ランプの魔人は登場すらアヤシイ脇役令息を愛す

橘 咲帆

文字の大きさ
17 / 20

17.悪い魔法使いのハーレム

しおりを挟む
 ジャファルはジャラジャラとした飾りのついたターバンに、これまたジャラジャラした飾りのついた長衣を纏い、王の間へズカズカと入って来た。ジャファルの後ろには、魔人が付き従っている。

「あー、そこにいる髭モジャ親父、お前の家は今日から俺の家ということになった」
「は?」
「理解力がないね。お前は王様をクビ。今日から俺がこの国の王だから」
「はあ? 何を言っておる。衛兵、このバカな男を何故ここに入れ……痛い。やめろ!」

 王は、自分を守るためにいるはずの衛兵が自分を抑え込んだのに驚愕した。

「衛兵、そのままその髭モジャを縛り上げて牢にブチ込め」

 衛兵は「は!」と了承の声を上げ、そのまま王を縛り上げて連行する。一体どうしたことかとラシードが魔人を見ると、魔人は凪いだ瞳をしている。そこには特に何の感情もない平常時の魔人がいた。ラシードには意味がわからなかったが、魔人が静かにしているため、自分も息を殺して静かにすることにした。

「そこにいる文官」

 ラシードはぴくりと肩を震わせジャファルの前に跪く。

「はい。御前に」
「ん。ちょっと宰相を呼んで来てくれるか?」
「承知いたしました」

 ラシードは王の間を辞して、父親がいる宰相の執務室へ行く。父親に王が拘束された話と、新たな王と名乗る男が王の間にいると伝えた。

「父上、ジーニーを覚えていらっしゃいますか」
「ああ、震災の際はお世話になったな。その後お前の傍にいなくなってしまったのが気にはなっていたのだが。息子の恋愛事情は親としてどこまで聞いてもいいか悩んでそのまま放置していた。すまんな。そのジーニー殿がどうされたのだ」
「その新たな王を名乗る男に従っているようです」
「んん?  姫様の新しい婚約者様と一緒にいたではないか」
「やはり、父上には見えていたのですね」

 魔人は常時、認識阻害の魔法を自身に掛けている。ちょっとした目くらましで、確かにそこに誰かがいるのに、存在感がなくて認識が出来ない。そんな魔法だ。しかし、一旦そこに魔人がいると認識出来てしまうと目眩しの効果が薄くなり、魔人の事を認識出来ていまう。魔人の事をはっきり見た事がない人がほとんどなので、それで充分隠形効果がある。魔人なりの省エネ魔法らしい。

 ラシードは魔人の眞名まで知る恋人なので、魔人の隠形は効かないが、父親は魔人を見た事があるし、常から鋭い感性を持っているため、一度も魔人を見た事がなくても魔人を認識出来ていた。そう。地震のときに紹介される前でも、目の端を何かが通ったなと感じるほどには。

「ふふん。その位の事が出来なければ、宰相なぞ務まらん」

 謎にふんぞり返る父親だが、確かにデキる男である。

「そうですか。ジーニーの事がわかるならば話が早いです。ジーニーが付き従い、彼なりの作戦があるかと思いますので、新しい王を名乗る男を拘束したりせず、出来るだけ恭順するように出来ますか? 何故か、僕と父上と王以外の城内の者は新しい王と名乗る男を王のように扱っていますので」
「わかった」

 ラシードの父がジャファルの前に跪き、挨拶をする。

「御前に侍ります。宰相を務めます、イブラヒム・アブー・ラシードでございます」

 ジャファルはラシードの父を見てニヤリと笑う。

「今日から俺が、この国の王だ。宜しく頼む」
「畏まりました」
「そうだな、国政に関しては、宰相、お前に任せよう」
「は」
「俺のために整備してもらいたいものがある」
「何でございましょうか」
「男ばかりのハーレムを整備しろ。正妃が一人、側妃を五人ほど。その他、侍童は十人。下働きにいたるまで全て見目のよい男で揃えろ」
「それは……」
「出来ぬと申すか」
「いえ、仰せのままに」
「お前の負担を軽くするために、既に正妃と側妃の候補を一人ずつ決めてある」

 ジャファルの合図と共に、魔法の絨毯で簀巻きにされて気を失っているアラジンが王の間にふよふよと浮かんだ。

「魔人、お前は側妃候補だ」

 ひゅ、と、ラシードの喉が鳴った──なんだって? ジンが側妃だって?

「ん? 何だ? 今おかしな音を立てたやつ、そうだな平凡だがお前も側妃にしてやろう」

 今度はラシードの父の喉が鳴った。魔人は相変わらす何を考えているかわからない表情を浮かべていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

執着

紅林
BL
聖緋帝国の華族、瀬川凛は引っ込み思案で特に目立つこともない平凡な伯爵家の三男坊。だが、彼の婚約者は違った。帝室の血を引く高貴な公爵家の生まれであり帝国陸軍の将校として目覚しい活躍をしている男だった。

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

処理中です...