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12.魔法の本の使い方

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 結論からいうと、魔法という王道異世界ファンタジーではありませんでした。


 別に俺が魔法を使ったわけじゃないとすぐさま訂正され、少し気恥ずかしい。

 いやだって、四つ足の獣が人間になれる世界なのだ。
 なんでもありかと夢みてしまった。



 地球からうっかり落っこちて来た人の中には、まれに魔力適正が高い人もいるらしい。

 そういう人は訓練次第で自分に適した魔法を身につけられるそうだ。
 ただし、ほとんどの人は一つか二つの魔法を身につければ御の字で、魔法使い無双はないとのこと。
 ちょっと残念。



 例えば、ルルルフさんの場合は言語一本。

 普通に喋れば誰にでも通じるし、どんな言葉や鳴き声もしっかり分かるのだとか。
 自動翻訳機能かな。

 ただし、魔法で知らない文字を書いたり読んだりはできないらしい。



「まずは試しに、本を開いてみましょう。大丈夫。ちゃんとユーキさんの母国語になっていますからね」



 これは、魔道具制作の巨匠が手塩にかけて開発した本なのだそうだ。

 俺は勧められるままに、適当に真ん中あたりを開けてみた。



 おぉ。たしかに日本語だ。

 辞書みたいな感じかな。

 日本語が書いてあって、隣に書いてある見たことのない文字が、きっとアキュース語なのだろう。

 カタカナで発音のフリガナまで書いてある。

 これを見て覚えていけば、言葉も通じるようになるのだろう。
 考えるだけで膨大な量に心が折れそうだ。


 俺はルルルフさんの言語能力の魔法が、がぜん羨ましくなった。



「ちなみにこの本はとっても高性能で、本の持ち主以外には白紙にしか見えません。しかし本の持ち主が心の中で願うことによって、一時的にですが見せたい相手にも読めるようになるんです。この本はユーキさんとの生活の中でどんどん進化していきますので、これからの生活の中でさまざまに手助けをしてくれる心強い相棒となるでしょう。ただ一つ……」


 いいよどむルルルフさんに、俺はページをめくる手を止め、顔をあげた。


「そのためには古くなった情報や間違った内容を、その都度、付属の赤ペンで校正というか、訂正というか、うーん。そう、いうなればアップデートをして欲しいんですよ! どれもちょっとした訂正でしょうから、大丈夫! 二重線を引いて、正しい情報を記入すれば自動でデータが更新されますので、操作も簡単です。大丈夫ですよ!」


「えっ、内容が間違ってるの!? 辞書なのに!?」


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