7 / 20
07.ラシードと一つ目の願い事
しおりを挟む
「呼ばれて……はあああああ?」
魔人がぽっかりと大きな口を開けて驚愕の声を上げた。
「え? 何? 何?」
「な ・ ん ・ て! 理想的な平凡! これといって特徴のない顔に、極々一般的な色合い。ワタシの理想が服を着て歩いている!」
……魔人は平凡厨だった。いやちょっと待て、魔人。『理想が服を着て』とは、お前の『理想』は裸なのか? というベタな突っ込みは置いておいて、すっかり目がハートマークになっている魔人にどう対処してよいものかと悩むラシードは、とりあえず挨拶をすることにした。
「初めまして。魔人さん。僕の名前はラシードといいます」
「魔人さんなんて他人行儀な! 貴方にはワタシの眞名である『ジン』と呼んで頂きたい!」
「え? 眞名なんて簡単に教えていいものなの?」
魔法使いには色々と制約があり、眞名が知られると弊害があることが一般的だ。魔人も御多分に漏れず似たような制約があるに違いないとラシードは考えた。
「よいのです。よいのです。貴方様にならば、ワタシの魂が縛られてもいい。いや、むしろ縛り付けてください!」
(え……こっわ)
ラシードの頬がひくひくと動き、若干引いているにも関わらず、魔人は勝手に話を進める。
「願い事は三つまで叶えられます。でも、軽い願い事ならばカウントしないで叶えて差し上げます。あのっ。あのっ。なるべくお傍にいたいので……あまり大きな願い事は……小出しに……」
煙で出来た上半身だけの身体をくねらせてもじもじとする魔人に、とりあえず外に出ようかと提案をするラシード。もちろん外に出てラシードの自宅まで瞬間移動する魔法は願い事カウントに加えられることはなかった。
「ジンは、食事とか飲み物とかはどうするの?」
自宅に着いてラシードはジンに質問をした。自分も喉が渇いていたし、腹も減っていたので食事をしようかと思ったのだ。
「ワタシは特に飲食をする必要はありませんが、ラシード様と楽しい時間を過ごしたいので、たまにラシード様と同じ内容のものを頂ければと思います」
「ふーん。じゃあこれから食べる食事は一緒のものを食べようか」
ジンの歓迎会だねとふんわりラシードが笑い、厨にいる使用人に食事の準備を依頼して、食事の準備が整うまでラシードは茶を淹れることにした。大量のミントの葉に熱湯を注ぐミントティーに、甘いナツメヤシを干したものを添えて魔人に差し出す。その流れるような所作にうっとりと魔人は見惚れた。
「ミントティは飲める?」
「もちろんです。もし苦手だとしてもラシード様が淹れてくれるお茶ならば一滴残さず飲み干します」
「いや、苦手なら飲まなくてもいいんだけどね?」
今日何度目の苦笑だろうと思いつつ、ラシードはジンと向かい合った席に座る。そして一口、二口お茶を喉に流し込んだところで一つ目の願いを伝えることにした。
「ジンは願い事を小出しにして欲しいとは言ったけれど、一つ目のお願いを早速聞いて欲しい。他の願いはおいおいお願いすることになるから、ジンの意向に沿う事は出来る」
「はい」
「僕の父上は、この国の官吏をしているんだけれど、出世するには家柄がよくないんだ。父上は、身内びいきという点を差し引いたとしても、よい官吏だ。だから、思いっきりその能力を発揮できる場所を整えてもらえたらと思う」
「ラシード様は具体的にどうすればよいとお考えでしょうか」
「うん。この国に試験による官吏登用制度があればいいと思うんだ。なあに、父上のことだ。実力不足で試験に受からないということはないだろう。出来たら過去時点でその制度が確立されているとありがたい」
どうだろう、難しいかとラシードに問われた魔人は、一拍おいてから答えた。
「いいえ、畏まりました。簡単ですとは言えませんが、明日の朝には世界が変わっている事でしょう」
「そうか、ありがとう」
──翌朝。
魔人の宣言通り世界は一変していた。
魔人がぽっかりと大きな口を開けて驚愕の声を上げた。
「え? 何? 何?」
「な ・ ん ・ て! 理想的な平凡! これといって特徴のない顔に、極々一般的な色合い。ワタシの理想が服を着て歩いている!」
