上 下
18 / 32
冒険はお姫様抱っこのままで

お雪の回想 2

しおりを挟む
私は、氷川 雪乃 女子高生。
最近、私には悩みがある。
学校から帰り部屋の扉を開けると頭をかかえる光景があった。
「このっ、このっ、うりゃっ、うりやっ!」
コントローラーを握りしめ格ゲーに夢中になってる美女がいる。
10年前から家に居候しているのいとこの美雪だ。「うりやっ!うりやっ!うりやぁぁぁ!!」
美雪は、ゲームがへただ。
下手だか大好きでほっておくと一日中やってる。
「おお、ゆきのん帰ったか?対戦しよう。やっぱ、しーぴーゆー相手ではもりあがらん」
「ゆきのん、言うなっ!」
「すまんすまん。で、やるか?」
「やらないわよっ!」
私がゆきのんと言われて怒るのは本名の雪乃が簡単に推測されてしまうからだ。
私達雪女は、本名を愛する人にしか明かせない。私は、普通お雪とよばれてる。
困ったことに美雪も普段をお雪を名乗ってる。
なので私は雪姉と呼ぶから、私をお雪と呼んでと言うのにゆきのん言う。
お雪と呼ばないと返事をしないと言ってある。
「そうか、じゃあやるか」
「だから、やらないって言ってんでしょっ!」
「じゃあ、何する?」
「勉強」
「うげぇー、せっかく遊んでるのに」
「うるさいっ!さっさと片付けてよねっ!」
「へいへーい。、なんで女子高生なんかやってるのよ。しかも10年も」
私は、卒業するとまた入学して一年から始めるを繰り返している。
何せ年をとらないから。
教師達の記憶は操作している。でも、流石に10回も繰り返してれば慣れてくる。
「そんなことより、早く片付けなさいよねっ!」
「はいはい」
夕食後、少しは遊んでやることにした。
格ゲーで容赦なくボコってやる。

「くそっ、なぜ勝てんのだっ!?」
「そりゃあ、私の方が上手いもの」
「ぐぬぬぬ…10年のあどばんてーじはいお大きすぎる…!」
「ふんっ」
私は、鼻をならした。
「そう言えば、あんた好きな人できたの?」
「ん?なんじゃいきなり」
「いいえ、別に。で、どうなの?」
「ああ、いるぞ」
「ふぅん、どんな子?」
「そうじゃのう。普通の人間だ」
「そう。その子とは付き合ってないの?」
「まだじゃな」
「そう、じゃあ今度デートにでも誘えば」
「そうじゃな。そうするか」
「うん、頑張りなよ」
「そう言えば、祭りがあるらしいのう?」
「ええ、毎年あるけどそれがどうかしたの?」
「我も行きたいのだがよいかの?」
「別に構わないけど、なんで?」
「まぁ、その、あれじゃ、気になる相手が行くのでじゃ」
「そう、じゃあ一緒に行こう」
そして、祭りの日

「なんじゃ、ゆきのん、そんな格好でいくつりかの?」
私普段の私服だ。
「だから、ゆきのん言わない。何か問題?」
「祭りと言えば浴衣じゃろうが!」
美雪は、浴衣であった。
「別にいいわ。これで」
「風情があるまい。ほれ、手伝ってやるぞ」
美雪は、私の服を脱がしにかかったきた。
「やめて、このままでいいの」
「ダメじゃ。浴衣に着替えるのじゃ」
「わかったから、自分で着替える」
美雪の手を振りほどいて部屋に戻った。
☆☆☆
出店がなさ立ち並び賑わう。
「お雪ーっ!」
学校の友達出会う。
「今晩は」
「お雪ちゃん、こんばん」
「気合いはいってるねー!」
私の浴衣を見てる
「こっちは、いとこの雪姉」
友達に紹介する。
「よろしくお願いします」
「あっ、どうもこちらこそ」
美雪は頭を下げる

「では、我は用事があるのでの。友達とゆっくりまわるがいい」
美雪は去っていった。
☆☆☆
「ねぇ、お雪のいとこさん、綺麗ね」
「お雪に似てるね」
「まぁ、よく言われるよ」
私は苦笑い
友達と出店を回る。
「あ、りんご飴がある」
「私買ってくる。みんな待ってて」
「はいよ」
私は屋台に向かう。
「おじさん、一つください」
「あいよっ!」
「ありがとうございます」
お金を払って受け取る。
「あ、あの」
後ろから声をかけられた。
振り向くとそこには、美雪がいた。
綿飴とヨーヨー風船、焼きとうもろこしを持ってる。

「満喫してるなぁ…」
「あ、ゆきのん」
「ゆきのん言うなっ!」
「ごめん、つい癖で」
「で、何?」
「これ、やる」
「ん?」
美雪は、りんご飴を差し出した。
「なに?くれるの?でも、もう買ったから要らない」
「そうか……いらないか……」
美雪は、しょんぼりした。
「用事はすんだの?」「いやまだじゃ」
「じゃあ、行かないと」
「むぅ、わかった。ではな」
私は、美雪に背を向け歩き出す。「あ、そうだ。来週もお祭りあるみたいだからその時は一緒にいよう」
私は、振り返らず手を振った。
「そうか、また遊ぼう」
美雪も手を振る。
ひとしきり遊んだ頃合い。そろそろ帰ろうとスマホで美雪に連絡する。
「雪姉、用事すんだ?そろそろかえるよ」
『おう。コンビニで待ち合わせしょうぞ』
声がご機嫌だ
「わかった。すぐいくよ」
私は、なコンビ二に向かった。
「遅いぞ、ゆきのん」
「だから、ゆきのん言わないで」
「すまぬ」
両手にパンパンに膨れたレジ袋
コンビ二でも買い漁ったらしい。
「さて、帰るか」「うん」
私は、美雪の手を握った。
☆☆☆
「今日は楽しかった。ありがと」
「我もじゃ」
「じゃあ、帰ろう」
「うむ、気をつけて、転ばんようにな」
「子供じゃない」
私は、家に帰った。
☆☆☆
私は、ベッドの上で考える。
(どうして、あんなに嬉しそうだったのかしら?)
次の日
「おはよう」
「昨日は、どうだったの?」
「ああ、あれはな。一緒にいるのが楽しくてな。ずっと一緒いたかったのだ」
「そう。おしかけちゃえば」
「なっ、ななっ!なに言ってるのよ!?」
「冗談よ」
美雪は、真面目にかんがえこむ。
「いいかも」


