勢のまま、あと1時間目を瞑って時が過ぎるのを待たねばならないのか、と諦めかけた時、グンカが掛け布を握って反対に寝返りを打つ。自分の分とニスの分の掛け布も奪い取って、両腕を自分の腕の前で一纏めにする。
そうすると、ニスの繋がれた方の肘は折れるのと反対方向に伸ばされて、かなり苦しい体勢になった。

「……っ」

仕方なくニスはグンカの手首の枷を外して、自分に付け替える。完全に外れていると、起きた後に、「何故枷が外れている」と騒がれたら面倒だと思った。

気持ちよく眠りについているグンカは、今度はまたニスの方に寝返りを打つ。この寝返りで彼の癖がわかった。
掛け布を離したグンカは、ニスの手枷を掴む。

「!」

離れようとしたニスを枷ごと抱き込んで、暖を取る。
空いた窓から吹き込む風は少しだけ冷たい。

「…」

ニスはグンカの身体の体温から暖を取っていたが、少しも眠くなることはない。ただ苦しい体勢からは脱せたので、これくらいは許容範囲だと諦めて瞼を下ろした。

「ふぁ~……ん?ニス……?」
「…」

朝ギャリアーが起床すると、困った顔をしてギャリアーを見るニスがいた。

「これ…外してほしい…」
「ちょ、ちょっと待ってろ…!なんでこんな状態になってんだ…?」

ニスの手枷を外してやると、丁度グンカも起床する。就寝中のグンカが寝返りで荒らしたニスの寝床を見て、呆れたような声を出した。

「…何だ貴様、寝床がぐちゃぐちゃではないか。寝相が悪い…」
「……」

口を手で覆い欠伸をするグンカの横顔を何か言いたげに見つめるニス、ギャリアーはベッドの上で、「改善が必要だな」とポツリと零した。


同居生活最初の朝食は、ギャリアーとニスが作ることになった。今日のグンカの勤務開始時間が早いため、今脱衣所にある洗面台で準備をしている。朝起きたグンカの姿を見て、ギャリアーは少し驚いた事があったが、ニスが特に気にした様子もないので話題にあげるのは止めておいた。

ギャリアーとニスは顔を洗って、軽く髪を整えると、台所に立った。2人とも寝間着のまま、包丁を握ったり、お湯を沸かしたりしている。

「俺は…朝はパンとたまごとコーヒーだな…同じのでいいか?」
「ええ」
「あいつは…」

ギャリアーは脱衣所に居るグンカの方を見る。用意するのが面倒なので朝食は食べないと言っていたが、まだ家を出るにはかなり余裕があるだろう。

「…ま、食べなきゃ俺とニスで分けて食べればいいか」

ソファの前のテーブルに2人分の朝食とコーヒーを置いて、ギャリアーは台所で凭れて先に食べる。

「…座らないの?」
「ああ、いつも此処で済ますんだ。行儀は悪いが」

ソファではニスが端っこに詰めて座り、何とか2人座る場所を空けている。

「……参ったな」

ギャリアーは髪を撫で付けると、食べかけのパンとスクランブルエッグが乗った皿、カップを持ってニスの反対側に座る。2人の間には1人分の食事が用意されている。

脱衣所から身支度を整えて出てきたグンカは、ソファにやけに離れて座るギャリアーとニスの2人が自分の方を見ているのに違和感を覚えた。ギャリアーが短く「飯」と口にすると、ニスがテーブルを指差す。

「…私は朝は」
「…」
「…」

じっとグンカを見つめる2人。グンカとニスはプレッシャーを与えようとしている訳ではない。寝起きと別人の様に整えて帰ってきたグンカの姿に驚いていた。

「…変わるものね」
「!」

ギャリアーはニスを見た。反応が薄い彼女が同じような感想を抱いたのに少し驚く。

「…まあ、用意したというなら頂こう」

グンカは、食べ終わりそうなギャリアーの側から空いている真ん中の先に腰を下ろす。

「……狭いっ!」

2人の間に座ったグンカは両腕が2人分の腕に押されて、前傾姿勢にしないと落ちていて食べられたものではない。3人が揃って、少しの時間だがそれぞれの今までの生活について話す。

