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幼馴染の重い思い
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家に着いた。俺と陽司が住むマンションだ。大学の最寄駅にあって、駅から離れた築年数の古い分譲マンションを借りている。家賃を半分に割ると、駅前のワンルームを借りるよりも激安だ。ファミリータイプなので、玄関ポーチを入って廊下の両側にそれぞれの個室、バスルーム、トイレと続いて広いリビングに繋がる。
大きく深呼吸をひとつ。
カードキーを通してガチャリ。一歩玄関に入ると、陽司が慌てて自分の部屋から出てきた。
「おかえり。探した。探したよ……。なんで朝帰りなんか。カズ、どこ行ってたんだよ」
「大学行って、掛井先輩とメシ食って、多摩ランのイルミ行って、掛井先輩んちで寝た」
「は?寝た?シたのか?」
「へ?シたって?まさか。なんで俺が」
「シてないんだな?……おい、ここ!この鬱血痕!」
ん?鬱血?玄関の靴箱に備わっている全身鏡に指さされた首筋を映してみる。うっすら赤いけれど、ひっかいた傷じゃないのか?ナニを想像しているかだいたいわかるけれど、大げさな。
腕を引っ張られた。え?陽司が激怒している。ものすごい力で陽司の部屋に引っ張っていかれてどさりとベッドに俺の身体が半ば放り投げられるように押し倒された。
「ふ……くぅ」
荒々しく唇を奪われる。くちゅ、ぐちゅっ。陽司の肉厚な舌が俺の咥内を犯しつくす。
「ふぁ……て、待てよっ、何するんだ」
「うるせえ、俺だってこんな形で伝えたかったわけじゃない」
陽司の手が服の上から俺のモノを包み込み、撫で上げる。恐ろしいほどに固くそそり勃っているのがわかる。
「勃ってるな」
「ただの生理現象だ」
「違うだろ。カズは俺の事が好きだろう?」
「生理現象だって言ってんだろが」
「生理現象だろうが、なんだろうが、俺にこうされて勃ってんじゃねえか」
「誰かさんと違って、俺は下半身の身持ちがいいの。勃ちました。さあ、はい、イたしましょうなんて短絡的に生きていないの。俺のちんこは」
「は?何言ってんの?」
「それはこっちのセリフ。昨日、女を連れ込んだ人が何言ってんの」
「女連れ込んだって、広田さんの事か!違うって、広田さんはインカレの打ち上げBBQで昼間っから飲んでて、船橋にゲロはかれたから、会場の公園から近いうちのシャワーを貸したんだよ」
「ふわふわ君を使わせた……」
「ごめ……それはごめん」
俺のふわふわ君への愛を痛いほど理解している陽司が折れた。
「で?この状況、どう説明するんだ?」
「えっと……」
「ただの虫刺されかもしれない鬱血痕を、キスマークだとでも勘違いして、幼なじみを自室のベッドに押し倒して激しいキスをかまし、勃起させ、さらに、自分自身も勃起しているわけだけれども、この状況をどう説明するんだ?」
「……好きです」
「いつから」
「ずっとです。何なら、幼稚園の頃からの筋金入りの重たい愛です」
「オーケー、わかった。理解した」
「続けても?」
「いいけど、まさか、俺が下?」
「俺、痔主だから……」
陽司の目が泳いでいる。
「ウソだろ」
「ウソです。でも突っ込ませてください」
◇◇◇
その日、俺たちはパンパカパーンと幼馴染から恋人へと二人を表すカテゴリを変更させた。
パンパカパーンと処女を失ったし、陽司の初めても頂いた。その日は大学に行けなかったし、なんなら次の日も産まれたての小鹿のように覚束ない足取りで通学した。
陽司はつやっつやの顔をして自分の講義が空いている時間は俺にべったりひっついていた。ウザかった。
いや、まあ。学食とかでは配膳をしてくれて助かったけれども。
掛井先輩は次の年に1年休学してビデオカメラと一眼レフのカメラを携えて紛争地域に行くと言った。壮行会では俺の酌を受けて、戻ってきたころには同級生だな。と笑っていた。
陽司と一緒にCD-ROMを見た。先輩から渡されて見ることなくそのまま棚に仕舞われていた一枚だ。
そこにはもちろんイルミネーションが写ってはいたが、大半が俺の映像だった。チケットカウンターへ行き、乗り物パスポートへ株主優待券を引き換える俺。そこからワンコかよとツっこみたくなるような満面の笑みで走って、ゴンドラ乗り場の長い列に並ぶ先輩のところに戻る俺。暗闇から光の中に放り込まれ、息を呑む俺。小さいモニターを覗き、俺が離れた途端に小さく呟く先輩の声。「近いって。やべえ動悸する」
最後は先輩のアパートのベッドで眠る俺が写っていた。
自撮りっぽいアングルで、先輩がカメラのこちら側の俺に手を振る。そして、俺の首筋に痕をつけた。