「しかしだな、楽しい時間は早く過ぎるものだ。我も年をとった」
「まだ若いでしょ?」
「いや、10年前に比べたらな。やはり、年老いるものじゃ」
「ふぅん」
美雪は、窓の外を見た。
「いつか別れが来るのだろうな」
「不老不死でも永遠に存在できる訳じゃない。特に私達は、いつ消えるかわからない。」
「わかっている。ただ、それを考えると胸が苦しくなるのじゃ」
「私達は、本当にもう二人しかいないのかな?」
「少なくとも私は、他の仲間を見たことない」
「そう。みんな消えてしまったのかな?」
美雪は、寂しげに微笑みを浮かべた。
「ゆきのん……」
「ゆきのん言わないっ!」
「おお、すまぬ。つい癖で」
美雪は苦笑いをする。
「じゃあ、学校いってくる。」
「うむ、我も出掛けてくる」
「あの男、?」 
「な、な、なん、なんで、それを」
「だって、いつも視線感じるし」
「そ、それは、その」
「まぁいいけどね。頑張りなよ」
「な、何をがんばるんじゃ?」
「いいから、行きなさいよっ!ただし、迷惑をかける!」
美雪を蹴り飛ばした。
「痛っ、乱暴なやつじゃのう……。ではな」
美雪は出掛けた。
学校につくと
下駄箱に何通か、手紙はいってた。
「面倒な」
まとめてグリットとねじって丸めゴミ箱に放り込む。
1日授業を受けて帰ろうすると見知らぬ男子生徒に呼び止まられる


「あの、すみません」
「はい?何か用ですか?」
「手紙読んでくれました?」

(あれか…)
「読まずに捨てた」
「そ、そんなっ……!」
「用件それだけなら帰ります」
「待って下さい!」
腕を掴む。
「触るなっ!!」
私は、振りほどく。
「あの、好きです付き合ってください!」
「無理」
私は歩き出す。「あ、あのっ……」
私は立ち止まる。
「何?」
「あの、名前だけでも教えてくれませんか?」
「嫌だ」
「どうして……」
「興味がないから」
私は再び歩く。
「待ってくれっ!」
「しつこいなぁ……」
振り向き様にキッとにらむ。
男子生徒はしばらく意識を失った。 
本能数分だが、意識を取り戻した時、ほんの数秒間間の記憶を失っていた。
「俺は何をしていたんだっけ…まあ、いいや帰ろう」
男子生徒は、そのまま帰っていった。
☆☆☆
お雪は家に帰宅した。

「雪姉は、まだ帰ってないのか」
お雪が雪姉が人間に恋してるその事を考えると少しモヤッとした気分になった。
「6時近い、まあ子供じゃないし…」
そう考えたが、ふと、気がつく美雪は、朝7時に出掛けた…つまり、かれこれ11時間…いやいや、これは迷惑だろう。
迎えに行こう。
なぜか急に腹が立ってきた。
「まったく、世話のかかる姉だ」
美雪を探しに出かけた。
☆☆
男の家を訪ねると、やはりいた。
「もっとシンジともっと、遊ぶー」
とか言ってるのを首寝根っこ掴んで帰る。
「おい、帰るぞ」「離せー」「ほれ」
美雪を投げ飛ばす。
「きゃあっ!」
美雪は、受け身をとって着地する。
「いきなりなにするんじゃ!?」「帰るぞ」「うむ」
途中、公園による。
「どういうつもり、雪姉の間抜けのせい私まで雪女てばれてるじゃない」
「すまん、つい楽しくてな」
「反省しろ」
美雪の頭を小突いた。
「誰かに話したらあの男殺す」
「雪姉はあの男が好きなの?」
「勘違いしないでっ!好きじゃないっ!ただ、ちょっとだけ一緒にいて楽しかっただけで、別に特別な感情なんてないしっ!それに私達、もうすぐ消えるかもしれないしっ」
「ツンデレ?なの?なぜ?雪姉はあの男を生かしたままにしてるの?」
「うるさいなぁ……。いいでしょ別に」
「雪姉の気持ちはわかった。でも、もう少し冷静になって」
「雪姉は、正体を知ってる以上あの男を殺すべきよ」

「そうか?」
「そうよ」
「確かにそうだが……」
「雪姉、お願いだから言うことを聞いて」
「でも、どうすればいいかわからない」
「雪姉にできないなら私が殺そうか?」

「ダメだ。それはだめだ」
「どうして?」

「わからない。でも彼を殺すくらいなら消えてしまってもいいと思ってる」
「そんなのだダメ!」

「なら告白して本名明かしなさい」
「えぇっ?…」
「告白しないで消えしてしまったら、あの男を殺す」
「えぇ……」
「それとも消える前に殺す?」
「いや……」
「じゃあ、早くしないと」

