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5 王太子(悪魔)の宣告
「あの聖女ジュリアの娘……」
王太子殿下はなにか言いたげな顔をして私を見つめてくる。
王族の者として何が言いたいかは分かる。私の母は清廉潔白なイメージがある一般的な『聖女』とは逸脱していたのだから。
破天荒で、思いつきのまま行動し過去は振り返らないし、他人も顧みない。そんな母に振り回される父はとても幸そうにしていたけれど。
シュレーン王国には稀に魔力の属性の一つである『聖』魔力を持った女性が生まれる。破邪と治癒に優れ、女神オーレリアの清らかさの象徴とされるその力を持つものは神殿の庇護下におかれ、聖女として大切に育てられるのだ。
女神オーレリアより賜った名が祝福で、伝承には更に続きがある。シュレーン王国は女神の庇護の元、健やかに繁栄を続けるだろう、という『女神の加護』を与えられたというもの。
その女神の加護こそ聖女たちであり、国の宝とも言われる彼女たちは、今日も日や王国のために一心に祈りを捧げ、欲を持たず清貧に生きることを求められる。
母はそんな神殿の方針に嫌気がさし、脱走。たまたま用事で王城に出向いていた当時の父を物理に脅し、自らの領地まで連れ帰らせたのが『聖女ジュリア駆け落ち事件』の真相だったりする。
結局二人はそのまま恋仲に発展し、その果てに規格外な力を持って私が爆誕してしまった、という訳だ。
「私は母の力を受け継いで、聖女の特徴である金の輝きを持つ容姿をもって生まれました。母は私が神殿の司祭たちの手に渡ることを危惧し、私の力は隠されることになりました」
赤みがかった金髪は聖女ジュリアの特徴だった。その特徴をもろに受け継いでしまった私は一目見れば『聖』魔力を持つと分かってしまう。
そのために私は小さな頃から容姿を偽って育った。
「このイヤリングは封魔結晶という魔力を封印する特殊な石から作られました。それに変装の呪いを付与して普段はこのように生活しております」
外していたイヤリングをつけると、赤みがかった金髪が赤茶色の髪へと変わる。
恐らく瞳の色も琥珀へと変化していることだろう。
「以上が私の力について、です。他には何をご所望でしょうか」
「お前がここにいた理由だな」
「うっ、それは……」
王太子殿下の言葉に私は返答に詰まる。なんと言えばいいのか。全くの偶然と言えばそうだし、結局時間をかけて運んだ壺は割れてしまった。
「掃除の邪魔になりそうな壺を一時的に避難させるために手頃な部屋に移動させていたのですが、その移動先がたまたまここだった、と……」
「ほう? この部屋には認識阻害の魔法が仕掛けてあったのだが、それを超えてわざわざここまで来たということか」
「認識阻害の魔法、ですか……?」
「そうだ。ヴィランの腹の紋様は公にできない事情がある。だから普段は誰も立ち入らない西の宮でわざわざ話をしていたというのに」
やれやれと首を振る王太子殿下の言葉に首を傾げる。そんな魔法の気配は微塵も感じなかった。疑問に思っていると意外にも王太子殿下か答えを教えてくれた。
「認識阻害は人に害を与える魔法だ。お前は無意識下でそれを感じとり聖魔力で破ったのだろう」
「ああ、なるほど……」
聖魔力には破邪の力がある。知らずに呪いの無効化などもしてしまうことがあるので、今回もそうやって認識阻害を破ってしまったのかもしれない。
「まぁ、知られてしまったものは仕方がない。さて、どうしてくれようか……」
――ゾクリ。
私の背中に今度は悪寒が走る。
王太子殿下は私を見下ろし、ニヤリと口元を歪めた。
その口元は楽しそうなことこの上なく、私にとっては悪魔の微笑みにも見えた。
「うん。よし決めた。お前、ヴィランの夜伽相手になれ」
名案とばかりにポンと手を叩いて告げて下さりやがった王太子殿下。
私は唐突な最終宣告に零れんばかりに目を見開いて叫んだ。