先輩は何も語らない。俺が好きだとかそんなことは一言も語っていない。
でも、わかる。先輩の好きのベクトルが俺に向かっていたことを。
……全然、気が付かなかった。
「まあ、俺は気づいていたけどな」
陽司が忌々し気に舌打ちをした。
大きく深呼吸をひとつ。
カードキーを通してガチャリ。一歩玄関に入ると、陽司が慌てて自分の部屋から出てきた。
「おかえり。探した。探したよ……。なんで朝帰りなんか。カズ、どこ行ってたんだよ」
「大学行って、掛井先輩とメシ食って、多摩ランのイルミ行って、掛井先輩んちで寝た」
「は?寝た?シたのか?」
「へ?シたって?まさか。なんで俺が」
「シてないんだな?……おい、ここ!この鬱血痕!」
ん?鬱血?玄関の靴箱に備わっている全身鏡に指さされた首筋を映してみる。うっすら赤いけれど、ひっかいた傷じゃないのか?ナニを想像しているかだいたいわかるけれど、大げさな。
腕を引っ張られた。え?陽司が激怒している。ものすごい力で陽司の部屋に引っ張っていかれてどさりとベッドに俺の身体が半ば放り投げられるように押し倒された。
「ふ……くぅ」
荒々しく唇を奪われる。くちゅ、ぐちゅっ。陽司の肉厚な舌が俺の咥内を犯しつくす。
「ふぁ……て、待てよっ、何するんだ」
「うるせえ、俺だってこんな形で伝えたかったわけじゃない」
陽司の手が服の上から俺のモノを包み込み、撫で上げる。恐ろしいほどに固くそそり勃っているのがわかる。
「勃ってるな」
「ただの生理現象だ」
「違うだろ。カズは俺の事が好きだろう?」
「生理現象だって言ってんだろが」
「生理現象だろうが、なんだろうが、俺にこうされて勃ってんじゃねえか」
「誰かさんと違って、俺は下半身の身持ちがいいの。勃ちました。さあ、はい、イたしましょうなんて短絡的に生きていないの。俺のちんこは」
「は?何言ってんの?」
「それはこっちのセリフ。昨日、女を連れ込んだ人が何言ってんの」
「女連れ込んだって、広田さんの事か!違うって、広田さんはインカレの打ち上げBBQで昼間っから飲んでて、船橋にゲロはかれたから、会場の公園から近いうちのシャワーを貸したんだよ」
「ふわふわ君を使わせた……」
「ごめ……それはごめん」
俺のふわふわ君への愛を痛いほど理解している陽司が折れた。
「で?この状況、どう説明するんだ?」
「えっと……」
「ただの虫刺されかもしれない鬱血痕を、キスマークだとでも勘違いして、幼なじみを自室のベッドに押し倒して激しいキスをかまし、勃起させ、さらに、自分自身も勃起しているわけだけれども、この状況をどう説明するんだ?」
「……好きです」
「いつから」
「ずっとです。何なら、幼稚園の頃からの筋金入りの重たい愛です」
「オーケー、わかった。理解した」
「続けても?」
「いいけど、まさか、俺が下?」
「俺、痔主だから……」
陽司の目が泳いでいる。
「ウソだろ」
「ウソです。でも突っ込ませてください」
◇◇◇
その日、俺たちはパンパカパーンと幼馴染から恋人へと二人を表すカテゴリを変更させた。
パンパカパーンと処女を失ったし、陽司の初めても頂いた。その日は大学に行けなかったし、なんなら次の日も産まれたての小鹿のように覚束ない足取りで通学した。
陽司はつやっつやの顔をして自分の講義が空いている時間は俺にべったりひっついていた。ウザかった。
いや、まあ。学食とかでは配膳をしてくれて助かったけれども。
掛井先輩は次の年に1年休学してビデオカメラと一眼レフのカメラを携えて紛争地域に行くと言った。壮行会では俺の酌を受けて、戻ってきたころには同級生だな。と笑っていた。
陽司と一緒にCD-ROMを見た。先輩から渡されて見ることなくそのまま棚に仕舞われていた一枚だ。
そこにはもちろんイルミネーションが写ってはいたが、大半が俺の映像だった。チケットカウンターへ行き、乗り物パスポートへ株主優待券を引き換える俺。そこからワンコかよとツっこみたくなるような満面の笑みで走って、ゴンドラ乗り場の長い列に並ぶ先輩のところに戻る俺。暗闇から光の中に放り込まれ、息を呑む俺。小さいモニターを覗き、俺が離れた途端に小さく呟く先輩の声。「近いって。やべえ動悸する」
最後は先輩のアパートのベッドで眠る俺が写っていた。
自撮りっぽいアングルで、先輩がカメラのこちら側の俺に手を振る。そして、俺の首筋に痕をつけた。
先輩は何も語らない。俺が好きだとかそんなことは一言も語っていない。
でも、わかる。先輩の好きのベクトルが俺に向かっていたことを。
……全然、気が付かなかった。
「まあ、俺は気づいていたけどな」
陽司が忌々し気に舌打ちをした。
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