「少し時間をおくれ。怖いのじゃ…同じ時を過ごせないことが…先に彼を失ってしまうことに我は耐えられるだろうか?」
「雪姉……」
「考える時間が欲しいのだ」
「わかった。待つわ」
「ありがとう」
だが、私は約束をやぶろうとした。
その雪姉は、デートに誘うんだといそいそと嬉しそうに出掛けたはずなの、落ち込んで帰って来た。
「断られたの?」と聞いてもまるで要領が得られない。
ひどくへこんでいる。
私は、原因を知りたくあの男をさがす。
男の会社の近くの公園のベンチでため息をついてる男を見つけた。
殺してしまおうかと近ずいたが、雪姉の顔が頭に浮かんでためった。男と話し、雪姉をデートに誘うように言ってわかれた。
翌日、雪姉は、デートに誘われたとうかれていた。
そしてデートに来て服はどれがいいと大騒ぎを始めた。4時間もかけて選んだ。
「これで完璧であろう?」
と浮かれまくってるのでなんだかイラっとしてしてしまった。冗談のつもりで
「雪姉、大事なものを忘れてる」
と言ってやった。
すると、みるみる青ざめて泣きそうな顔になる。
「なに?」
「勝負パンツよ!」
「そんなのないっ!」
「ないの?じゃあ買ってくれば?」
「うむっ!かってくゆ!」
雪姉は走って行った。
冗談のつもりだったのだが…
本当に買いに行ったようだ。
「雪姉、大丈夫かな……」
☆☆☆
私は、下着屋に入る。
「いらっしゃいませ」
「すまぬ、ここの店で一番かわいいショーツとブラジャーをくれ」
「はい、かしこまりました」
店員は、私を上から下までじっくり見る。
「お客様は、そのお召し物では、少々幼すぎると思われますが……」
「わかっている。だが、今日はどうしても必要なのじゃ」
「失礼ですが、おいくつですか?」
「18歳だ」
「それでしたらこちらの商品がよろしいと思います」
「ふむ。見せてくれ」
「はい。どうぞ」
手渡されたものは、レースのついたピンクの可愛いものだった。
「ふむ。気に入ったぞ。これを貰おう」
「はい。お買い上げありがとうございます」
レジでお金を払う。
「お釣りはいらぬぞ」「えっ?あの?」
「よい、持って行け」
店を飛び出して家に帰る。
☆☆☆
雪姉が帰ってきた。
「ただいま」「おかえり」
「さて、準備をするかのぅ」
「雪姉」「なんじゃ?」
「頑張れ」
「そうだ。10年も居候させてもらって、世話になったのう」
 「雪姉」
「なんじゃ?」
「楽しかったよ」
「もしかしてもう会うことが叶わぬやも知れんので言っておく。ありがとう。雪乃」
「私こそ、今までありがとね。美雪」
「うむ。では行ってくる。ゆきのん」」
「ゆきのん言うなっ!」
雪姉は出掛けて行った。

「全く最後まで」
最後とはかぎらないわね。
「帰ってきら、またゲームでボコってあげる」
その日の夕方、スマホに着信がある。
「おう。ゆきのん、すまん。今夜は帰らんぞ。心配は無用ぞ」
「うまくいったのね」
「ああ。ありがとう。」
「よかったわね」
「ああ」
「気をつけてね。それと…ゆきのんって呼ぶなっ!」
「じゃあな」
「うん」
電話を切る。


次の日、
学校に行き下駄箱に入ってる手紙を読まずにゴミ箱に捨てる。
毎朝、毎朝、鬱陶しい
教室に入ると妙にざわついている。
「おはよう」「おっはよう」「なに?なんかあった?」
「新任の教師が来たらしい」
「ふーん。女?」
「ぱつきんのちゃんねーらしい」「ふーん」
興味なし。
「お雪、お前、モテるんだな」
「なにが?」
「ラブレター入ってただろ」
「うん。今時、紙の手紙って時代錯誤も甚だしいと思うんだけど」
「まぁ、そう言うなって」
「で、どうする?」
「どうもしない」
「ほぉ。俺だったら即OKだけどな」
「私には関係ない」
「ふーん。でも、お雪、かわいいもんな」
「うるさい。黙れ」
授業中に、突然窓ガラスがビリビリと震える。
「なに?地震」クラスがざわつく。「静かにっ!」先生が怒鳴る。
「なんだ?」「なんだよ。これっ!」クラスの男子が騒ぐ。「静まれっ!」
しかし他にはなにも起きなかった、
午後の授業に噂の新任教師があらわれた。
クラスの男子が騒ぎだす。
かなりの美貌だ。「うひょっ。美人じゃん」「うっそマジかよ!」「うわっ。超可愛い!」
「みんな、よろしくねっ」
きゃあきゃあ言ってる。
私は、無関心に外を見ている。
「はい、席について」
「今日から英語を担当しますシレーヌ セリエールです。皆さん、よろしくね」
「はい、質問」
「なにかしら?」
「結婚してますか?」
「未婚よ」
「好きなタイプは?」
「優しい人かな」
「付き合ってる人はいますか?」
「いません」
「彼氏は?」
「いません」
「年収は?」
「秘密よ」
「好きな食べ物は?」
「甘いもの全般」
「趣味は?」
「読書とゲーム」
「特技は?」
「特にないわ」
「スリーサイズは?」
「上から95・58・88」
「すげぇ」「うほっ!エロい」「えろっ」「Fカップですか?」
「ええ、そうよ」
「お尻のサイズとか知りたいんですけど」「ダメですよ」
「ええ~」
「じゃあ、先生の趣味を教えてください」
「歌を歌うこと」
「カラオケ好き?」
「ええ、大好き」
「行きましょう」
「いいわ」
放課後、女子生徒に囲まれて、カラオケボックスに向かう。
「先生、こっちこっち」「こっちこっち」
私は興味ないので帰ろうとするが、呼び止められられた。
「貴女は一緒に行かないの?」
「興味ないから帰る」
「あら、そうなの?そう言わず。一緒に行きましょう。きっと楽しいわ」
強引に連れていかれる。

