しらぎぬ牧場の雄乳係

橘 咲帆

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04.

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「痛ぇ。痛っ。いだだだ」
 
 昼休み、牛たちに囲まれて楽しいランチをとった牧田であったが、午後から夕方にかけて徐々に痛くなってきた自分の胸に閉口していた。 

「どうすたんだびょん。胸痛ぇでしゃべっても、心臓痛ぇ感ずでねけれど(どうしたんだろう。胸が痛いと言っても、心臓が痛い感じではないけれど)」

 胸の痛み(物理)に悩まされながらも、牧田は歩を速めた。夕食後に社長室に来るようにと呼び出されたのだ。コンコンとノックをして入った社長室は、場末のバーのようにごてごてと飾り立てられた悪趣味な部屋だった。牧田は精一杯の標準語で挨拶をした。

「失礼します。牧田です」

 社長の衣笠は、五十代半ばといった壮齢の男だった。牧田達と同じように、しらぎぬ・・・・牧場の厩務員用制服、つまり、カウボーイの恰好をしていた。少し違うのは、上にダスターコート──足元まで裾がある薄手のコート──を着ている事だろうか。牧田は 「その恰好暑ぐねが」 と喉元まで言葉が出そうになったが、なんとか飲み込んだ。

「牧田君、お呼びだてして申し訳ないね。ちょっと確認したいことがあって」
「はい。なんでしょう」
「単刀直入に言うけれど、君、胸は痛くないかい?」
「なすてわがったんだ?(何故わかったんだ?)」

 牧田は思わず素が出てしまった。胸が痛いなんて恥ずかしくて隠していたのに、何故わかったのだろう。

「それと、ほかの厩務員から聞いたのだが、雪代一号の乳を直接飲んだというのも本当かい?」
「そうばって、何がまずがったびょんか。すまね(そうですか、何かまずがったでしょうか。すみません)」
「え? 今、なんて言ったの?」

 さすがに牧田のこの発言は、衣笠に通じなかった。

「……何かまずかったでしょうか」
「いや、いいんだ。確認したかっただけだから。で、飲んだのかい?」
「はい、すみません」

 衣笠は勢い込んでさらに質問をする。

「じゃ、じゃあ、雪代二号に、キ、キスされたってのは?」
「へあっ? キ、キス? 何しゃべっちゅんだが? キスどいうが、顔べろべろ舐めらぃだが(へ? キ、キス? 何言っているんですか? キスというか、顔をべろべろ舐められましたが)」

「確保おぉぉぉぉ!!!!」
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