拝啓、くそったれな神様へ

Happy

文字の大きさ
26 / 34
ループする世界

ロット君と行商人8

しおりを挟む

ザワザワと人の賑わう声が街中に響き渡る。


村より多少大きい街の中で俺はスカドゥエと一緒に探索をしていた。


「スカドゥエ!!ちょっと来てくれ!!あれ!あれ!!めっちゃ美味そう!!買って!!」

途中で屋台に売ってある肉の棒のいい匂いに釣られてスカドゥエを呼ぶ。

そんな俺に呆れた顔をしながらも肉の棒を買ってくれて、疑問を投げかける。

「……イブキの坊ちゃん、アンタ目的忘れてないっすか??」

「わ、忘れてないわ!!」


買ってもらった肉の棒を片手に持ちながら叫ぶ。

街に行くまでの道のりが長く険しくてちょっと忘れかけてはいたが完全に目的を見失ったわけではない。

肉を頬張りながら街や人を見渡す。

この中に、悲運の子がいる可能性がある。

もし、ここに悲運の子がいると仮定するとして、

俺がここにいる事によって今までの街の日常とは多少異なっているからきっと街の変化に気づくはずだ。

俺はそれに戸惑うやつを見つければいい。

そうやって周りを見渡すが、なかなかそういう人物は見当たらない。

そうこうしているうちにまた巻き戻るかもしれない。

時間の見えない制限時間に少し急いだ方が良いかもしれないという焦りが今更ながら募ってきた。

そう考えているとふと、気づく。
今、ループしたらこれまで過ごして得たスカドゥエの信頼が無くなってしまう、という事に。

出会って数時間しか経っていないけれど、それなりにスカドゥエとの信頼関係を築けている。

だが、ループしたら得た信頼も全て無かった事になるのだ。

巻き戻ったらスタート地点はあの屋敷だ。

屋敷からこの街まで馬車で長くて40分以上は必ずかかる。
その道のりを徒歩で行くとなると何時間かかるか…。

街に行くにはスカドゥエの馬車が必要となる。

それに、この街に入る為の通行許可証。入街許可証でもあるこの許可証。

この街に入る前にスカドゥエが坊ちゃんの分っす!と言って出してくれたあの紙。

屋敷には無かったものだからあれはスカドゥエが持っていて、ロット君と一緒にこの街に入る時に出していたものなのだろう。

あれも必要となってくる。

ならばどうやっても街に入るにはスカドゥエが必要となってくるのだ。

そんな重要な事に今更ながらに気づき、愕然とする。

そんな俺の様子を不思議に感じたのか、スカドゥエが俺に声を掛けてきた。


「どうしたんすか?イブキの坊ちゃん??」

ハッとしてスカドゥエを見る。

街に入る前の姿とはうってかわった二重瞼の青色の瞳が不思議そうに目を丸くして俺を見つめる。

そうだ、とりあえずスカドゥエにこの世界におこっている異変から話さなければならない。

話そうとは思っていたもののなんやかんやあって話せず終いだったのを思い出し、今この世界に起こっている異変を話すべく、スカドゥエの方へ顔を向ける。

「スカドゥエ、ちょっと話さなければならない事があるんだ。覚えているか?俺がこの世界に来たのはこの世界に起こっている異変を治すためだって。その事について、話しておきたい。」


「え?今っすか??ここで??」

このタイミングで?とそんな風に思っているだろうスカドゥエが首を傾げながら俺を見る。

「今だ。本当は早く伝えるべきだったんだけど…」


そう言って俺は近くにあったベンチへ座り、これまでの経緯を全てスカドゥエに話した。



「なるほど……。今まで8回世界は巻き戻っていて、今回が9回目。アーシ達、この世界の人間は繰り返されている事に気づかないまま同じ行動をずっと繰り返し続けている……って事っすか?」


