メスビッチお兄さん研修センター

橘 咲帆

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万年Fランクのメスビッチお兄さん【後日譚】

ケセランパサラン

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 その日、田中とマコトが住む街に今年初めての雪が降った。真っ白でふわふわの綿毛のような、大粒のボタン雪。田中は手を差し出してボタン雪を手の平で受ける。手袋をしていない田中の手の平ですうと溶けるボタン雪は田中の熱で蕩けるマコトを思わせて、その温度に反するように田中の頬をあたためた。

 ファミリー用の官舎に田中とマコトの新居はあった。民間のマンションに住むことも考えたが、よりセキュリティの高い官舎に新婚の居を定めたのは田中の考えだ。官舎には前職であるMTC、また、現在の職である性犯罪対策機構でも、メスビッチお兄さんに耐性のある人間が多い。マスターメスビッチお兄さんであるマコトが、性犯罪に巻き込まれるリスクが避けられる。

 田中が官舎を見上げると、官舎の2階にある田中とマコトの部屋にぽうとあかりが灯っていた。今日はマコトの方が早く帰宅したんだなと、知らず田中の足取りは軽くなった。

「ただいま」
「おかえり、ヒロ。」
「あ、いい匂い。なんだかダシの香りがする。」
「寒くなって来たから、今日は肉団子鍋にしたよ。」
「ああ、あの豆腐を繋ぎにしてふわふわにした肉団子の?」
「そう、野菜はニラともやし。」
「すぐに食べられていいね。」

穏やかな団らん。メスビッチお兄さんとして時には過酷な目にも会ってきたマコトにとってかけがえのない時間。

「ヒロ。僕が「ケセランパサラン」と呼んでいる女の人の話、聞いてくれる?」
「ケセランパサラン?」
「白くてふわふわのタンポポの綿毛にも似た、妖怪とも、未確認生物とも言われる物体だよ。「ケセランパサラン」は幸せを呼ぶという伝説もあるんだ。」
「へぇ。なんだか可愛いね。」
「うん。可愛い。で、その女の人なんだけど、僕の会社の近くのカフェで働いているんだ。」

マコトは結婚前からの職である、庶務の仕事を続けている。その会社の近くにあるカフェで「ケセランパサンラン」さんは働いているという。

「僕は朝にコーヒーを買ってから会社に行くんだけど、「ケセランパサンラン」さんがコーヒーを作る係の時には、さりげなくコーヒーの紙カップに♡マークを描いてくれて渡してくれるんだ。」
「へぇ。」
「僕たちメスビッチお兄さんは女の人には目の敵にされがちなんだけど、いつも僕は「ケセランパサンラン」の♡マークにほっこり癒されるんだ。」
「ちょっと妬けるな。」
「ふふ。僕が好きなのはヒロだけだよ。」
「ん。知ってる。」

ケセランパサランさんが運んで来てくれたかもしれない幸せを、田中とマコトはかみしめた。

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ムーンライトノベルズで感想を頂いたので書いたSSです。
感想と書かれた方が、Twitterをしている文筆仲間のツイートにそっといいね(ふぁぼ:♡)をくれる方なので、文筆仲間の間で「ケセランパサラン」みたいだねと噂をしております。
そのため、このようなお話になりました。
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