転生からの魔法失敗で、1000年後に転移かつ獣人逆ハーレムは盛りすぎだと思います!

ゴルゴンゾーラ三国

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第二部

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 フィジャの抱擁から解放されると、ふらふらとわたしは椅子に座った。しろまるは、役目が終わったとばかりに再び眠りにつく。

「流石にちょっと、疲れた……」

 そもそも、しろまるを呼び出したテンションのまま病院に向かったので、昨日から一睡もしていない状態だ。たとえ、しろまるのサポート下での魔法使用で魔力を根こそぎ奪われなかったとしても、緊張の糸が途切れてしまった今、猛烈に眠い。
 一度自覚してしまったら、睡魔は簡単にいなくなってはくれないが、わたしはなんとか目をあける。

「……実は、まだちょっと問題があって」

 わたしは、病院の前で殴り飛ばした猫獣人の話をした。一度殴って拒否はしたものの、そのくらいで諦めるか不安である。
 諦めるくらいなら、最初から、フィジャが死んでいたかもしれないような計画を立てるわけがない。

 なにかいい案がないかな、と思うけれど、今の頭じゃなにも思い浮かばない。でも、あのとき頭に来た勢いで魔法を使ってどうにかしようとしなくてよかった。この疲労感だと、フィジャの腕が今治らなかったはずだ。魔法が途中で止まってしまっても、やり直すことはできるけれど。
 わたしの説明を聞いて、イエリオさんは「では」と声を上げた。

「普通に弁護士に頼りましょう」

 ……弁護士。
 その発想はなかった……というか、この国の司法はどうなっているんだ? フィジャを突き落としたあとは普通に釈放されていたら、あまり法整備はされていないのかな、と勝手に思い込んでいたのだが。

 わたしの微妙な表情に気が付いたのか、イエリオさんが一から説明してくれた。

 曰く。

 この国――というか、この辺りの地域を管轄する警察の半分が、冒険者で構成されていて、半ば自警団と化しているらしい。その原因は説明が長くなるので今回は教えてくれなかったのだが、問題は、半分が冒険者……つまり、日々魔物と戦い死に近い位置にいる腕っぷしの強い獣人であることらしく。
 なんと恐ろしいことに、多少の傷害事件や暴力沙汰は『じゃれあい』として処理されてしまうらしい。

 なので、わたしが肋骨一本折った程度のあの一件は『じゃれあい』としてすぐ釈放されたけど、今回のフィジャの一件はあと一歩で死ぬところだったし、仕事を変えざるをえない後遺症が残る可能性が高かったため、『じゃれあい』ではなく、普通に殺人未遂事件として扱われるようになったそうだ。

 なんていうか……。

「大丈夫なんですか、それで……」

「まあ、それがまかり通って、それなりに平和なので、あまり不満の声が大きくないので……」

 むしろ冒険者である獣人が警察官として街を巡回することで、魔物からの被害事件がほぼゼロになったため、みんな揃って黙認するらしい。
 以前は迷い込んだり忍び込んだりした魔物に対して、人と対峙することしか想定していない警察官では、市民を見捨てて逃げたり、立ち向かってもあっけなくやられてしまったりと、城塞都市として壁に囲まれているにも関わらず、たびたび魔物による事件が起きていたそうで。

 勿論、殴られたり被害にあった方は『じゃれあい』で済まされたらたまったものじゃないが、事件に巻き込まれない以上、魔物の被害にあわないだけよしとしてしまうのだろう。
 そして、そういう時、出番となるのは民事裁判――つまりは弁護士、である。

「弁護士に頼って、接近禁止にでもしてもらいましょう。大丈夫、うちの一族に腕利きの弁護士がいますから。二度とフィジャやマレーゼさんに会わない……どころか、この街を歩けなくして貰いましょう」

 にこにことイエリオさんは言ってのける。言ってることが恐ろしいんだが、大丈夫か?
 それにしても、さらっと『一族』って行ってしまうなんて……。フィジャが良いところのお坊ちゃん、と言っていたことがあったけど、本当に凄い家の人じゃないだろうな。普通、親戚って言わない?

 でも、解決するなら、それに越したことはない。ありがたく、力を借りさせてもらおう。
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