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142.危機感の共有
しおりを挟む膝を擦りあわせてもじもじする俺のズボンの紐を引っぱって、ゆっくり解くと、指を引っかけて下ろしていく。
勃ちあがった俺のペニスがズボンに引っかかって、それからぺちんと反動をつけて顔を出した。
すでに濡れて糸を引いている。
目に飛びこんできたあまりにもはしたない自身の状態に、俺は思わず腕で顔を覆った。
「ユーキ。顔を見せて」
「でも、……恥ずかし」
「ユーキ、かわいい。ユーキのかわいい顔が見えないと、もしかしたら嫌がっているんじゃないかと、怖がらせていないかと、不安になるんだ」
俺の腕に頭をすり寄せながら、オーニョさんが優しい声で話し続ける。
低いオーニョさんの声とともに、グルグルと甘さを含んだ喉の鳴る音が、俺の耳をくすぐった。
腕の隙間からそろりと顔を出せば、至近距離のオーニョさん。
近くで見てもかっこいい。
ずるいなぁ。
俺が下唇を突き出して口を尖らせば、オーニョさんは楽しそうにはむはむと俺の下唇を甘噛みするのだ。
「んっ、ホーニョはん」
下唇だけ食べられて、俺はすごく間抜けな顔で抗議の声をあげた。
「ははっ。ごめん。かわいくて、つい」
「もぉ」
「うん。……続けても?」
俺の体は好きな人に触られて、誤魔化しようのないくらい反応している。
嫌がっていないことは丸わかりのはずなのに、オーニョさんは一つずつ確認を怠らない。
ちょっと意地悪だけど、俺の心を大切にしてくれているんだと分かった。
それでも素直に頷くのは、どうしようもなく恥ずかしくて。
俺はせめて丸見えの前を隠そうと、うつ伏せに身をよじった。
背後のオーニョさんを見上げて、小さな声でお願いをする。
「やだ。……だって、俺だけ恥ずかし。オーニョさんも脱いで……?」
オーニョさんの金色の瞳がぎらついて、喉がごくりと上下するのが見えた。
それからオーニョさんは、黙ったまま俺の手足にまとわりついている服を本格的に脱がしはじめた。
「違っ、オーニョさんも、脱いでって、いったのっ!」
オーニョさんは俺の紐の多いサンダル靴をあっさり解くと、床にぽいっと放り投げた。
オーニョさんの手際は驚きの速さで、俺はあっという間に全裸に剥かれていた。
俺はあわあわしながら、ベッドの上にあったいくつかの掛け布から一枚をひっつかむと、体に巻きつけて隠れた。恥ずかしい。
「今度は、ユーキが、私の服を脱がしてくれないか」
オーニョさんは首をかしげて俺を見ている。
俺は掛け布をグルグル巻きにした状態で覚悟を決めると、芋虫みたいにもごもごと体を起こした。
向かいあうオーニョさんに、掛け布の隙間から手を伸ばす。
暑い国の服は着脱が楽で助かる。
緊張にこわばる指でも、ゆったりとしたオーニョさんの服を脱がすことができた。
首元のボタンと腰の飾り紐をゆるめるだけで、オーニョさんの服はストンと肩から落ちる。
鍛え上げられたオーニョさんの上半身に光る鎖のネックレストップは、俺とおそろいの指輪だ。
俺はうっとりして、胸の筋肉に手のひらをあてた。
美しい筋肉の隆起が、オーニョさんの褐色の肌に影を落としている。
薄暗い室内でも分かる、男らしい体だった。
しっとりと汗ばんだオーニョさんの肌の下で、心臓がどっどっどっどっと脈打ち暴れているのが、俺の手のひらに伝わってくる。
「どきどきしてる……オーニョさんも、緊張してる?」
「もちろん」
「オーニョさん、平気だと思ってた。俺と、同じね?」
「ああ。ユーキの心臓も、どきどきしているな」
オーニョさんの手が掛け布の隙間から侵入し、俺の心臓をたしかめている。
お互いの胸に手を伸ばし、お互いの心臓が早鐘を打つさまに、ふふっと笑った。
「うん。同じ。ちょっと、安心した」
「そうか。ならばよかった。……ところでユーキ、これ以上は脱がせてくれないのか?」
オーニョさんが俺の耳もとに口を寄せて、小声でささやいた。
下も、ユーキと同じだから、と。
俺はドギマギしながら、誘われるままにオーニョさんのズボンの腰紐に手を伸ばす。
膝立ちになってくれたオーニョさんのズボンはあっさりと落ちて、窮屈そうに膨らんだ下履きだけが残された。
どこを見ていいか分からない。とてもじゃないが直視できない。
俺は視線を不自然に彷徨わせながら、震える指で下着に手をかけた。
明後日の方向を見たままなんとか紐をゆるめ、怒張の引っかかりを避けて下穿きを下げる。
でもやっぱり我慢ができなくて、ちらっと盗み見をしてしまった。
――ううう嘘だろ。見なきゃよかった。
「ユーキと同じ、だろう? 少しは安心してくれただろうか」
オーニョさんはそういいながら、俺のペニスを掛け布越しにつつつと指先で撫でた。
俺のナニはオーニョさんの巨根を見ても、萎えるどころかますます元気になっている。
もぉ! 愚息が正直者でつらい!
だけど、隠されることなく堂々と屹立するオーニョさんのオーニョさんの、何をどう見たら同じなんだ!
ぜんぜん! ぜんっぜん! 同じなんかじゃないぞ!
そんな俺の心からの叫びが口をついて出た。
「同じ、違うっ!」
「いや、だが、ちゃんと人型だろう」
「お・お・き・さ!」
やけになった俺はオーニョさんのペニスを指さして、小さくしてと叫んだ。
だって、俺のと比べると大人と子供くらいの差があるのだ。
別に俺のが飛びぬけて小さいわけじゃないぞ。たぶん、日本人の標準サイズだ。
立派な体格に見合ったオーニョさんのペニスが、非常識なビッグサイズなのだ。
そんなの、俺の尻が壊れるっ!
「だって、そんな大きいの……、俺の、ここくらいまで、入っちゃう……っ!」
俺は目測したオーニョさんを、自分のお臍あたりに手を置くことで一生懸命にアピールをした。
大切な危機感の共有のために。
それなのにオーニョさんは、片手で目を覆い、背中を丸めてベッドに沈んでしまった。
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