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第二部
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フィジャの手を取り、しろまるのサポートの元、治癒〈ソワンクラル〉を使ったわたしは、初めて魔法を使ったときのことを思い出していた。
物語の中だけだった奇跡を自分の手で、目の前で起こす。そんなことに興奮したし、物語の主人公のごとくチートな師匠を尊敬もした。
わくわくして、興奮して。
彼の腕が治るのかと思うと、あの時の高揚感が、自然と思い出される。
……でも、今、それを思い出したのは、その高揚感のせいだけじゃない。
「……しろまる、まだかかりそう?」
「うーん、もうちょっと!」
随分と明るい口調で、しろまるはえげつないことを言う。
初めて魔法を使ったとき。興奮もしたが――同時に、慣れない感覚に気分を悪くもした。
端的に言えば、今までないくらい、それこそ、初めて魔法を使って習得も効率もなにも知らないあのときのように、どんどんと魔力を吸われている感覚がする。この感覚はめまいにも似ているが、目の前がちかちかして、頭がのぼせてくる分、めまいなんかよりも質が悪い。
ふわふわと、淡い白の光が、フィジャの腕を包んだまま。
これが精霊の力を借りる、ということなのか、普段より段違いに魔力を使うし、習得した魔法は一瞬なのに対して、時間がかかる。
ほんの少し、指先から力が抜けていく。わたしは慌てて、フィジャの腕を強く握った。そんなわたしの内心の焦りを知ってか知らずか、フィジャが手をぎこちなくも握り返してくれた。
なんだか少し、心強い。
いつものわたし「のことなら、やっぱもうよくない? と諦めているだろうに、どうしてか、そんな考えは浮かばなかった。
今ここでわたしが諦めてしまったら。
自分で文字を覚えたいと言ったくせに、早々に諦めそうになったわたしを励ましてくれたフィジャに。
あれだけ失敗して美味しくない料理を全部食べていつまでも練習に付き合ってくれたフィジャに。
無理だと泣くフィジャに。
――顔向けが出来ない。
不思議な気持ちだ。家族になってほしい、家族にするなら、幸せにしたい。
そう思うのなら、今ここで、逃げ出す分けにはいかない。
「これで、仕上げなの!」
しろまるがそう言うと、さらに魔力がごそっと奪われた。鬼か?
でも、『仕上げ』という言葉は嘘じゃなかったようで。
「治ったの~治ったの~。しろまる天才なの!」
そのあとすぐに魔力の吸い上げがピタッと止まり、治癒魔法独特の淡くて白い光も収まった。
立っているのもやっとで、指を動かすのはしんどいけれど、もたもたとフィジャの包帯をほどいていく。――傷跡は、ない。
「……動かせそう?」
自分でもびっくりするくらい、へろへろの声でフィジャに問う。わたしはフィジャの手を放そうとしたが、フィジャは放さない。
にぎにぎと、わたしの手をいじくった。その動きは、全然ぎこちなくもないし、ひきつってもいなかった。
「――動く。本当に、動く。す、ご……すごい、ね、マレーゼは」
ありがとう、と抱きしめてくるフィジャに、わたしは抵抗しなかった。
抵抗するだけの力がない、というのもまあ事実ではあるけれど、それが理由じゃなくて。
ずび、と鼻をすすり、泣きながらわたしにしがみつくフィジャに、達成感と感動を、覚えていたからである。
物語の中だけだった奇跡を自分の手で、目の前で起こす。そんなことに興奮したし、物語の主人公のごとくチートな師匠を尊敬もした。
わくわくして、興奮して。
彼の腕が治るのかと思うと、あの時の高揚感が、自然と思い出される。
……でも、今、それを思い出したのは、その高揚感のせいだけじゃない。
「……しろまる、まだかかりそう?」
「うーん、もうちょっと!」
随分と明るい口調で、しろまるはえげつないことを言う。
初めて魔法を使ったとき。興奮もしたが――同時に、慣れない感覚に気分を悪くもした。
端的に言えば、今までないくらい、それこそ、初めて魔法を使って習得も効率もなにも知らないあのときのように、どんどんと魔力を吸われている感覚がする。この感覚はめまいにも似ているが、目の前がちかちかして、頭がのぼせてくる分、めまいなんかよりも質が悪い。
ふわふわと、淡い白の光が、フィジャの腕を包んだまま。
これが精霊の力を借りる、ということなのか、普段より段違いに魔力を使うし、習得した魔法は一瞬なのに対して、時間がかかる。
ほんの少し、指先から力が抜けていく。わたしは慌てて、フィジャの腕を強く握った。そんなわたしの内心の焦りを知ってか知らずか、フィジャが手をぎこちなくも握り返してくれた。
なんだか少し、心強い。
いつものわたし「のことなら、やっぱもうよくない? と諦めているだろうに、どうしてか、そんな考えは浮かばなかった。
今ここでわたしが諦めてしまったら。
自分で文字を覚えたいと言ったくせに、早々に諦めそうになったわたしを励ましてくれたフィジャに。
あれだけ失敗して美味しくない料理を全部食べていつまでも練習に付き合ってくれたフィジャに。
無理だと泣くフィジャに。
――顔向けが出来ない。
不思議な気持ちだ。家族になってほしい、家族にするなら、幸せにしたい。
そう思うのなら、今ここで、逃げ出す分けにはいかない。
「これで、仕上げなの!」
しろまるがそう言うと、さらに魔力がごそっと奪われた。鬼か?
でも、『仕上げ』という言葉は嘘じゃなかったようで。
「治ったの~治ったの~。しろまる天才なの!」
そのあとすぐに魔力の吸い上げがピタッと止まり、治癒魔法独特の淡くて白い光も収まった。
立っているのもやっとで、指を動かすのはしんどいけれど、もたもたとフィジャの包帯をほどいていく。――傷跡は、ない。
「……動かせそう?」
自分でもびっくりするくらい、へろへろの声でフィジャに問う。わたしはフィジャの手を放そうとしたが、フィジャは放さない。
にぎにぎと、わたしの手をいじくった。その動きは、全然ぎこちなくもないし、ひきつってもいなかった。
「――動く。本当に、動く。す、ご……すごい、ね、マレーゼは」
ありがとう、と抱きしめてくるフィジャに、わたしは抵抗しなかった。
抵抗するだけの力がない、というのもまあ事実ではあるけれど、それが理由じゃなくて。
ずび、と鼻をすすり、泣きながらわたしにしがみつくフィジャに、達成感と感動を、覚えていたからである。
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