……魔人は平凡厨だった。いやちょっと待て、魔人。『理想が服を着て』とは、お前の『理想』は裸なのか? というベタな突っ込みは置いておいて、すっかり目がハートマークになっている魔人にどう対処してよいものかと悩むラシードは、とりあえず挨拶をすることにした。
「初めまして。魔人さん。僕の名前はラシードといいます」
「魔人さんなんて他人行儀な! 貴方にはワタシの眞名である『ジン』と呼んで頂きたい!」
「え? 眞名なんて簡単に教えていいものなの?」
魔法使いには色々と制約があり、眞名が知られると弊害があることが一般的だ。魔人も御多分に漏れず似たような制約があるに違いないとラシードは考えた。
「よいのです。よいのです。貴方様にならば、ワタシの魂が縛られてもいい。いや、むしろ縛り付けてください!」
(え……こっわ)
ラシードの頬がひくひくと動き、若干引いているにも関わらず、魔人は勝手に話を進める。
「願い事は三つまで叶えられます。でも、軽い願い事ならばカウントしないで叶えて差し上げます。あのっ。あのっ。なるべくお傍にいたいので……あまり大きな願い事は……小出しに……」
煙で出来た上半身だけの身体をくねらせてもじもじとする魔人に、とりあえず外に出ようかと提案をするラシード。もちろん外に出てラシードの自宅まで瞬間移動する魔法は願い事カウントに加えられることはなかった。
「ジンは、食事とか飲み物とかはどうするの?」
自宅に着いてラシードはジンに質問をした。自分も喉が渇いていたし、腹も減っていたので食事をしようかと思ったのだ。
「ワタシは特に飲食をする必要はありませんが、ラシード様と楽しい時間を過ごしたいので、たまにラシード様と同じ内容のものを頂ければと思います」
「ふーん。じゃあこれから食べる食事は一緒のものを食べようか」
ジンの歓迎会だねとふんわりラシードが笑い、厨にいる使用人に食事の準備を依頼して、食事の準備が整うまでラシードは茶を淹れることにした。大量のミントの葉に熱湯を注ぐミントティーに、甘いナツメヤシを干したものを添えて魔人に差し出す。その流れるような所作にうっとりと魔人は見惚れた。
「ミントティは飲める?」
「もちろんです。もし苦手だとしてもラシード様が淹れてくれるお茶ならば一滴残さず飲み干します」
「いや、苦手なら飲まなくてもいいんだけどね?」
今日何度目の苦笑だろうと思いつつ、ラシードはジンと向かい合った席に座る。そして一口、二口お茶を喉に流し込んだところで一つ目の願いを伝えることにした。
「ジンは願い事を小出しにして欲しいとは言ったけれど、一つ目のお願いを早速聞いて欲しい。他の願いはおいおいお願いすることになるから、ジンの意向に沿う事は出来る」
「はい」
「僕の父上は、この国の官吏をしているんだけれど、出世するには家柄がよくないんだ。父上は、身内びいきという点を差し引いたとしても、よい官吏だ。だから、思いっきりその能力を発揮できる場所を整えてもらえたらと思う」
「ラシード様は具体的にどうすればよいとお考えでしょうか」
「うん。この国に試験による官吏登用制度があればいいと思うんだ。なあに、父上のことだ。実力不足で試験に受からないということはないだろう。出来たら過去時点でその制度が確立されているとありがたい」
どうだろう、難しいかとラシードに問われた魔人は、一拍おいてから答えた。
「いいえ、畏まりました。簡単ですとは言えませんが、明日の朝には世界が変わっている事でしょう」
「そうか、ありがとう」
──翌朝。
魔人の宣言通り世界は一変していた。
0
あなたにおすすめの小説
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
執着
紅林
BL
聖緋帝国の華族、瀬川凛は引っ込み思案で特に目立つこともない平凡な伯爵家の三男坊。だが、彼の婚約者は違った。帝室の血を引く高貴な公爵家の生まれであり帝国陸軍の将校として目覚しい活躍をしている男だった。
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる