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11 ヴィランの過去・前編
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「い、痛い!」
それは反射的に出してしまった声だった。
彼は慣れない私のために、自分だってかけられた呪いで苦しいだろうに必死にそれに耐え、愛撫してくれていた。
初めてだと言うのに快感に打ち震え、感じてしまう自分を恥ずかしいと思った。
けれど、それ以上にヴィラン様に与えられるもの全てが心地よくて溺れてしまいそうだった。
だから思わずヴィラン様に懇願してしまったのだ。あまりの恥ずかしさにあからさまに口に出すことはできなかったけれど、彼は察してくれた。
「何か異変を感じたり、無理だと思ったらすぐに言ってくれ。なるべくゆっくり挿入れるから」
蜜口に滾ったソレを宛てがい、ゆっくりと侵入してくる。思ったより大きかったそれは私でもよく知らないその場所を蹂躙しようと少しづつ入ってきて――。
十分に慣らされ、蕩けきった筈なのに。ヴィラン様の肉棒は、まだ男を知らない私の膣では受け入れ難いほど大きかった。
メリメリと裂けるような痛みが走り、思わず口走ってしまったその言葉。
しかし、その言葉のせいでヴィラン様は動きを止めてしまった。
異変を感じた私がヴィラン様の顔を覗き込もうとすると、彼は突然大声をあげて私から飛び退いた。
「あっ、ああ!! ああああああ!!」
尋常ではない叫びに私は咄嗟にヴィラン様の身体を抱きとめる。
まだ快感に身体が溶かされていたが、動けないほどではなかった。
「ああ、そんな、やめて、やめてくれ……!」
様子がおかしい。
ヴィラン様は焦点の合わない目で何かの幻影を追うように私に向かって手を伸ばす。
「ヴィラン様!?」
縋るように伸ばされた手を一心に掴む。
しかしヴィラン様の異変は止まらない。ガタガタと震え、目は焦点を合わさないまま何かを堪えるようにグッと唇を噛む。
加減を知らないその力はいつの間にかヴィラン様の整った唇に食込み、血を流していた。
私は咄嗟に聖魔力で彼を治癒する。
ついでに彼の腹の紋様に光を当てると、怪しく輝く紋様は急速に力を失った。
つまりこれは、淫紋による異変ではない。
ヴィラン様は見えない幻影に捕らわれたかのようにまだ虚空に視線を向け、なにかに抗っている。
心配した私はヴィラン様の容態を確認しようと彼の正面に覆い被さる。
その瞬間、ヴィラン様が勢いよく暴れ出した。
「やめろ、やめろおおおおおお!!」
「ヴィラン様!!」
暴れる彼を懸命に抑え込む。するとヴィラン様は無意識なのか力を加減してくれて、私でも辛うじて抑え込むことができた。
「あ、あああ……」
途端に大人しくなったヴィラン様は、ベッドにへたり込む。気づけば彼の紫の目には涙が溢れていた。
「ああ、すまない。すまない……」
力尽きたヴィラン様は懺悔の言葉を口にする。まるで、私を傷つけたことを心から後悔しているかのように。
私はただ彼の身体を抱きしめ、傷ついてしまった彼の唇を治療することしかできなかった。
一体何が彼をこうさせているの……?
混乱で頭が一杯になる中、ヴィラン様は紫の双眸を私へと向けて、相も変わらず焦点の合わない瞳のまま小さく告げた。
「すまない、助けられなくてすまない――レナ」
♢♢
ヴィラン様の暴走から翌日。
あれから私は彼を抱きしめたままベッドで共に寝た。
彼は何事もなくベッドから立ち上がると、「昨日のこと途中からをさっぱり思い出せないんだが……」と困った顔で呟く。
私は当たり障りのない返事をして、朝食を摂ったあとそれぞれの仕事をするために別れた。
ヴィラン様と別れて向かったのは王城の東の宮。
寂れた西の宮と違い王族が住まう区画である東の宮では今日もたくさんの人が出入りしている。
ここ一週間で頭に叩き込んだ地図を頭の中で思い出しながら王城の中を突き進んで、私は目的の場所にやってきた。
金の装飾が施された豪華絢爛な扉の前に立ち、ノックする。
「王太子殿下、シュレナです。入ってもよろしいですか?」
声をかけると、しばらくしてから返事があった。
「いいぞ、入れ」
王城でもひと握りの者しか立ち入ることを許されない王族の私室。
フィーフィア王女と会う時とはまた違った緊張で「失礼します」と声を上げて入室すると、執務机で書類に何かを書き込む王太子殿下と目が合った。
「おお、来たか。座れ。それでは報告を聞こうか」
「はい」
進められるままにソファに座った私は王太子殿下にまずは呪いの現在の状況と解呪可能かの判断。解呪が可能であればどのくらいの頻度と時間を要するかを報告する。
「一週間に一回で、それを約二ヶ月ほどか。存外優秀だな」
「聖女としての力は個人の資質に左右されます。私は母の力をほぼそのまま受け継いでいますので聖女としての力は強い方だと思います」
