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49.子供たちのための物語
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――児童書「子供たちのための物語」より抜粋
ずっとずっと昔。一人の神さまが誕生されました。
しかし周りは砂漠が広がるばかり。なんにもありません。神さまは一人ぼっちが寂しくなってきて、子供たちを造りました。
あるものは小さな精霊。あるものは巨大な魔族。あるものはふさふさの半獣。あるものは魔法使い。
もう一人ぼっちではありません。たくさんの子供たちを生み出した神さまは嬉しくなって、子供たちを守る住まいも作ります。みんなで暮らせる大きなお家です。
それから長い長いときが経ち、いつしか子供たちからアキュース神さまと呼ばれるようになりました。
もうアキュース神さまは寂しくありません。嬉しくって楽しくって、どんどん大きく成長なさっていくのです。
私たちは神さまに守られた愛し子。
アキュース神さまの慈悲の大地に感謝を捧げます。
___________
今から一万年ほど前、初めての地球人が落ちてきてからしばらくは、アキュース神さまもことの成り行きを静観されていたそうです。
しかしどの渡来人も、あっという間に命を失うか弱き生き物。心優しいアキュース神さまは、どうにかしてやれないものかと考えました。
しかしアキュース神さまがいくら頑張っても、渡来人が落ちてこないように防ぐことはできませんでした。
もとの世界に返すこともできません。
そのあいだも渡来人はどんどん弱っていきます。
アキュース神さまは〝金の糸〟の力を使い、ほんの少し手助けをしてあげることにしました。
それは、その渡来人に一番ふさわしいと思われる人のもとへ、送り届けること。細い糸が撚りあわさって、一本の糸となるように、自然に求めあい混ざりあえる相手を。見知らぬ土地で、幸せに〝命の糸〟を結べる相手を。
アキュース神さまの〝金の糸〟が、そっと渡来人を包みます。
こうして渡来人は、一番ふさわしいと思われる人のもとへと送られ、ともに暮らすなかで深く愛しあうようになりました。
それから平和に月日がたち、アキュース国の人々は、いつしか渡来人のことをアキュース神さまから贈られた〝運命の糸〟と呼び、心待ちにする人まで現れるようになっていったのです。
___________
赤ちゃんが生まれる。それは愛のあかし。アキュース神さまの祝福のあかし。
昔むかし、ある夫婦がアキュース神さまのもとを訪れました。
二人は深く愛しあい、仲むつまじく暮らす夫婦でした。しかし夫婦は種族の違いから、寿命が大きく異なりました。
夫はいつか愛する妻に置いていかれることを、妻はいつか愛する夫を一人残していくことを、ともに深く悲しんでいたのです。
夫婦は祈りました。一生懸命、愛を祈りました。置いて逝く悲しみを。先立たれる悲しみを。
夫婦の祈りは届き、神さまも心を痛めました。寂しいのは神さまも知っています。一人は嫌です。しかし、神さまにだって、命の長さはかえられません。
悲しむ夫婦を見て、アキュース神さまは考えました。
命を繋ぐ愛のあかしを授けよう!
こうして心から愛し、愛された相手とのあいだには、赤ちゃんが生まれるようになったのです。
二人の強い愛しあう気持ちが、求めあい、混ざりあい、やがて一つの〝命の糸〟となるならば、種族が違っても、性別が同じでも、赤ちゃんが生まれるようになりました。
たとえ同じ長さの時間をともに過ごせなくても、大丈夫。
赤ちゃんが生まれる。
それは愛のあかし。
アキュース神さまの祝福のあかし。
ずっとずっと昔。一人の神さまが誕生されました。
しかし周りは砂漠が広がるばかり。なんにもありません。神さまは一人ぼっちが寂しくなってきて、子供たちを造りました。
あるものは小さな精霊。あるものは巨大な魔族。あるものはふさふさの半獣。あるものは魔法使い。
もう一人ぼっちではありません。たくさんの子供たちを生み出した神さまは嬉しくなって、子供たちを守る住まいも作ります。みんなで暮らせる大きなお家です。
それから長い長いときが経ち、いつしか子供たちからアキュース神さまと呼ばれるようになりました。
もうアキュース神さまは寂しくありません。嬉しくって楽しくって、どんどん大きく成長なさっていくのです。
私たちは神さまに守られた愛し子。
アキュース神さまの慈悲の大地に感謝を捧げます。
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今から一万年ほど前、初めての地球人が落ちてきてからしばらくは、アキュース神さまもことの成り行きを静観されていたそうです。
しかしどの渡来人も、あっという間に命を失うか弱き生き物。心優しいアキュース神さまは、どうにかしてやれないものかと考えました。
しかしアキュース神さまがいくら頑張っても、渡来人が落ちてこないように防ぐことはできませんでした。
もとの世界に返すこともできません。
そのあいだも渡来人はどんどん弱っていきます。
アキュース神さまは〝金の糸〟の力を使い、ほんの少し手助けをしてあげることにしました。
それは、その渡来人に一番ふさわしいと思われる人のもとへ、送り届けること。細い糸が撚りあわさって、一本の糸となるように、自然に求めあい混ざりあえる相手を。見知らぬ土地で、幸せに〝命の糸〟を結べる相手を。
アキュース神さまの〝金の糸〟が、そっと渡来人を包みます。
こうして渡来人は、一番ふさわしいと思われる人のもとへと送られ、ともに暮らすなかで深く愛しあうようになりました。
それから平和に月日がたち、アキュース国の人々は、いつしか渡来人のことをアキュース神さまから贈られた〝運命の糸〟と呼び、心待ちにする人まで現れるようになっていったのです。
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赤ちゃんが生まれる。それは愛のあかし。アキュース神さまの祝福のあかし。
昔むかし、ある夫婦がアキュース神さまのもとを訪れました。
二人は深く愛しあい、仲むつまじく暮らす夫婦でした。しかし夫婦は種族の違いから、寿命が大きく異なりました。
夫はいつか愛する妻に置いていかれることを、妻はいつか愛する夫を一人残していくことを、ともに深く悲しんでいたのです。
夫婦は祈りました。一生懸命、愛を祈りました。置いて逝く悲しみを。先立たれる悲しみを。
夫婦の祈りは届き、神さまも心を痛めました。寂しいのは神さまも知っています。一人は嫌です。しかし、神さまにだって、命の長さはかえられません。
悲しむ夫婦を見て、アキュース神さまは考えました。
命を繋ぐ愛のあかしを授けよう!
こうして心から愛し、愛された相手とのあいだには、赤ちゃんが生まれるようになったのです。
二人の強い愛しあう気持ちが、求めあい、混ざりあい、やがて一つの〝命の糸〟となるならば、種族が違っても、性別が同じでも、赤ちゃんが生まれるようになりました。
たとえ同じ長さの時間をともに過ごせなくても、大丈夫。
赤ちゃんが生まれる。
それは愛のあかし。
アキュース神さまの祝福のあかし。
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