あまりにもの規模のでかい世界の異変に唖然とした表情を見せる。


「そうだよ。俺とその悲劇の子以外は世界が繰り返されている事に気づきもしない。疑問にすら思わないだろう。」



「そ、うなんっすか、?じゃ、じゃぁ、アーシ達が会ったのもこれが初めてでは……」


「いや、これが初めてだよ。初めてじゃ無かったらもっと上手く対応してるって。」


「あ、それもそうっすね。弱すぎたっすもん。」


「おい、一言余計だ。」


そう言ってスカドゥエの背中を軽く叩く。


ハハハ、と笑うスカドゥエに安心しながらも、寂しい気持ちになる。

今のこの時間も、悲運の子が死ねばなくなる現在だ。

そう考えてしまい、顔を俯かせる。

そしてそんな俺の様子にまた、スカドゥエが声をかけてきてくれた。

「さっきからどうしたんすか??そんなしょげた顔をして。」

「いや、このスカドゥエと一緒にいる時間も悲運の子が死ねば無かった事になるからさ…」

買ってもらった食べかけの肉の棒を眺める。
この肉を買ってもらった事実も無くなってしまうのだ。

あとでお金を請求するっすからね!!と睨みをきかせながら渋々お金を払うスカドゥエの姿を思い出す。

その後で、が本当に来るのか今はまだ分からない。


「………………。」


「アーシが忘れても、坊ちゃんは覚えているでしょう?」


「………え?」


スカドゥエの言葉に顔をあげる。

スカドゥエと目があい、そしてフッと優しく微笑んで言葉を続ける。


「イブキの坊ちゃんは、アーシを覚えている。なら、次のアーシの対応ができるって事っすよ。」


そう言って俺の頭に手を乗せてポンポンと優しく叩く。

そうして俺を安心させるように優しく叩きながら、俺と目をあわせて話を続ける。


「良いっすか?坊ちゃん。次のアーシの信頼を手っ取り早く手に入れたいのなら、これだけは守るっす。」


「つ、次のスカドゥエなんて……そうだな、大人しく聞いとくよ。」



「そうっす。大人しく聞いといてほしいっす。もしかしたら今のこの次の瞬間に巻き戻るかもしれないっすから。」


そう、真剣な顔をして俺に告げる。



「まずは、嘘をつくな。アーシが戸惑っても、疑う表情をしても、何をしても嘘だけはつかないでほしいっす。誤魔化すのも無しっす。全てにおいて正直に赤裸々に話すっすよ。」


「………あぁ。」


「そして、もう一つ、それでもアーシが信じなかったら、この言葉を必ず言うっす。」


「言葉?」


「月明かりが照らすゴミ貯まりにいた事を知っている、と言ってくれればいいっすよ。」


「?どういう意味だ?」


言葉の意味がわからずに首をかしげてスカドゥエの顔を見る。

その顔は寂しそうな、昔を懐かしむようなそんな顔をしていた。


「ロットの坊ちゃんがアーシを見つけてくれた場所っすよ。綺麗な月がのぼった寒空の中、ゴミだめの中で死にかけていたアーシを助けてくれたのがロットの坊ちゃんだったんすよ。」


齢7歳のガキが、ゴミやら怪我やらでボロボロになっているアーシに手を差し伸べてオレの僕になれっていったんすよ?

と、当時の状況を思い出したのか、少し照れくさそうに頬をポリポリと掻きながら俺に話してくれた。

ロット君との出会いを話してくれたスカドゥエにそれほど心を許してくれた事に嬉しさを感じ、落ち込んでいた心が少し晴れたような気がし、思わず口角が上がる。


「そうか。ならロット君とスカドゥエは10年の付き合いがあるんだな。」


「はい、そうしてなんやかんやで10年も経っていたっすね。ついでに、これを知っているのはアーシとロットの坊ちゃんだけで、それ以外は誰も知らないんで!最後の一押しの時にこの言葉を言うのをオススメするっす!!」