「俺は大体朝と昼は軽めに食べて、夜はしっかりだな、2人は?」
「朝は食べん…昼夜で量を、だ。夜の方が若干少ない。勤務による」
「肉、魚、肉魚」

スクランブルエッグを乗せたパンを齧り、もごもごとしながら答えるニス。ギャリアーとグンカの2人はぎょっとしてニスを見る。

「お、重いな…朝から肉…」
「…おい、最後の肉魚はなんだ」
「どっちも」

グンカが眉間に皺を寄せる。

「…バランスが悪い!」
「…何の肉だ?」

ギャリアーはきっと鳥のような油の少ないあっさりした肉だと思って聞く。過剰な反応をする2人に、ニスは怪訝な顔をしながら答えた。

「蛇と河童以外…」

予想以上に時間のかかった朝食を終えると、ギャリアーの店の前の掃除を頼まれたニスが、グンカを見送る。

「行ってらっしゃい…」
「…河童ってなんだ」

グンカは制帽や制服を直しながらニスを睨む。

「それそろ行かないと、遅刻するわ…」

ニスが宝飾店内の時計を指差す。出発予定時間から数分過ぎていた。グンカは河童についての疑問が解消されないまま、警備隊詰所に向かうしかない。

「…ええい、気になって仕方ない!貴様、勿体つけおってっ…!帰宅したら河童の詳細を私に報告するように!!行ってくる!」

グンカは小走りで町中に向かう。脳裏には河童という言葉の文字を浮かべながら。ニスはグンカが警備隊の方向に向かうのを見届けると、箒での掃除を開始する。

「砂が…」

砂浜から風によって飛ばされた砂が店の前に溜まっている。せっせと砂を掃いているニスの後ろ姿を、ギャリアーは工房から眺める。

「あ、手振ってる……チャムか。学校だもんな……」

チャムと何か話して、それからニスが掃除に戻ると、ギャリアーは作業を再開する。手には、裏口の鍵と加工前の素材。それを作業机に置くと、機材を使って鍵を採寸する。

「この部分は……鈴でも付けて、名前も…」



店の前の掃除が終わると、ギャリアーはニスに今度は店内の掃除と食材の買い物を頼み、それから昼食にサンドイッチを作ってくれるように頼む。

「昼は仕事がひと段落してからだから、まちまちでな。買い物がてら外で食べて来てもいいし、自由にしてくれ」

ニスは冷蔵庫にあったチーズとスライスした玉ねぎ、軽くと言っていたので緑の野菜、パンにソースを塗って挟み、食べ易いよう切り分けた。自分も時間は早いが簡単に昼食を食べると、買い物籠を持ってギャリアーに声を掛ける。

「買い物、行ってくる…」
「ああ、気を付けてな」

ギャリアーは注文された商品の加工で、昼はずれ込むようだ。現在は店内に人は居ないので、裏口のドアに鍵を掛け
て店の方から外に出る。時間は11時27分。

「天気がいい…」

太陽が上に来る頃には、日差しがさらに厳しくなっているだろう。ニスはギャリアーに借りた帽子を被り、昨日買った普段着を着て、町の方へ歩き出した。



一方その頃、警備隊詰所で事務作業をしていたグンカは、朝の一悶着のことは振り切って仕事に集中していた。

「帰りました~」

先に休憩に入っていたユン達が詰所に戻るのを確認すると、指揮代行を2名指名してグンカも休憩に入る。

「隊長、今日は…?」
「朝食は摂ったからな…」

ランが昼食の予定を聞く。いつもグンカは警備隊内の食堂で済ませるが、今日食堂は食事担当が事前に休みを取っていた為休みの日。ランはグンカを昼食に誘うチャンスだと、幾つか美味しいと噂の店をラインナップしていた。担当の話では、食事量は多い方で好き嫌いは無いらしいとの事。ランは庶民的な食事処を中心に、量が多い店を選んだ。

