スキル【ファミレス】を使っていたら伝説になりました。

キンモクセイ

文字の大きさ
9 / 19

ポンコツだけど敵にすると厄介な奴は一定数いる

しおりを挟む
3人が去っていき、シン……と静まり返った空間に歓声と拍手が湧いた。

「兄ちゃん!よく言った!」

「お嬢ちゃんも偉いぞ!」

「あんな奴ら追い出して当然だ。出禁にしてやれ!」

優は店内に居た客へ、

「お騒がせして申し訳ありませんでした。お詫びにといってはなんですが、デザートを皆様へサービスさせていただきます。間もなく閉店時間ですが、ごゆっくりお楽しみください。」

とお辞儀をした。

その言葉に店内が、更に湧いた。

「兄ちゃん達は何も悪くねぇよ!」

「しかも、貴重な甘い物まで出してくれるとは。いよっ!太っ腹!!」

「中々食べられないものだからねぇ、有り難く受け取るわ。」

「お嬢ちゃんも一緒に食べようぜ!頑張ったんだから労ってやらないとな!」

優は賑やかな店内のなか、膝をつきメリーと目線を合わせた。

「助けるのが遅くなってごめんな。怪我は無いか?」

メリーは優の声を聞き、緊張で張り詰めていた糸が切れたかのように、その場で腰を抜かした。

「こ、怖かったです…………。」

メリー耐えていた涙をポロポロと流した。

店内にいた客達は一転、どよめいた。

何人かが駆け寄ろうと立ち上がったが、それよりも早く駆け寄ってきた人がいた。

「メ、メリーちゃん!大丈夫?」

ルキアスの末っ子トロイアだった。

優はメリーを支え、空いている席へと座らせた。

トロイアはその後ろについていき、メリーの隣に座って話しかけた。

「さっきは怖かったよね。僕もびっくりしちゃった。良かったら、コレ使ってほしいな。」

トロイアはメリーにハンカチを差し出した。

「あ、ありがとう。えっと…………、」

「僕はトロイア。よろしくね。」

「トロイア君、ありがとうございます。」

メリーは差し出されたハンカチを受け取った。

「どういたしまして。そうだ、明日のお昼に、街を案内するよ。この街はあんな怖い人ばかりじゃないからさ。」

「え、えっと………。」

メリーは、伺うように優をチラリと見上げた。

「メリー大丈夫だ。昼間の買い出しとかは俺たちだけでも問題ないから、遊んでおいで。」

「ありがとうございます。トロイア君、明日はよろしくお願いします。」

「敬語は無しで良いよ。そうだ!明日とっておきのヒミツの場所教えて上げる。他にも良いところがたくさんあるんだ。例えば………、」

2人の会話を見守っていた優は、安心し下がっていった。

「スグル殿、先ほどは手助け出来ず申し訳ない。お詫びとしてデザート代はこちらが持とう。」

「とんでもないルキアスさん。俺から言った事なので、気にしないでください。」

「そうか、では明日より広場を巡回する兵を増やそう。もちろん費用はこちらが持つ。」

2人から離れたとき、後ろからルキアスが、話しかけてきた。

「助かります。先ほどは話に乗っかって貰いありがとうございます。おかげで博打が外れずに済みました。」

「ん?訴訟の制度をギルドから聞いていたのではないのか?」

「あぁ、あれですか?半分ハッタリですよ。」

「は?ハッタリ?」

ルキアスはポカンとした。

「はい、そういった制度があるかはギルドでは聞いてなかったんです。ですが、下請け保護組合と従業員保護組合の話を聞いてもしかしたら、あるんじゃないかと思い言ってみただけなんです。」

「そうなのか?」

「えぇ、なにせその制度を作ったやつ、十中八九俺の知り合いですから。」

「そうか……。スグル殿、貴殿はもしや「召喚者」なのか?」

その質問に、優ピクリと反応した。

「さすがはルキアスさん。気がつくのが早いですね。あぁ、これは内密にお願いしますね。周りに知られると、後々面倒なので。」

優は困ったように笑いながら、ルキアスへ顔を向けた。

「う、うむ。分かった。」

「ありがとうございます。」

お礼を言った優は、またメリー達へ視線を向けた。

「父上、ご歓談中失礼します。」

「どうしたアンソニー。」

「先ほどの者たちですが、私と同期の新人兵士だと思います。」

「そうか。名前は分かるか?」

「いえ、小隊が違うので名前までは。ですが、あの3人はよく訓練をサボり、そのくせ兵士である事を笠にきて、街では横暴な行動をしているようです。」

「なるほど、あやつらの顔は覚えた。訓練をより厳しくしなければならないな。アンソニー、良くやった。」

「いえ、当然の事です。」

「だそうだがスグル殿、貴殿はどうする?」

「うーん……、訴訟を起こすのは当然として……。」

「おい、スグル。」

後ろから突然声がした。

ルキアスとアンソニーは振り返ると、キーが立ち上がり、優のすぐ後ろに立っていた。

驚いた。気配が一切無かったのだから。

だが、優は当然のようにメリーを見ながらキーへ話しかけた。

「キー。」

「うむ、分かっておる。」

「メリーに悟られるなよ。」

「当然のことよ。」

「ウサチュー達も頼むぞ。」

尻尾は、3つに分かれ尾の先をピクピクと震わせた。

ルキアス達は驚いた。
2人は打てば響くような、短い会話だけですべて把握している。

この2人は、主従関係を持っていない。
だが阿吽の呼吸の如く、お互いを理解しあっている。

それは相棒とも捉えられる関係性だった。

ルキアスはこの2人を敵に回した3人を、一瞬哀れに思ったが、自業自得だと完結した。

「じゃあ、俺はデザートの準備をしてきます。メリーにもこの街で初めての友達が出来たみたいですし。」

いつの間にか、メリーの周りには店内にいた他の子供達が集まり楽しそうに会話していた。

それを見届けた優とキーは、それぞれの仕事へ戻っていった。

この2人を敵にわましてはいけない。

ルキアスをそう心に堅く誓ったのだった。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

異世界転生した女子高校生は辺境伯令嬢になりましたが

ファンタジー
車に轢かれそうだった少女を庇って死んだ女性主人公、優華は異世界の辺境伯の三女、ミュカナとして転生する。ミュカナはこのスキルや魔法、剣のありふれた異世界で多くの仲間と出会う。そんなミュカナの異世界生活はどうなるのか。