☆☆☆
カラオケボックスに着いて、それぞれ歌う。
歌い終わって、先生の周りに集まる。
「ねぇ、次、何を歌いますか?」
「そうね。次は……」
「先生」「なに?」
「ちょっとこっちに来てください」
部屋から出ると、廊下で他の生徒が待っている。
「お願いします」
「わかったわ」
個室に戻る。
「さて、じゃあ、先生。服を脱いでください」
「はい?」
「脱がないと、もっと酷い目にあいますよ」
「ちょっと、あんた達何言ってるの!最低!」私と他の女子が非難する。
「だって、先生、凄く綺麗だから、一度、裸になってほしいんですよ」
「止めなさい!犯罪だぞ!」私は叫んでいた。
「大丈夫だよ。みんなで気持ちよくしてあげるから」
一人の女子が私の口を塞ぐ。
「ん~ん~ん~」
抵抗するが力が入らない。
(もう限界!)
私を押さえてる女子が倒れる。

「ほら、大丈……ぎゃあああっ!」
もう一人の女子が倒れた。
「おい、どうした?」
部屋の中が騒然となる。
私を抑えていた二人が気絶していた。
なにが起きたのかわからない。
ドアを開けようとするが開かなかった。
「なんだよこれ?」
「あんた達獣ね!」
私の瞳が赤く輝く。
男子生徒と荷担していた女子が気を失う。先生を含め全員の記憶操作をする。
私達は、楽しくカラオケをして解散した。
という記憶になってる。
だらもこの後、自殺者がでるなんておもいもよらないだろう。
今回、犯罪行為に及んだ男子とそれに荷担した女子生徒が、自分の行為を恥じて自殺するのだ、む
罪悪感に苦しむ必要はない。
すべて忘れたのだから。
この力を使えば、どんなことも思いのままだ。
所詮、私は妖怪。人間の命など…。
人間には、なんとこんな屑が多いのだろう。少しだけ、同情する。
しかし、すぐにそんな感情も消える。
私は、私だ。なにも変わらない。
私に好意を持ってくれている人達がいる。その人たちのために、頑張ろう。
「お雪ちゃん、どうしたの?」
「なんでもないよ」
うち帰るとコントローラーを握り締めてて雪姉が待ち構えていた。
「今日は遅かったのう。何かあったのか?」
「別に帰り友達…クラスの子とカラオケよってた」
みちくさは、まずいのでは?」
「平気よ、先生も一緒だったから」
「方、れはずいぶんと気さくな先生だのう。楽しかった?」

「別に」(行かなきゃよかった)
「対戦する?」
「いいよ。朝まで付き合う?」
「うむ」
雪姉のやつ、本当にゲーム好きだよなぁ。
「今日は、勝つ!」
「はいはい」
私は、雪姉に勝てたことは一度もない。
翌日、私は、学校をサボる。
「最低な気分は、朝になっても晴れなかった」

「雪のん、どうした?具合悪いのか?」
「うん。ごめんね。大丈夫。対戦相手しよ用うか?」
「いいって、いいって、寝てなさい」
「ありがとう」
私は、ベッドに横になる。
『♪~』
スマホが鳴る。知らない番号からだ。
「もしもし?」
「こんにちは」
「どちら様?」
「シレーヌです」
「ああ、昨日は、どうも」
「どうして私の番号を知ってるんですか?」「秘密です」
「そうですか。で、なにかごようですか?」
「実は、お話があります」
「はい」
「今すぐ来てもらえませんか?」
「どこへですか?」
「公園です」
「ごめんなさい。具合が悪いので無理です」
「そうですか。残念ですね」
電話を切る。
またかかってきた。
「はい?」
「お休みのところ申し訳ありません。シレーヌです」
「ええ、わかってます。で、なんの御用ですか?」
「体調はいかがですか?」
「最低です」
「それは大変。早く良くなってください」
「ええ、そうします」
「ところで、いつ頃、学校に行けそうですか?」
「そうですね。一週間くらいは、かかりそうです」
「そう、わかりました。連絡待ってます」
「ええ、それじゃあ」
「はい、さようなら」
通話終了。
「はぁ」私はため息をつく。
「あの人、なに考えてるんだろ?」
☆☆☆
翌日、先生がうちに見舞いにきた。「調子はどうかしら?」
「最悪です」
「あら、そうなの?じゃあ、仕方がないわね」
「そうですよ」
「じゃあ、元気になるまでゆっくりしててね」
「はい、ありがとうございます」
「そうだ。これ、あげるわ」
果物籠だ。
「すみません」
「ひとつ聞いていいかしら?」
「何ですか?」
「カラオケに行った時のことです」
「なんですか?」
「あの時の生徒の何人かが自殺したのです」
「えー?そんなことが…」
「それで、あの子達、何か悩んでる様子とかありませんでしたか?」「いえ、とくに」
「そう、なら良いんだけど」
「先生、なんでそんなことを担任でもないのに?」
「それが仕事だからよ。他に理由があると思う?」
「さあ?」
「そろそろ、帰るわね。しっかり休んで治すこと。わかった?」
「はい、わかりました」
先生が帰った後、私は考える。
(何か失敗した?記憶力操作はできてるみたいなのになぜ気にしてるのだろう?)


