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第二部
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ちゃんと話も出来ず、なんだか消化不良のまま、わたしたちはフィジャの家へと帰ってきた。
イエリオさんはフィジャが心配半分、わたしが精霊を使って魔法を使うのを見たい半分で、有休を取ってきたらしい。残り二人は仕事が終わり次第、合流するそうだ。
フィジャの腕は見る限り、肩で動かせば問題なく、怪我をする前と変わらず動かせるようだが肘で動かすと動きが鈍り、指先はひきつったようにしか動かないようだった。
「……これ、完璧に治していいのかな。怪しまれない?」
わたしはフィジャの手をまじまじと見る。定期的に通院がある、という話は聞いていたので、今日ここで完治させたら、流石におかしいと思われないだろうか。
シーバイズだったら魔法で治したんだな、くらいに思われるが、フィンネルでは騒ぎになる可能性が高い。医者の口ぶりからして、怪我をする前と同じに回復したら奇跡、くらいの傷だろうから。
「確かに……段階的に治す方が良さそうですね」
イエリオさんもまた、わたしに同意する。確か次に病院へ行くのは二週間後で、さらにもう二週間後に一度、そしてそこから一か月後にまた行かなきゃ行けなかったはず。
「段階的に治す……ってできるのかな」
わたしは言いながら、机の上に置いておいた、しろまるが眠る紙を取り、魔力を流す。もちろん、今回は持ったままではなく、床に置いて。机の上で魔力を流してもよかったが、食卓としても使っている机の上で、ほぼ芋虫のしろまるを呼び出すのは、ちょっとだけ抵抗があったので。
じわっと魔力が流れると、しろまるが姿を表す。イエリオさんが「おおっ!」と、少し興奮したような声を上げるのが分かった。やっぱりどうしても気になってしまうらしい。ただ、そういう場面じゃないと分かっているのか、あれこれ質問攻めはされない。……好奇心のかたまりみたいな視線はめちゃくちゃ刺さるけど。
「しろまる、話してた怪我を治したい人を連れてきたんだけど……徐々に治すことって出来るかな」
「じょじょじょに?」
分かっていないのか、しろまるは頭を傾げた。じょが多い。
「えーっと、少しづつ。一度に治したら変に思われちゃうでしょ?」
「変? なんで? 怪我が治るのは、いいことなの」
「いや、まあそうなんだけど……」
話は通じるものの、話し方の様に理解力は幼いのかもしれない。一から説明して納得してくれるだろうか。
どう話したものか、と言葉を選んでいると、フィジャがわたしの隣にしゃがみ込み、「全部治して」と言ってきた。
「治すのはそのつもりだからいいんだけど……怪しまれたらどうするの?」
「ボクが誤魔化すよ。大丈夫」
ちょっと不安はあったけれど、まあ、本人が言うなら……。
念のため、もう一度確認したけれど、大丈夫と言われるだけだった。誤魔化しきれる自信があるなら、まあ、良いけど……。
わたしだって、早くフィジャの腕を治したいのだから。
「……しろまる、いい?」
「やってやるの!」
わたしはしろまるに手を伸ばす。すると、彼女はうごうごといくつもの丸い足を使って、わたしの腕へと上り、両肩に乗る。
しろまるがしっかり肩に乗ったのを確認し、わたしはフィジャに向き直って彼の手を取った。
「さあ、フィジャ。治すわよ」
――ようやく、ここまで来れた。彼の腕を治す。絶対に治る。
フィジャの大事な腕は、わたしが取り戻す。
イエリオさんはフィジャが心配半分、わたしが精霊を使って魔法を使うのを見たい半分で、有休を取ってきたらしい。残り二人は仕事が終わり次第、合流するそうだ。
フィジャの腕は見る限り、肩で動かせば問題なく、怪我をする前と変わらず動かせるようだが肘で動かすと動きが鈍り、指先はひきつったようにしか動かないようだった。
「……これ、完璧に治していいのかな。怪しまれない?」
わたしはフィジャの手をまじまじと見る。定期的に通院がある、という話は聞いていたので、今日ここで完治させたら、流石におかしいと思われないだろうか。
シーバイズだったら魔法で治したんだな、くらいに思われるが、フィンネルでは騒ぎになる可能性が高い。医者の口ぶりからして、怪我をする前と同じに回復したら奇跡、くらいの傷だろうから。
「確かに……段階的に治す方が良さそうですね」
イエリオさんもまた、わたしに同意する。確か次に病院へ行くのは二週間後で、さらにもう二週間後に一度、そしてそこから一か月後にまた行かなきゃ行けなかったはず。
「段階的に治す……ってできるのかな」
わたしは言いながら、机の上に置いておいた、しろまるが眠る紙を取り、魔力を流す。もちろん、今回は持ったままではなく、床に置いて。机の上で魔力を流してもよかったが、食卓としても使っている机の上で、ほぼ芋虫のしろまるを呼び出すのは、ちょっとだけ抵抗があったので。
じわっと魔力が流れると、しろまるが姿を表す。イエリオさんが「おおっ!」と、少し興奮したような声を上げるのが分かった。やっぱりどうしても気になってしまうらしい。ただ、そういう場面じゃないと分かっているのか、あれこれ質問攻めはされない。……好奇心のかたまりみたいな視線はめちゃくちゃ刺さるけど。
「しろまる、話してた怪我を治したい人を連れてきたんだけど……徐々に治すことって出来るかな」
「じょじょじょに?」
分かっていないのか、しろまるは頭を傾げた。じょが多い。
「えーっと、少しづつ。一度に治したら変に思われちゃうでしょ?」
「変? なんで? 怪我が治るのは、いいことなの」
「いや、まあそうなんだけど……」
話は通じるものの、話し方の様に理解力は幼いのかもしれない。一から説明して納得してくれるだろうか。
どう話したものか、と言葉を選んでいると、フィジャがわたしの隣にしゃがみ込み、「全部治して」と言ってきた。
「治すのはそのつもりだからいいんだけど……怪しまれたらどうするの?」
「ボクが誤魔化すよ。大丈夫」
ちょっと不安はあったけれど、まあ、本人が言うなら……。
念のため、もう一度確認したけれど、大丈夫と言われるだけだった。誤魔化しきれる自信があるなら、まあ、良いけど……。
わたしだって、早くフィジャの腕を治したいのだから。
「……しろまる、いい?」
「やってやるの!」
わたしはしろまるに手を伸ばす。すると、彼女はうごうごといくつもの丸い足を使って、わたしの腕へと上り、両肩に乗る。
しろまるがしっかり肩に乗ったのを確認し、わたしはフィジャに向き直って彼の手を取った。
「さあ、フィジャ。治すわよ」
――ようやく、ここまで来れた。彼の腕を治す。絶対に治る。
フィジャの大事な腕は、わたしが取り戻す。
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