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16.婚約破棄
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「宰相が一子、ラシード・ベン・イブラヒムよ。我が姫との婚約を破棄することとする」
王の御前で項垂れるラシードだったが、うつむいた頬が喜びのために上がってしまう。いかん、いかん。なんとか引き締めなければと、下唇をキツく噛んだ。血が出るのではないかと思った。
繊維市場では、一人になった王女がぶつかった男に難癖をつけられて右往左往していたところを、アラジンが救い出し、王女とアラジンの二人で市を回った。アラジンが着けていた飾り帯の刺繍が美しかったので、王女が褒めたところ、この糸は母が紡いだもので、刺繍は自分でしたのだとアラジンが言うのでさらに会話が盛り上がる。恋の始まりだった。
王からラシードに婚約破棄の話があった後、ほどなく王女の婚約について、大々的に御布令が出された。地震からの復興をして八年、久々の明るい話題に国中がお祝いムードに包まれた。以前の婚約者であるラシードは、特にこれといった特徴もなく、国民としては可もなく不可もなくといった相手だったため、アラジンと王女の美男美女ぶりに熱狂した。
ある日、王の間でラシードから予算案の報告を受けている時、小さな声で申し訳なさそうに王が言った。
「すまんな、ラシード。なんせ姫は婿となる王子に夢中でな」
「はい。存じ上げております」
その「王子」であるという経歴は、魔人が作り上げた経歴なのだけれどと、訳を知るラシードは表情筋を総動員した。
「それに、お相手は大富豪ですものね」
「ああ、そうだ。王子な上に、大富豪だ」
王が悪い顔をしている。これは、アラジンの財産を召し上げて国庫に入れるつもりに違いないと、財務官であるラシードも悪い顔をする。魔人がここまで考えて動いているのだとしたら、本当になりふり構っていないし、なにげにラシードの仕事の手助けもしているので、文句のつけようがない。あとは、いつ人間になってラシードの目の前に現れてくれるかと指折り数えるだけかなとほくそ笑んだところで、王の間に闖入者があった。
その闖入者とは──悪い魔法使い、ジャファルだった。
王の御前で項垂れるラシードだったが、うつむいた頬が喜びのために上がってしまう。いかん、いかん。なんとか引き締めなければと、下唇をキツく噛んだ。血が出るのではないかと思った。
繊維市場では、一人になった王女がぶつかった男に難癖をつけられて右往左往していたところを、アラジンが救い出し、王女とアラジンの二人で市を回った。アラジンが着けていた飾り帯の刺繍が美しかったので、王女が褒めたところ、この糸は母が紡いだもので、刺繍は自分でしたのだとアラジンが言うのでさらに会話が盛り上がる。恋の始まりだった。
王からラシードに婚約破棄の話があった後、ほどなく王女の婚約について、大々的に御布令が出された。地震からの復興をして八年、久々の明るい話題に国中がお祝いムードに包まれた。以前の婚約者であるラシードは、特にこれといった特徴もなく、国民としては可もなく不可もなくといった相手だったため、アラジンと王女の美男美女ぶりに熱狂した。
ある日、王の間でラシードから予算案の報告を受けている時、小さな声で申し訳なさそうに王が言った。
「すまんな、ラシード。なんせ姫は婿となる王子に夢中でな」
「はい。存じ上げております」
その「王子」であるという経歴は、魔人が作り上げた経歴なのだけれどと、訳を知るラシードは表情筋を総動員した。
「それに、お相手は大富豪ですものね」
「ああ、そうだ。王子な上に、大富豪だ」
王が悪い顔をしている。これは、アラジンの財産を召し上げて国庫に入れるつもりに違いないと、財務官であるラシードも悪い顔をする。魔人がここまで考えて動いているのだとしたら、本当になりふり構っていないし、なにげにラシードの仕事の手助けもしているので、文句のつけようがない。あとは、いつ人間になってラシードの目の前に現れてくれるかと指折り数えるだけかなとほくそ笑んだところで、王の間に闖入者があった。
その闖入者とは──悪い魔法使い、ジャファルだった。
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