普通は神殿に集められた時に特別な魔力結晶を用いて力の度合いを見極めるのだが、私はそれをしていない。
しかし母曰く、自分と同じくらいの力を持っているらしいので私の聖女としての力は強い部類に入ると推測できる。
「そうか。ではこの調子で頼む」
「承知しました」
王太子殿下の言葉に一礼すると要件は終わったとばかりに立ち上がる。
そのまま退出しようとして……ふと昨日のヴィラン様のことが頭に浮かんだ。
あまりヴィラン様のことを詮索するような動きはしたくないが、気になるものは気になる。
王太子殿下はヴィラン様と兄弟のように育ったと言うからなにか知っているかもしれない。
「あの、王太子殿下」
「なんだ?」
声をかけたものの、少し迷ってしまう。
しかし今後もヴィラン様の夜伽をする以上、聞かなければならないと思い返して、座り直す。
「レナ、という名前に心当たりはありますか?」
奇しくも私に似た名前。レナというのは 私が家族に名前を呼ばれる時の愛称でもある。
しかし私はあくまでヴィラン様に「シュレナ」と呼ばれており、その限りではない。
では「レナ」とは誰なのか。
その問いを発した瞬間、王太子殿下はしばし固まった。
思いがけない質問をされた。
そんな表情で固まった彼は、しばらくして苦い顔をする。
やはり何かを知っているらしい。
「……それは誰から聞いた?」
「ヴィラン様が――」
昨日の彼の異変を説明すると、王太子殿下は苦い表情を浮かべたまま長く息をついて椅子に座り直した。
「やっぱり、まだ引きずってやがったか……」
「何かご存知なのですね」
何かを言い淀む姿に確認するために問いかけると、王太子殿下は迷った素振りをした後、仕方ないと溜息をついた。
「レナ……本当の名前はミレーナ・オレアントだが……」
何かを思い出すように青い瞳を細めながら王太子殿下は呟いた。
「彼女は十歳の時に亡くなった。ヴィランの元婚約者だ」
その言葉に私は目を見開いた。
それは反射的に出してしまった声だった。
彼は慣れない私のために、自分だってかけられた呪いで苦しいだろうに必死にそれに耐え、愛撫してくれていた。
初めてだと言うのに快感に打ち震え、感じてしまう自分を恥ずかしいと思った。
けれど、それ以上にヴィラン様に与えられるもの全てが心地よくて溺れてしまいそうだった。
だから思わずヴィラン様に懇願してしまったのだ。あまりの恥ずかしさにあからさまに口に出すことはできなかったけれど、彼は察してくれた。
「何か異変を感じたり、無理だと思ったらすぐに言ってくれ。なるべくゆっくり挿入れるから」
蜜口に滾ったソレを宛てがい、ゆっくりと侵入してくる。思ったより大きかったそれは私でもよく知らないその場所を蹂躙しようと少しづつ入ってきて――。
十分に慣らされ、蕩けきった筈なのに。ヴィラン様の肉棒は、まだ男を知らない私の膣では受け入れ難いほど大きかった。
メリメリと裂けるような痛みが走り、思わず口走ってしまったその言葉。
しかし、その言葉のせいでヴィラン様は動きを止めてしまった。
異変を感じた私がヴィラン様の顔を覗き込もうとすると、彼は突然大声をあげて私から飛び退いた。
「あっ、ああ!! ああああああ!!」
尋常ではない叫びに私は咄嗟にヴィラン様の身体を抱きとめる。
まだ快感に身体が溶かされていたが、動けないほどではなかった。
「ああ、そんな、やめて、やめてくれ……!」
様子がおかしい。
ヴィラン様は焦点の合わない目で何かの幻影を追うように私に向かって手を伸ばす。
「ヴィラン様!?」
縋るように伸ばされた手を一心に掴む。
しかしヴィラン様の異変は止まらない。ガタガタと震え、目は焦点を合わさないまま何かを堪えるようにグッと唇を噛む。
加減を知らないその力はいつの間にかヴィラン様の整った唇に食込み、血を流していた。
私は咄嗟に聖魔力で彼を治癒する。
ついでに彼の腹の紋様に光を当てると、怪しく輝く紋様は急速に力を失った。
つまりこれは、淫紋による異変ではない。
ヴィラン様は見えない幻影に捕らわれたかのようにまだ虚空に視線を向け、なにかに抗っている。
心配した私はヴィラン様の容態を確認しようと彼の正面に覆い被さる。
その瞬間、ヴィラン様が勢いよく暴れ出した。
「やめろ、やめろおおおおおお!!」
「ヴィラン様!!」
暴れる彼を懸命に抑え込む。するとヴィラン様は無意識なのか力を加減してくれて、私でも辛うじて抑え込むことができた。
「あ、あああ……」
途端に大人しくなったヴィラン様は、ベッドにへたり込む。気づけば彼の紫の目には涙が溢れていた。
「ああ、すまない。すまない……」
力尽きたヴィラン様は懺悔の言葉を口にする。まるで、私を傷つけたことを心から後悔しているかのように。
私はただ彼の身体を抱きしめ、傷ついてしまった彼の唇を治療することしかできなかった。
一体何が彼をこうさせているの……?