追放された俺の木工スキルが実は最強だった件 ~森で拾ったエルフ姉妹のために、今日も快適な家具を作ります~

☆ほしい
ファンタジー
ブラック企業で過労死した俺は、異世界の伯爵家の三男・ルークとして生を受けた。 しかし、五歳で授かったスキルは「創造(木工)」。戦闘にも魔法にも役立たない外れスキルだと蔑まれ、俺はあっさりと家を追い出されてしまう。 前世でDIYが趣味だった俺にとっては、むしろ願ってもない展開だ。 貴族のしがらみから解放され、自由な職人ライフを送ろうと決意した矢先、大森林の中で衰弱しきった幼いエルフの姉妹を発見し、保護することに。 言葉もおぼつかない二人、リリアとルナのために、俺はスキルを駆使して一夜で快適なログハウスを建て、温かいベッドと楽しいおもちゃを作り与える。 これは、不遇スキルとされた木工技術で最強の職人になった俺が、可愛すぎる義理の娘たちとのんびり暮らす、ほのぼの異世界ライフ。

パワハラで会社を辞めた俺、スキル【万能造船】で自由な船旅に出る~現代知識とチート船で水上交易してたら、いつの間にか国家予算レベルの大金を稼い

☆ほしい
ファンタジー
過労とパワハラで心身ともに限界だった俺、佐伯湊(さえきみなと)は、ある日異世界に転移してしまった。神様から与えられたのは【万能造船】というユニークスキル。それは、設計図さえあれば、どんな船でも素材を消費して作り出せるという能力だった。 「もう誰にも縛られない、自由な生活を送るんだ」 そう決意した俺は、手始めに小さな川舟を作り、水上での生活をスタートさせる。前世の知識を活かして、この世界にはない調味料や保存食、便利な日用品を自作して港町で売ってみると、これがまさかの大当たり。 スキルで船をどんどん豪華客船並みに拡張し、快適な船上生活を送りながら、行く先々の港町で特産品を仕入れては別の町で売る。そんな気ままな水上交易を続けているうちに、俺の資産はいつの間にか小国の国家予算を軽く超えていた。 これは、社畜だった俺が、チートな船でのんびりスローライフを送りながら、世界一の商人になるまでの物語。

最強超人は異世界にてスマホを使う

萩場ぬし
ファンタジー
主人公、柏木 和(かしわぎ かず)は「武人」と呼ばれる武術を極めんとする者であり、ある日祖父から自分が世界で最強であることを知らされたのだった。 そして次の瞬間、自宅のコタツにいたはずの和は見知らぬ土地で寝転がっていた―― 「……いや草」

何故か転生?したらしいので【この子】を幸せにしたい。

くらげ
ファンタジー
俺、 鷹中 結糸(たかなか ゆいと) は…36歳 独身のどこにでも居る普通のサラリーマンの筈だった。 しかし…ある日、会社終わりに事故に合ったらしく…目が覚めたら細く小さい少年に転生?憑依?していた! しかも…【この子】は、どうやら家族からも、国からも、嫌われているようで……!? よし!じゃあ!冒険者になって自由にスローライフ目指して生きようと思った矢先…何故か色々な事に巻き込まれてしまい……?! 「これ…スローライフ目指せるのか?」 この物語は、【この子】と俺が…この異世界で幸せスローライフを目指して奮闘する物語!

スキル【僕だけの農場】はチートでした~辺境領地を世界で一番住みやすい国にします~

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
旧題:スキル【僕だけの農場】はチートでした なのでお父様の領地を改造していきます!! 僕は異世界転生してしまう 大好きな農場ゲームで、やっと大好きな女の子と結婚まで行ったら過労で死んでしまった 仕事とゲームで過労になってしまったようだ とても可哀そうだと神様が僕だけの農場というスキル、チートを授けてくれた 転生先は貴族と恵まれていると思ったら砂漠と海の領地で作物も育たないダメな領地だった 住民はとてもいい人達で両親もいい人、僕はこの領地をチートの力で一番にしてみせる ◇ HOTランキング一位獲得! 皆さま本当にありがとうございます! 無事に書籍化となり絶賛発売中です よかったら手に取っていただけると嬉しいです これからも日々勉強していきたいと思います ◇ 僕だけの農場二巻発売ということで少しだけウィンたちが前へと進むこととなりました 毎日投稿とはいきませんが少しずつ進んでいきます

転生特典〈無限スキルポイント〉で無制限にスキルを取得して異世界無双!?

スピカ・メロディアス
ファンタジー
目が覚めたら展開にいた主人公・凸守優斗。 女神様に死後の案内をしてもらえるということで思春期男子高生夢のチートを貰って異世界転生!と思ったものの強すぎるチートはもらえない!? ならば程々のチートをうまく使って夢にまで見た異世界ライフを楽しもうではないか! これは、只人の少年が繰り広げる異世界物語である。

処理中です...