目をキラキラさせながらグッとガッツポーズを作り、そうオレに教えてくれた。


「それじゃ、連絡事項はもうないっすか??ないなら坊ちゃんの目的をさっさと果たすっすよ~!!」

よし!と言って、ベンチから立ちオレの手を取って市場へ駆け出す。

そんな頼もしい背中を見て俺は胸から込み上げる感情と目から出そうになる涙を押し殺しながらスカドゥエに感謝を告げた。


「おう、ありがとな、スカドゥエ」


「お礼はお金でいいっすよ。そのカツラと服とまとめて請求するんで!」


ちゃっかりしてんな~、と吹き出しながら俺はスカドゥエと共に街の探索を続けるために、足を前へと動かした。



――――――――――――――――――――――





街の探索を始めて約2時間。

時間帯的で言うと、午後3時のオヤツどき。


ひと通り全てのお店、屋台、家を周り終えて俺たちは噴水近くのベンチで休んでいた。


途中、街の人たちが何も買わずにブラブラ歩く俺達を不審そうにジロジロと睨んでいたが、多分それはスカドゥエのぼったくり店とロット君の事件で警戒しているのだろうと甘んじて受け入れた。

街の人たちが商人を警戒するのは十中八九、ロット君とスカドゥエのぼったくり商売のせいだからなぁ…。

そう思いながらも、居心地の悪いまま街の中を歩いていた。

いたたまれない気持ちになりながらも探索をつづけているとスカドゥエが


「アーシらが外部から来た行商人だったんでここらで見ない商人を見て街の奴らが警戒してるんすよ~」


なんてヘラヘラと笑いながら呑気に話すもんだから若干腹が立った。


そうやって針のむしろになりながらも探索を続けること2時間後、全て見終わって街の中央にある噴水の近くのベンチにスカドゥエと並んで座っている。



「どうっすか??ひと通り街の中を歩いてみたっすけどそれらしき人はいたっすか??」


この2時間の街の探索を思い出して、思い出し怒りをしているところでスカドゥエが確認するように話しかけてきた。


「……今のところ、見当たらない。…………もしかしたらもう街の外に出ているのかもしれない。」


もし、そうだったとしたらこの2時間は何の時間だったんだっ…!!


ハァ、と深いため息を吐き頭を抱える。


そして、もう一度深く、きちんと最初から考える。

今までの転生の法則は、中心人物になりうる人物の近くに転生、又は大きな事件、出来事が起こる場所に転生をしてきた。

今回の中心人物といえば悲運の子。これは絶対だ。

一応、屋敷の中にそういう人物がいないかをこの7回のループで確認したが、それらしき人物は見当たらなかった。

だから屋敷の中にはいない。そう確信した。


そして、その次に1番近い場所と言ったらこの街だ。

だからボロボロの体になりながらもここに来たわけだが………

隅々まで探しても見つからない。ここにいるはずなのに見つからない悲運の子に切羽詰まっているとスカドゥエがそんな俺を見かねてか、質問をしてきた。


「坊ちゃんの転生する場所は、中心人物の近く、又は事件、災厄が起こる場所でしたっけ??」


「?そうだけど。」


「なら、もうここじゃ無いんじゃないっすか??最初からここに、その悲運の子はいない。そういう事じゃないんすか??」


「え?」


「近しい人物ってそれは距離的に近いのか、血筋的に近いのかも分かりませんし。」


まさかのスカドゥエの言葉に目が丸くなる。


「ど、どうだろう……。今までの転生はみんな距離的に近かった。例えば勇者の幼馴染とか、世界一の魔法使いとかの近くに生まれ変わっていたから血筋とかは考えた事が無かった……。」


そう言われればそうだ。

近しい人物、と言われれば血筋も候補に入る。


「スカドゥエ、ロット君に親戚…従兄弟とか兄弟って存在するのか??」


「ロットの坊ちゃん、アスタ家っすよね?もちろんいるっすよ。」



そう言って、スカドゥエは眉をひそめ険しい顔になる。


「何を隠そう、ロットの坊ちゃんがあんな風に歪んだのはその本家のせいっすからね。」


「え、本家??」


本家がある事に驚き、思わずおうむ返しをしてしまった。

「え?そこ、知らないんすか??流石にロットの坊ちゃんの本名は分かるっすよね??ロット・フォン・アスタ。アスタ家は分家なんすよ。」


「ロット君の本名くらい知ってるわい!!分家だの本家だのは教えてもらってないんだよ!!」


失礼な物言いに少し苛立ってしまったが、とりあえず話を続ける。


「そんで?何でその本家のせいでロット君が歪むんだよ?」


「だって、本家でしかも魔法も学力も運動能力もはるかに優秀の同い年の従兄弟がいるんっすもん。魔法も使えない運動能力もクソなロットの坊ちゃんにとってそいつの存在はロットの坊ちゃんの自尊心をボロボロに切り刻むデスカッターみたいなもんっすよ。」