「はぃいいいいい!?」
王太子殿下はなにか言いたげな顔をして私を見つめてくる。
王族の者として何が言いたいかは分かる。私の母は清廉潔白なイメージがある一般的な『聖女』とは逸脱していたのだから。
破天荒で、思いつきのまま行動し過去は振り返らないし、他人も顧みない。そんな母に振り回される父はとても幸そうにしていたけれど。
シュレーン王国には稀に魔力の属性の一つである『聖』魔力を持った女性が生まれる。破邪と治癒に優れ、女神オーレリアの清らかさの象徴とされるその力を持つものは神殿の庇護下におかれ、聖女として大切に育てられるのだ。
女神オーレリアより賜った名が祝福で、伝承には更に続きがある。シュレーン王国は女神の庇護の元、健やかに繁栄を続けるだろう、という『女神の加護』を与えられたというもの。
その女神の加護こそ聖女たちであり、国の宝とも言われる彼女たちは、今日も日や王国のために一心に祈りを捧げ、欲を持たず清貧に生きることを求められる。
母はそんな神殿の方針に嫌気がさし、脱走。たまたま用事で王城に出向いていた当時の父を物理に脅し、自らの領地まで連れ帰らせたのが『聖女ジュリア駆け落ち事件』の真相だったりする。
結局二人はそのまま恋仲に発展し、その果てに規格外な力を持って私が爆誕してしまった、という訳だ。
「私は母の力を受け継いで、聖女の特徴である金の輝きを持つ容姿をもって生まれました。母は私が神殿の司祭たちの手に渡ることを危惧し、私の力は隠されることになりました」
赤みがかった金髪は聖女ジュリアの特徴だった。その特徴をもろに受け継いでしまった私は一目見れば『聖』魔力を持つと分かってしまう。
そのために私は小さな頃から容姿を偽って育った。
「このイヤリングは封魔結晶という魔力を封印する特殊な石から作られました。それに変装の呪いを付与して普段はこのように生活しております」
外していたイヤリングをつけると、赤みがかった金髪が赤茶色の髪へと変わる。
恐らく瞳の色も琥珀へと変化していることだろう。
「以上が私の力について、です。他には何をご所望でしょうか」
「お前がここにいた理由だな」
「うっ、それは……」
王太子殿下の言葉に私は返答に詰まる。なんと言えばいいのか。全くの偶然と言えばそうだし、結局時間をかけて運んだ壺は割れてしまった。
「掃除の邪魔になりそうな壺を一時的に避難させるために手頃な部屋に移動させていたのですが、その移動先がたまたまここだった、と……」
「ほう? この部屋には認識阻害の魔法が仕掛けてあったのだが、それを超えてわざわざここまで来たということか」
「認識阻害の魔法、ですか……?」
「そうだ。ヴィランの腹の紋様は公にできない事情がある。だから普段は誰も立ち入らない西の宮でわざわざ話をしていたというのに」
やれやれと首を振る王太子殿下の言葉に首を傾げる。そんな魔法の気配は微塵も感じなかった。疑問に思っていると意外にも王太子殿下か答えを教えてくれた。
「認識阻害は人に害を与える魔法だ。お前は無意識下でそれを感じとり聖魔力で破ったのだろう」
「ああ、なるほど……」
聖魔力には破邪の力がある。知らずに呪いの無効化などもしてしまうことがあるので、今回もそうやって認識阻害を破ってしまったのかもしれない。
「まぁ、知られてしまったものは仕方がない。さて、どうしてくれようか……」
――ゾクリ。
私の背中に今度は悪寒が走る。
王太子殿下は私を見下ろし、ニヤリと口元を歪めた。
その口元は楽しそうなことこの上なく、私にとっては悪魔の微笑みにも見えた。
「うん。よし決めた。お前、ヴィランの夜伽相手になれ」
名案とばかりにポンと手を叩いて告げて下さりやがった王太子殿下。
私は唐突な最終宣告に零れんばかりに目を見開いて叫んだ。
「はぃいいいいい!?」
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