「……外で買って、詰所で食べるとしよう」
「えっ」

ランは当てが外れて、表情が固まる。その内にグンカは着々と机の上を片付け、外へ出る準備を整える。

「…あ、あまり食欲がないのですか?どこか具合が…」

心配するランに、グンカは朝食の記憶を思い出す。

「…朝昼兼用だったが、あの2人が朝食を用意していてな。なのでそこまで空腹では無い。……」
「そうですか……」

しゅんとするランをよそに、グンカはニスの話を思い出している。

「…ラン」
「は、はいっ…何でしょう」

河童とは何か知っているか、そう聞こうとしたが、ふとある可能性に思い至り口を閉じる。

「…。いや、何でも無い…出てくる」

グンカは警備隊詰所を後にする。
もし河童というものが、周知のもの、既に流行が終わったものであった場合、ランにそれについて聞くのは良い。しかしユンにその話が伝わると少々面倒臭い、とグンカは思った。

「ユンの事だ……その河童とやらを使った食物を持ち込んで、私がランに聞いていたと話をするに違いない…」

ぶつぶつと独り言を話しながら詰所から通りに出ると、市場は人で溢れ返りどの飲食店にも待ちが出ている。露天の軽食でも買うかと、少し足を伸ばす。

「む……」

見知った長い赤髪が籠を手に歩いている。多様な髪色がそこらにいるが、グンカの目にはその赤が殊更映えて見えた。声を掛ける理由は特に思いつかないが、ただ見送る事も、何だか違う気がした。赤い髪はどんどん人混みの先へ消えてゆく。グンカは時計を見ると、赤い髪を追って歩き出す。

「……単独行動中怪しい動きはないか、調べてみるか」


ニスはこの町について、ほぼ何も知らない。
昨日の買い物でも、チャムに案内された店の数はこの町のほんの一部。潜源石を扱う工房もギャリアーの店と、老舗高級店しか見ていない。買い出しを頼まれた生鮮食品を販売している店は何度も通り過ぎたが、町の開拓がてら何ヶ所か店を回ってみる事にした。

最初は町への出入り口がある警備隊詰所の近く。
この辺りは人通りが多く、大きな荷物を抱えた人、荷馬車の往来が盛んだ。警備隊員が町の門を通る人に手荷物検査を行い、荷馬車が見せた許可証と内容物を改めている。先日のグンカとランの話が思い起こされる。

「原石を町の外に持ち出そうとする人が、多い…だっけ」

町の出入り口の警備は堅固な様子だが、海岸には警備隊は常駐していない。

「海からの持ち出しは可能……?」

もし、あの霧を突破できたならと可能性を考える。
実際にニスが霧の中を抜けて、この港町リリナグに辿り着けたという事は。
ニスの目の奥が暗く沈む。
警備隊の様子を眺めながら歩いていると、荷馬車がすぐ近くを横切りニスは思わず飛び退いた。

「…危ない………あ」

荷馬車に轢かれないように、今度は周りをよく見ながら歩いていると、門の横にある警備隊詰所の待機所に、グンカの姿を発見した。ニスが釈放されるか否かの時に、使っていた机に座って書類を作成している。その前の机にはランも居る。

「そういえば……昼、どうするんだろう」

ギャリアーとニスはサンドイッチを食べた。朝に作ってグンカに持たせる時間はあった。

「……」

グンカは早々に家を出て行ってしまったので、昼食について聞きそびれてしまったが、ニスはサンドイッチを差し入れしてもよかったかもしれないと思った。

「…帰ったら聞こう」

詰所に入っていく警備隊員達に、立ち上がるグンカの姿を最後に見て、詰所の前を通り過ぎた。

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