実際、親戚には同じ血筋なのにそこまで能力の差がある事にバカにされたこともあったらしいっすからねぇ、と俺はロット君の境遇に初めて同情をした。

というか、ロット君、あなた魔法も使えないのか…
ならばその従兄弟とやらはロット君にとってコンプレックスの塊なわけだ。

そこまで差があって、さらに親戚すじには従兄弟と比べられた後にバカにされてりゃ、そりゃ道を外れても仕方ないかもしれないな…、

さらにはストッパーであるべき両親がデロ甘ときたもんだ。


「今までロット君の事、クソだクソだと思っていたけど初めて可哀想だと思ったよ。」


「まぁ、アーシも初めてロットの坊ちゃんの状況を聞いた時は同情したっすね。」


ハハ、と笑い遠い目をしながら空を見上げる。


「んでさ、そのロット君の従兄弟の名前は何て名前なの?」

「あぁ、何て名前だったか…あっ!」


そう言って空を見上げていた顔が俺の方へ向く。


そして人差し指を上に指して口を開く


「確か、そいつの名前は……」




そう、スカドゥエが言った瞬間





世界が暗転した。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妖精の森の、日常のおはなし。

華衣
ファンタジー
 気づいたら、知らない森の中に居た僕。火事に巻き込まれて死んだはずだけど、これってもしかして転生した?  でも、なにかがおかしい。まわりの物が全部大きすぎるのだ! 草も、石も、花も、僕の体より大きい。巨人の国に来てしまったのかと思ったけど、よく見たら、僕の方が縮んでいるらしい。  あれ、身体が軽い。ん!?背中から羽が生えてる!? 「僕、妖精になってるー!?」  これは、妖精になった僕の、ただの日常の物語である。 ・毎日18時投稿、たまに休みます。 ・お気に入り&♡ありがとうございます!

農民レベル99 天候と大地を操り世界最強

九頭七尾
ファンタジー
【農民】という天職を授かり、憧れていた戦士の夢を断念した少年ルイス。 仕方なく故郷の村で農業に従事し、十二年が経ったある日のこと、新しく就任したばかりの代官が訊ねてきて―― 「何だあの巨大な大根は? 一体どうやって収穫するのだ?」 「片手で抜けますけど? こんな感じで」 「200キロはありそうな大根を片手で……?」 「小麦の方も収穫しますね。えい」 「一帯の小麦が一瞬で刈り取られた!? 何をしたのだ!?」 「手刀で真空波を起こしただけですけど?」 その代官の勧めで、ルイスは冒険者になることに。 日々の農作業(?)を通し、最強の戦士に成長していた彼は、最年長ルーキーとして次々と規格外の戦果を挙げていくのだった。 「これは投擲用大根だ」 「「「投擲用大根???」」」

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?

せいめ
恋愛
 政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。  喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。  そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。  その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。  閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。  でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。  家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。  その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。    まずは亡くなったはずの旦那様との話から。      ご都合主義です。  設定は緩いです。  誤字脱字申し訳ありません。  主人公の名前を途中から間違えていました。  アメリアです。すみません。    

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

腹違いの妹にすべてを奪われた薄幸の令嬢が、義理の母に殴られた瞬間、前世のインテリヤクザなおっさんがぶちギレた場合。

灯乃
ファンタジー
十二歳のときに母が病で亡くなった途端、父は後妻と一歳年下の妹を新たな『家族』として迎え入れた。 彼らの築く『家族』の輪から弾き出されたアニエスは、ある日義母の私室に呼び出され――。 タイトル通りのおっさんコメディーです。

国外追放だ!と言われたので従ってみた

れぷ
ファンタジー
 良いの?君達死ぬよ?

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

処理中です...