すべては誤解だったけど、なぜか二人の男に愛されています。これはきっと冬の花火のせい

橘 咲帆

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15.駆けゆくナオ

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 ところが──。
 大晦日になり、花火大会がもうすぐ始まるという頃、ナオのスマホがヴヴヴヴと震えた。

【最近来ないけど、今日は来るだろ? 花火大会】

 タケヒコからだった。ナオは行かない旨のメッセージを入力するつもりだった。しかし、手は思うように動かずに。

【うん。行く。待ってて】

 裏腹だった。
 パブロフの犬かよと自嘲するが、ナオの本能はタケヒコを選んでしまった。ナオは慌ててハルキにメッセージを送る。

【ごめん。花火行けなくなった】

 すぐさまハルキのメッセージが返って来た。

【どうした? 何かあった?】

 そのメッセージをナオはスマホのポップアップで確認しつつ、タケヒコの家に向けて走り出した。その二百メートルほど後ろをハルキはナオの家に向けて歩いていた。突然の断りのメッセージの後に走り出したナオの後ろ姿を追う。ナオは俊足だが、身体が小さい。短距離ではストライドが大きいハルキの方が速い。タケヒコが住むマンションにナオが付く頃には、物陰でその行動のなりゆきを見つめるくらいには余裕を持って追い付いた。
 ナオは走って来たのはいいが、タケヒコのペントハウスの扉を前にして逡巡した。

(うわっ。何か緊張する)

 夏以降、何度となく潜り抜けた扉だ。何の事はない。緊張する必要もないのに、ここのところのわだかまり、また、ハルキとの情事もあったため、扉を開けるカードキーを握る手が震える。

(いつまでもここで立ち止まってたってしょうがないよな)

 えいやっと、ナオはガードキーを通して扉を開けた。ふんわりと漂う空気にタケヒコの香りがする。ナオは笑みを浮かべた。半月強、この香りを嗅がなかったなんて、俺、どうかしていたなと思った。
 その背を後ろからハルキが抱きしめられた。

「行くなよ、ナオ」
「え? ハルキ? ごめん。でも……」
「嫌だ、行かせない」
「……何をしてるんだ?」

 タケヒコが玄関先での騒ぎを聞きつけてやって来た。ナオを抱きしめ、自分の事を睨みつけるハルキを見て、怒りを覚えたが、大人の余裕を見せつけるように嫣然と嗤い、凄みのある声を発した。

「まあ、中に入れよ」
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