(まあいっか)私には関係ないことだ。
(それよりゲームの続きでもしよう)
ゲームに集中する。しかし集中できない。
(う~ん、どうしたものかなぁ)
考え事をしながらゲームをしていたせいで、ミスを連発してしまった。
結局、この日は、上手くプレイできなかった。
(うぅ、イラつく!)
☆☆☆
次の日もシレーヌ先生が来た。
「具合はどう?」
「昨日の今日で、そんな変わりません。」
「そう、早くよくなるといいわね」
「はい、ありがとうございます」
「ねぇ、貴女、悩みあるでしょ?」
「えっ?」
「私にはわかるのよ。だって私も昔、そういう経験したから」
「どういうことですか?」
「今は、もう平気だけどね。貴女の不調は、悩みのせいでしょう?」
「……」
「相談に乗るわよ」
「いえ、結構です」
「遠慮しないで」
「ほんとに大丈夫です」
「そんなに強がらなくてもいいのよ」
「本当に大丈夫なので」
「そう」
「先生…人間っどうして、こうもおろかなんでしょう?
「……なに言ってるの?」
「いいえ、なんでもありません」
私は、部屋を出る。
シレーヌ先生は、少し驚いた顔をしていた。
☆☆☆
翌日も先生がきた。
「具合はどう?」
「いいえ、まだ、悪いです」
「そう」
「はい」
「学校は楽しい?」
「楽しくなんかないです」
「どうして?」
「みんな嘘つきばかりだから」
「嘘?」
「はい、表面では仲良くしてても心の中では馬鹿にしてる」
「なにがあったの?」
「別に何もありませんよ。ただ、私は、みんなとは違う。それだけです」
「そう」
「はい」
「辛いことがあったらいつでも話に来ていいわよ」
先生は、なんで毎日来てくれるのですか?担任でもないの?」「私はね教師ですもの。担任でなくても生徒を心配するのが当たり前です」
「そうですか」
「うん、そうよ」
「ありがとうございます」
「うん、それじゃあ、また来るわね」
先生は、帰っていった。
☆☆☆
学校をサボり始めて3日目。
『♪~』
スマホが鳴る。知らない番号…シレーヌ先生の番号だった。(登録してなかった)
「もしもし?」
「こんにちは」
「先生?」
「はい、シレーヌです」
「ああ、こんにちは」
「今、時間大丈夫ですか?」
「ええ、大丈ですけど」
「良かった。実は、お願いがあって電話しました」「なんですか?」
「今度、どこかで会えないかしら?」
「えっ?」
「だめ?」
「えっと、その……」
「無理ですか?」
「どんな用件ですか?」
「それは、直接会った時に言います」
「一応、体調不良で休んで身なんで、外出は無理です」
「そうですか……」
「ごめんなさい」
「わかりました。それじゃあ、体調が良くなったら教えてください」
「はい、わかりました」
電話を切る。
(先生って、私のストーカーなのかな?)☆☆☆
「雪姉、相談したいことがあるんだけど」
「なんじゃ?」
「先生が、最近しつこいんだけど」
「なに?なに?告白されたのか?ついにやったな!」
「ちがうよ」
「なんじゃ?違うのかい?つまらんのう」
「それでね。ちょっと困っててさ」
「ふむ、なにが問題なんだ?」
「それがね。先生が、会うたびに私を心配してくるの」
「ほう?いいじゃないか?優しい人だろ?」
「そうなんだけど。なんというか、過保護すぎるんだよね」
「それで?」
「それで、なんでそんなに構ってくるんだろうと思って」
「何を言っておる、お雪、お前が不登校だからであろう」
「え?」
不登校の生徒、教師が過保護になるのは当たり前では?
「私は、サボってるだけで…」
「なぜ、サボっておる?」
「学校に行きたい気分になれないから…」

