転生からの魔法失敗で、1000年後に転移かつ獣人逆ハーレムは盛りすぎだと思います!

ゴルゴンゾーラ三国

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第一部

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「そういえば、折角なら店も構えますか? 一階部分を店舗にして、二階を水回りとリビングや客間、三階を私室、という風にしても悪くないと思うのですが」

 少しでもシーバイズらしさ、もとい、前文明らしさを取り入れられたイエリオさんはウキウキとしながらそんなことを言った。はて、店、とな?

「え、いや、でも……」

 その言葉に反応したのは、フィジャだった。なんの店、と聞こうとして、慌てて口をつぐむ。グリオンさんがいるのだ。彼にはわたしたちが新婚夫婦に映っているだろうし(まあ間違いではない)、今聞くのは、だいぶ不自然に思われるはずだ。夫の職業を知らない妻がどこにいるというのだ。ここにいるけどさ。

「あと足りないのは少しの資金、だったのでしょう? ならばこの際、一緒に建ててしまうのも悪くないと思ったのですが」

 口ごもるフィジャに、イエリオが言った。少し悩んでいたようだったけれど、家を建てる期間や、そもそもの準備期間を聞いたら、素直に頷いた。まあ、家なんてそう簡単に建つもんじゃないし、何の店か知らないけれど、引継ぎとか、従業員の確保とか、もろもろできるでしょ。

 そんなこんなで、土地の仮押さえと、大まかなでざっくりとした間取りを決め、本日は終了だった。これからどこの下請けを使うか、とか、細かいデザインを決めたり、金額の折り合いをつけたり、と何回かに分けて決めるようだ。あっさり結婚して、ちょっとついでに服も見に行くか、みたいなノリで家を建てることになったのですっかり忘れていたが、本来マイホーム購入は人生で一番高い買い物といってもおかしくないくらいの一大イベントなのだ。

 グリオン工務店を出ると、辺りはほとんど陽が落ちていた。まだ真っ暗、というわけではないが、夜が来るのも時間の問題だろう。

 その空を見上げ――わたしは、今晩どこに泊まるかを考えていないことに気が付いた。

 いや、結婚、とか、マイホーム購入とか、ゆっくりと決まっていくであろう大きなイベントが急に二つもやってきて、すっかり抜け落ちていた。どこかの宿に泊まるとしても、今から探すのも大変だろうし、というか、家が建つまでわたしどうするの? 住むところもだけど、職もだよな? 手持ちの硬貨を売ったお金がまだ余っているので、しばらくはどうにかなるだろうが、家が建つまでなにもしないわけにもいかない。

 え、誰かに泊めてもらえないかな……。イエリオさんあたりが気が付いてくれないかな……と思っていたのだが、早々にフィジャとイエリオさんと別れることになってしまった。家の方面が違うようだ。イエリオさんは多分、シーバイズの家の話が聞けてそのことしか頭にないようで、うきうきとした笑顔を浮かべているし、フィジャは店を持つことになってそっちばかりに気を取られているようだ。
 これからの生活を相談するタイミングを失ったまま、フィジャとイエリオさんの背中は見えなくなってしまった。

「じゃ、俺はもう一仕事、してくるかな」

「えっ、い、今からですか!?」

「貯金はあるが、家を買うなら予算は多い方がいいだろうが」

 もう夜になるだろうに、と思ったが、夜間は夜間で、仕事があるらしい。まあ、夜行性の魔物とかいるんだろうな。知らんけど。そもそも魔物がいるのかすら知らないけど。千年も経っているのだから新たに生まれたと言われても何にも不思議ではない。
 仕事へ向かうウィルフさんに、家へ置いてください、とは言い出せず、おとなしく見送ることにした。知り合って間もないのに、家主がいない家にいるのは気まずすぎる。

 それじゃあ僕もここで、と言われる前に、わたしは素早くイナリさんの腕をつかんだ。

「お手数おかけしますが、今晩泊めてください」

 イナリさんは少し眉をひそめたが、「せめて宿泊できる場所を教えてください……」というと、あ、と何かに気が付いたような表情になった。わたしが宿無し職なしであることに気が付いたんだろう。今日行ったのは不動産屋じゃないし、部屋を借りたわけでもない。
 イナリさんはちょっと考えたような表情を見せ――仕方ない、と言わんばかりにため息を吐いた。

「今晩だけだよ。明日からのことは、また集まって相談するから」

「ありがとうございます!」

 ありがてえ! これで野宿は回避できた!
 まあ、サバイバルに役立ちそうな魔法も習得しているので、その辺で野宿しようと思えばできるが、この辺の治安の良し悪しも分からんしな。それに結婚します、ってちょこちょこ他の人にも言ってしまったので、万が一遭遇したら気まずいなんてもんじゃない。結婚が決まっている女がホームレスというのは、獣人の世界じゃなくてもヤバいというのは流石に分かる。

「あんまり広くない部屋だけどね。あ、君がソファ使ってよね」

「十分です!」

 冗談のつもりだったのか、わたしが快諾すると、イナリさんは「マジか?」とでも言いたげな、難しい表情をしていたが、再びため息を吐き、「行くよ」と声をかけてくれた。
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