ランプの魔人は登場すらアヤシイ脇役令息を愛す

橘 咲帆

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08.ラシードと官吏登用制度

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 ラシードが目覚めると、自分が寝ていたベッドが豪華になっていて驚いた。自宅も数段広くなっているし、昨日までの家よりも王城に近い場所にあるのか、王城が常よりも大きく感じた。

 けたたましく母の名前を呼ぶ父の声がする。ラシードの家を出て行ったはずの母の名前だ。

「アイーシャ! アイーシャ! 聞いてくれ。とうとう宰相になれという辞令が下りた!」
「まあ! 旦那様! おめでとうございます!」
「ありがとう! これもアイーシャとラシードの支えがあったればこそだ」

 何年前までさかのぼって官吏登用制度が作られたのかはラシードにはわからなかったが、官吏登用制度がある世界線での父親は、努力をしたし、政治的な根回しも上手く行ったのだなとラシードは胸を撫で下ろした。それに、父親が順調に出世を果たしたせいなのか、母親は実家に帰らずにラシードの家で暮らしているようだ。現金すぎる母親に呆れたが、父親は明らかに母親がいることが嬉しそうなので、これはこれでいいかとラシードは鬱屈した気持ちを飲み込んだ。

「旦那様、離れに暮らすお義母様にもお知らせしたら?」

 母親が父親に提案している。そうか、お祖母様は官吏登用制度がある世界線では母屋でなく離れにお住まいなのかとラシードは一抹の寂しさを覚えた。

「あ、いいよ。母上。僕がお知らせして来るよ」

 ラシードは祖母が今、どんな生活をしているのか確認をしたかったため、伝言役を買って出た。

「そう? では、今晩はお祖母様もお誘いして家族だけでお祝いをいたしましょう」

 しかし、朝起きたら以前の家とは違う家になっていたので、部屋の配置がわからない。お祖母様の住む離れはどう行けばいいのだろう──。

「あの……ところで離れってどうやって行けばいいんだっけ?」

 絶対こんな質問したら変に思われるとラシードは内心ビクビクしたが、父母は「自分の家だろう」と笑いながら祖母が住む離れへの行き方を教えてくれた。

「お祖母様、いらっしゃいますか?」
「ああ、ラシード。私はここにいるよ」

 祖母は離れに居てパタン、パタンと機織りをしていた。官吏登用制度がない世界では家政を執り仕切るのが忙しく、趣味の機織りが出来ないと嘆いていたので、こんな変化もあるのだなとラシードは歓心をした。

「父上がこの度宰相を拝命したそうです」
「そうかい。そうかい。ラシード、お前ランプを手に入れたね?」

 祖母の思いがけない言葉に、ラシードは固まった。ギギギギと、首が変な動きをする。

「な、何のことでしょうか」
「しらばっくれても私にはわかるよ。昨日まではこの家に住んでいなかったってこともわかっているからねぇ」

 カラカラと笑う祖母は、全てお見通しらしい。ラシードはふう、と息を吐いて白状した。

「はい。ランプを手に入れました。一つ目の願いでこの国に試験による官吏登用制度を制定してもらいました。さらに、今現在にその制度が出来たとしても父上の年齢を鑑みるとそれほど出世は見込めないため、父上が存分に手腕を発揮できるように、過去に遡って制度を作ってもらいました」
「ふむふむ、我が孫ながら面白い事を考える」
「でも、宰相になれたのは父上が努力なさったからですよ?」
「そうだねぇ、我が息子も優秀だ。私としてはお前がもっと短絡的な願いを言うかと思ったよ。例えば金銀財宝を得たいとかね。でも、それよりももっと幸せな状態のようだよ」

 あと二つの願いもじっくり考えて願うのだよと、しっかりと刻み付けるように言う祖母に、ラシードは頷いた。
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