「世間では、そういうのが不登校の原因というのでは?」
「あう…」
「お雪、学校に行きたくないなら、止めてしまえ、もとより我らは、学校なんぞに縛られる理由はなかろう」
「でも……」
「それに、お主の担任の教師は、お主に好意を持っておるのだろ?」
「え?」
「でなければ、毎日見舞いに来るわけがあるまい?」
「確かに……」
「お主もまんざらではないのだろう?」
「う~ん、どうだろう?」
「まあよい。決めるのは、お主なのじゃから」
「そもそも、お前、なんで学校なんぞにいきはじめたのじゃ?我には理解できない」「それは、みんなと一緒じゃないと仲間外れにされると思ったから」
「くだらないのぅ。たかが人間どもとの付き合いなど気にする必要あるまい」
「そうだね。私には友達なんていらなかった」
「まあ、今はどうでもよい。それより、今日はどうする?」
「う~ん、どうしようかなぁ」
「今日は、ゲームセンターに行こうかと思うのだが?」
「わかった。じゃあ準備してくるね」
「うむ」
☆☆☆
『ピンポーン』チャイムがなる。
「どちらさまですか?」
「こんにちは、先生です」
「先生?」
「そう、シレーヌよ」
「えっ?」
「開けてもらえるかしら?」
「あの、すみません。今日は、体調が悪いので無理です」
「そう、それなら仕方がないわね」
『ガチャリ』
ドアが開く。私は、鍵をかけ忘れていたようだ。
「えっ?」
「こんにちは、やっぱり居たわね」
「えっ?どうして?」
「貴女、家の鍵かけてなかったでしょう?」
「あっ……」
「まったく、不用心ねぇ。私がいなかったら、大変なことになってるわよ」
「ごめんなさい」
「謝らなくてもいいわよ。ほら、入りましょう」
私は、仕方なく先生を家に招き入れる。
「散らかっていて、ごめんなさい」
「いいのよ。女の子の部屋が汚いのは普通よ」
「そうですか?」
「そうよ。それよりも具合はどうかしら?」
「まだ、悪いです」
「そう、あまり長居しても迷惑ね。そろそろ帰るわね」
「先生、毎日来てくれなくていいですよ」「あら、迷惑だったかしら?」
「いえ、そうではなくて……先生だって忙しいでしょうし」
「そうね。本当は、毎日来たかったけど、授業もあるし、部活もあるし、なかなか時間が作れなくってね」
「なぜ!くるの?」つい、きつく言ってしまった。
「それは……心配だから……です」
「心配しすぎです。子供じゃないんだし」
「それに私は、不登校じゃないです。ただのずる休みです」
学校に来てなければ不登校と言うんですよ」
「それでも、私は、行きたくありません」
「……そうですか。それでは、明日また会いましょう」
「来ないでください」
「それじゃあ、お大事にしてください」
先生は、帰っていった。
(本当に、なんで来るんだろう?)☆☆☆私は、久しぶりに登校した。教室に入るとみんなの視線が集まる。
「あれ?あいつ来てるぜ」
「本当だ。なんで?」
「さあ?」
「サボり癖がついたんじゃねえの?」
(うるさい)
「おはよう」
「おはようございます」
「先生、雪ちゃんが学校に来ましたよ」
「良かったですね」
「ええ、でも、どうしていきなり?」
「さあ?」
☆☆☆
昼休み、私はシレーヌ先生に呼ばれた。
「氷川さん。学校に来てくれて嬉しいわ」
「別に、先生のためじゃない」
「もう、相変わらずつれないんだから」
「それで何の用事でしょうか?」
「貴女とお話したかっただけなの」
「それだけ?」
「うん、そうだけど?」
「はぁ」
「ため息をつくと幸せが逃げますよ」
「逃げた分は、先生が拾っておいてください」
「はいはい」
「それで、話って?」
「そうね。色々あるんだけど、まずは何で休んでるのか教えてくれない?」
「言いたくない」
「どうして?いじめられてるの?」
「違う!」
「なら、どうして?」
「…………」
「私には言えないの?」
「気分が悪かったけです」
「嘘つき」
「なっ!?」
「わかるわよ。そのくらい。私も経験あるもの」
「本当に気分が悪かっただけです。最低の人間を見て胸くそ悪かっただけ」
「そうなのね。でもね、そんな日もあるわ。気にしないで」
「わかってます。人間なんそんなもんです」
「そうね。でも、たまには頼ってくれると嬉しいわ」
「なんで?」
「これ以上、誰かがいなくなるのは、悲しいから」
「なんですか?それ?」
「私が、この学校に来て、何人もの生徒が来なくなってしまったの」
「先生が何かしたの?」
「数人の生徒が自殺したわ。私が話を聞いてあげられればよかった…」
(あの胸くそ悪い獣どもか…)
「先生はなにも悪くないよ。」
「でも、私は、何もできなかった……」
「そうかもしれないけど、先生は頑張ってると思うよ」
「ありがとう。貴女は優しい子ね」
先生が抱きしめてくる。
「ちょっと!先生」
「ふぅ、貴女を抱き締めていると落ち着くわ」
「離して下さい」
「もう少し、このまま……」

「嫌です」
「お願い」
「……」
結局、私は先生の気が済むまで抱き締められていた。
☆☆☆
放課後、私は、先生と話をしていた。
「私が赴任した日に、1人の生徒が行方不明なったの」
(それは…私と違うな)
「それなのに誰もそんな生徒、はじめからいないって言うの」
「はぁ?なんです?それ?」
「きっとその子は、辛いことがあったのね。だから、私の前から姿を消したんだわ」
「違うでしょう!誰も最初からいないって言うのは…なんかおかしい」
「そうね。私もそう思うわ」
「その子、なんて名前ですか?」
「確か……海月真魚さん」
「真魚さん?!」
「ええ、そうよ。知ってるの?」
「この学校の有名人ですよ。面識はないですこけど、水泳部のエースで国体にも出てる子。なのに誰も知らない。はじめからいなかった…?ありえない」
「私もそう思ってるわ。でも、彼女の存在を覚えているのは、私しかいない。だから、これは私にしかできないことだと思ってるわ」
「先生、何するつもりですか?」
「消えた彼女を探すつもりよ」
「危険です。やめた方がいい」
「そうね。でも、私は諦めないわ」
「どうしてそこまで?」
「それは……私が教師だからよ」
「そうですね。先生は立派な先生です。だから止めても無駄ですよね」
「わかってるじゃない。私は、彼女を探し出す。だから、協力してくれる?」
「でも、こんなの普通じゃない。危険です」
(人間じゃないものが関わってる気がする)
「大丈夫よ。私を誰だと思っているの?」
「う~ん、ただの変態教師です」
「ひどい言われようね。でも、間違ってない」
「なら、気をつけてください」
「ありがとう。氷川さんは、優しい子ね」
先生は、また私に抱きついてきた。
「止めてください。この変態教師!」
「いいじゃない。減るもんじゃないし」
「通報しますよ。」
スマホに110と入力した画面をみせる。
「冗談よ。まったく、可愛げがないんだから」
「可愛くても嬉しくありません」
「まあ、いいわ。じゃあ、また明日ね」
「はい、さようなら」

先生が帰った後、私は、考え事をしていた。
『キーンコーンカーンコーン』チャイムが鳴る。
「今日も来たんですね」
「ええ、もちろん」
「先生は、毎日暇なんですか?」
「失礼ね。これでも忙しいのよ」
「じゃあ、来ないでください」
「それは無理よ。貴女に会いたいもの」
「気持ち悪いこと言わないでください」
「もう、相変わらず冷たいわね」
先生は、いつものように私の家に上がり込んできた。そして、夕飯を食べていく。
「先生、ご飯食べていかないんですか?」
「えっ?いいの?」
「別に、作るのは一人分だけなので」
「そう、ならお言葉に甘えて」
先生は、美味しそうに私の作った料理を食べる。
「ごちそうさま。本当に美味しかったわ」
「どういたしまして」
「食器洗うわよ」
「いえ、自分でやりますよ」
「もう、遠慮しないの」
「別に、遠慮してませんよ」
「嘘つきね。本当は嬉しいくせに」
「違います」
「はいはい、そういうことにしておくわ」
そう言って、皿洗いを始める。
(本当になんなんだこの人は?)
☆☆☆
「ねえ、今度の日曜日空いてるかしら?」
「いきなりなんですか?」
「一緒に出かけましょう」
「嫌です」
「なんで?」
「約束があるんです」
「どんな用事?」
「いとこと格げーするんで……」
「、お雪!さ格闘げーしよ」
雪姉がきた。
「誰じゃ?」
「変態教師よ」
「酷い言い草ね。私はシレーヌよ。よろしくね」
「お主が噂に聞く変態か」
「誰が変態よ!失礼な子ね」
「お主に言われたくはない」
「それで、貴女の名前は?」
「我か?我が名は、海賊王じゃ」
「ゲームのプレイヤー名だね」
「そうとも言うな」
「それで、お嬢ちゃんは何をして遊ぶのかしら?」
「格ゲーじゃ!」
「あら、奇遇ね。私も同じよ」
「ほほう、なら勝負するか?」
「望むところよ!返り討ちにしてあげるわ」
「ふはははは!吠え面かくでないぞ」
二人は、コントローラーを握って対戦を始めた。
「雪姉より弱い人初めて見た」
「未熟者な変態教師め!」
「ぐぬぬ、なかなかやるわね。なら次は、これでどうかしら?」
「ふん、くだらん。そんな小細工でこの我に勝てると思うたか?」
「ふふ、それはどうかしら?」
「甘い!」
「あっ!?」
「もらった!」
「先生、弱っ」
「仕方ないでしょ!苦手なものくらいあるわよ」
「格ゲーなんてやったことなかったんですね」
「そうよ。ゲームなんてほとんどやらないわよ」
「はぁ、情けないのぅ」
「うるさいわね。私は頭脳派よ!」
「先生、そんなキャラでしたっけ?」
「たまには、いいじゃない。」
「そういえば、貴女の名前聞いてないわね」
「ん?ああ、そうじゃったな。「雪姉と呼ぶがいい」「はいはい、わかったから」」
「お主ら、姉妹なのか?」
「そうよ。私が長女よ」
「いとこです」
「なるほど、道理で似ているわけだ」
「似てないわよ!」
「そうじゃな。似てないな」
「なんで、そこで意気投合するかな?」
「ところで、お主はなぜここにいるんじゃ?」
「えっと、その……お世話になってるから」
「なるほど。つまり、居候ということか」
「うん。そういうことになるのかな」
「まあいい。邪魔さえしなければ問題なかろう」
「ありがとう」

「今日は楽しかったわ。また遊ぼうね!」
「はいはい、もう来ないでください」
こうして、先生と雪姉の交流が始まった。
(まったく、騒々しい人たちだよ)
☆☆☆
次の日、学校に行くと先生の周りに人が群がっていた。
「先生って何歳なんですか?」
「秘密よ」
「彼氏いますか?」
「いないわ」
「スリーサイズ教えてください」
「内緒」
「好きな男性のタイプは?」
「えっ?う~ん、優しい人かしら」
先生は、質問攻めにあっていた。
(先生、人気なんだな)
私は、先生のところに近寄っていく。
「先生、おはようございます」
「ええ、おはよう」
「なんですか?あれ?」
「ああ、貴女も気になる?」
「ええ、まあ」
「私もあの子たちには困っているのよ」
「先生、モテてますね」
「全然嬉しくないわ」
「そうなんですか?」
「ええ、だって私、結婚するんだもの」
「えっ?先生、結婚できるんですか?」
「失礼ね!私をなんだと思ってたのよ!」
「変態教師」
「はぁ、本当に可愛げがないわね」
「よく言われます」
「そうでしょうね。でも、そこも可愛いんだけど」
「先生、まさか相手は女の人?」
「違うわよ。ちゃんとした男性よ」
「そうですか。伊達食う虫はなんとやらですね?」
「それ、どういう意味よ?」
「そのままの意味ですよ」
「もう!氷川さんは本当に生意気ね」
「すみません。でも、本当のことですよね?」
「もう、知らない!」
そう言って、教室から出て行ってしまった。
(少し、言い過ぎたかな?)
☆☆☆
「ねえ、今日の放課後、空いてるかしら?」
「別に予定はないですけど」
「そう、ならよかったわ」
「何か用ですか?」
「一緒に帰ろうと思っただけよ」
「どうしてですか?」
「一緒に帰りたいからよ」
「結婚相手に結婚前にふられないよう、気をつけてくださいね」
「だから、結婚しないって言ってるでしょ!」
「はい?昼前、するって言ってませんでしたか?」
「…………」
先生は、顔を赤くして黙り込んでしまった。
「先生、やっぱり嘘だったんですね。それとも妄想?」
「ちっ、違うわよ!」
「へぇー、そうですか」
「そうよ!本当よ!」
「はいはい、わかりました。それで、一緒に帰るんですか?」
「いいえ、帰っらないわよ」
「そうですか。じゃあ、さようなら」
「待って!ちょっとくらい話を聞いてくれてもいいじゃない!」
「嫌です。どうせ、下らない理由でしょう?」
「そっ、それは……」
「ほら、図星じゃないですか。それに、早く職員室に戻らなくていいんですか?」
「あっ!?忘れてた!」
先生は慌てて教室を出て行った。
(慌ただしい人だな)
☆☆☆
学校に着くと下駄箱の手紙を処分して教室にいく。
何かざわついてる。
「何かあったの?」
「なんかシモーヌ先生がおかしいみたいなの」
「え?もとからおかしいでしょ?」

「確かにそうだけど、今回は特に変なのよ」
「ふぅん。まあいいか」
私は、自分の席に座った。
(今日は疲れる日だな)
☆☆☆
休み時間になった。
私はトイレに行こうとすると、目の前にシレーヌ先生が現れた。
「なんですか?先生?ストーカー?」
「そんなわけないでしょ!あなたが逃げないように見張ってるのよ」
「はぁ、?」
「きゃー!」
「どうしたんです?」
「誰かがこつち、見てる」
「え?」
私は辺りを見回す。
「誰もいませんよ」
「そんなはずないわ!」
「気のせいでしょ」
「そんなことないわよ。今もいるわ」
「まあ、いいです。とりあえず行きましょう」
「ええ」
私たちは歩き出した。
「あそこにいるわ!」
「いないじゃないですか」
「いるわー、私を殺しにくる!」
そう叫んで走って行ってしまった。(大丈夫かな?あの人)
☆☆☆
放課後になると先生は、すぐに教室を出た。
「今日は早いですね」
「最近、見張られてる気がする。命を狙われてるんだわ」
「はいはい、そうですか」
「冷たいわね。貴女には情って物がないのかしら?」
「ありますよ。ただ先生にかけるほど持ち合わせていないだけです」
「もう、可愛くないんだから」
「先生は可愛いですね」
「なっ、なっ、何を言っているのよ!馬鹿!」
先生は、顔を真っ赤にして走り去って行ってしまった。
(先生って、意外に初心なんだな)
☆☆☆
私は、今日も一人で帰ろうとする。
すると、後ろから声をかけられた。
「ねえ、待ってよ」
振り返るとそこには先生がいた。
「なんですか?」
「私も一緒に帰ってあげるわ」
「結構です」
「そんなこと言わないでお願い。怖いの一緒にに帰って」
「はぁ、仕方ないですね。でも、少しですよ」
「うん!ありがとう」
「あと、先生」
「何?」
「近いです。離れてください」
「わかったわ」
先生は、私から離れる。
「それで、どこに行くの?」
「いつも通り
帰るつもりでしたが」
「じゃあ、私の家に来る?」
「遠慮します」
「なんでよ?」
「先生の家に行ったら面倒くさそうだし」
「本当に失礼ね」
「じゃあ、先生。さようなら」
「嘘だから、一緒に来て」
私は、仕方なくついていくことにした。
「最近、どうしたんです?」
「見張れてるのよ」
「だれに?どうして?」
「わからない。けど真魚さんのことを調べるようになってからずっと視線を感じるの!」
「まだ、やってたんですか?」「当然よ。諦めるわけにはいかないわ」
「うちに遊びにばかりくるから、もう止めたのかと思ってました」
「止めてないわよ。それに最近は、氷川さんの家にも行ってないし」
「で何かわかったことはあったんですか?」「全然駄目。やっぱり、情報が少ないから難しいわね真魚さんの家も行ってみたの」
「それで?」
「うちには娘なんかいませんって言われた」
「やばくありません?」
「どうして?」
「家族からも存在してないなん言われるなんてただ事じゃありません。」「そうね。でも、それは考えすぎじゃないかしら?」
「そうでしょうか?」
「きっとそうよ。それでね、私は思ったのよ」
「何をです?」
「真魚さんはどこかに隠れているんじゃないかってね」
「みんなが存在してない何て言うことが説明できませんよ?」
「そうね。でも、そう思わないと辻妻が合わないのよ」
「隠れてる方がよほど辻褄があいません!」
「それはそうだけど……」
「先生、今日はどうするんですか?」
「どうする?」
「これからです。先生は、どうしたいんですか?」
「わからない」
「もうあきらめましょう。海月真魚なんて子は存在しなかった。誰もがそういうのです。そう思うしかないです」
「そうかもしれない。でも、絶対に違うわ」
「根拠はあるんですか?」
「もちろんあるわ。私が彼女のことを好きっていうのが根拠よ!」
「先生、頭大丈夫ですか?」
「私はいたって正常よ!」
「これ以上調べると狙われるのでは?」「そうかもね。でも、私はまだあきらめないわ」
「そうですか。まあ、先生の好きなようにしたらいいと思いますよ」
「うん。ありがとね」
「別にお礼を言われるほどのことではありません」
「素直じゃないわね」
「よく言われます」
「でしょうね。それじゃ、また明日」
「はい、さようなら」
私は、先生を見送った。
(あの人、本当に大丈夫かな?)
☆☆☆ 次の日、学校へ行くと先生が泣いている。
(どうしたんだろう?いじめられた?いや、先生がそんなことで泣くはずがない。まさか、昨日のことが原因?だとしたら、自業自得だな)
「先生、どうかしたんですか?」
かだがたと震えている。「あの、あいつが……、うぅっ、あいつがいるの」
「あいつ?誰ですか?」
「人魚が人魚が、私を狙ってる」
「はい?何言ってるんですか?ついに頭がおかしくなったんですか?」
「そんなんじゃないわよ。本当なの私は、人魚に呪われてるの」
先生は指をさす。
その先には誰もいない。
「誰もいませんよ?」
「いるわよ。見えないだけ」
「はぁ、そうですか」
「ぎゃあーっ!」
悲鳴をあげてどっかに消えてしまった。
シモーヌ先生の姿は、それ依頼みえなくなった。


しおりを挟む

処理中です...