混乱で頭が一杯になる中、ヴィラン様は紫の双眸を私へと向けて、相も変わらず焦点の合わない瞳のまま小さく告げた。
「すまない、助けられなくてすまない――レナ」
♢♢
ヴィラン様の暴走から翌日。
あれから私は彼を抱きしめたままベッドで共に寝た。
彼は何事もなくベッドから立ち上がると、「昨日のこと途中からをさっぱり思い出せないんだが……」と困った顔で呟く。
私は当たり障りのない返事をして、朝食を摂ったあとそれぞれの仕事をするために別れた。
ヴィラン様と別れて向かったのは王城の東の宮。
寂れた西の宮と違い王族が住まう区画である東の宮では今日もたくさんの人が出入りしている。
ここ一週間で頭に叩き込んだ地図を頭の中で思い出しながら王城の中を突き進んで、私は目的の場所にやってきた。
金の装飾が施された豪華絢爛な扉の前に立ち、ノックする。
「王太子殿下、シュレナです。入ってもよろしいですか?」
声をかけると、しばらくしてから返事があった。
「いいぞ、入れ」
王城でもひと握りの者しか立ち入ることを許されない王族の私室。
フィーフィア王女と会う時とはまた違った緊張で「失礼します」と声を上げて入室すると、執務机で書類に何かを書き込む王太子殿下と目が合った。
「おお、来たか。座れ。それでは報告を聞こうか」
「はい」
進められるままにソファに座った私は王太子殿下にまずは呪いの現在の状況と解呪可能かの判断。解呪が可能であればどのくらいの頻度と時間を要するかを報告する。
「一週間に一回で、それを約二ヶ月ほどか。存外優秀だな」
「聖女としての力は個人の資質に左右されます。私は母の力をほぼそのまま受け継いでいますので聖女としての力は強い方だと思います」
普通は神殿に集められた時に特別な魔力結晶を用いて力の度合いを見極めるのだが、私はそれをしていない。
しかし母曰く、自分と同じくらいの力を持っているらしいので私の聖女としての力は強い部類に入ると推測できる。
「そうか。ではこの調子で頼む」
「承知しました」
王太子殿下の言葉に一礼すると要件は終わったとばかりに立ち上がる。
そのまま退出しようとして……ふと昨日のヴィラン様のことが頭に浮かんだ。
あまりヴィラン様のことを詮索するような動きはしたくないが、気になるものは気になる。
王太子殿下はヴィラン様と兄弟のように育ったと言うからなにか知っているかもしれない。
「あの、王太子殿下」
「なんだ?」
声をかけたものの、少し迷ってしまう。
しかし今後もヴィラン様の夜伽をする以上、聞かなければならないと思い返して、座り直す。
「レナ、という名前に心当たりはありますか?」
奇しくも私に似た名前。レナというのは 私が家族に名前を呼ばれる時の愛称でもある。
しかし私はあくまでヴィラン様に「シュレナ」と呼ばれており、その限りではない。
では「レナ」とは誰なのか。
その問いを発した瞬間、王太子殿下はしばし固まった。
思いがけない質問をされた。
そんな表情で固まった彼は、しばらくして苦い顔をする。
やはり何かを知っているらしい。
「……それは誰から聞いた?」
「ヴィラン様が――」
昨日の彼の異変を説明すると、王太子殿下は苦い表情を浮かべたまま長く息をついて椅子に座り直した。
「やっぱり、まだ引きずってやがったか……」
「何かご存知なのですね」
何かを言い淀む姿に確認するために問いかけると、王太子殿下は迷った素振りをした後、仕方ないと溜息をついた。
「レナ……本当の名前はミレーナ・オレアントだが……」
何かを思い出すように青い瞳を細めながら王太子殿下は呟いた。
「彼女は十歳の時に亡くなった。ヴィランの元婚約者だ」
その言葉に私は目を見開いた。
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