転生からの魔法失敗で、1000年後に転移かつ獣人逆ハーレムは盛りすぎだと思います!

ゴルゴンゾーラ三国

文字の大きさ
254 / 493
第四部

251

しおりを挟む
 ジェルバイド。知らない名前だ。恩赦、というからには、なにかやらかした人の名前なんだろう。
 わたしが知らなくても、周りは知っている名前らしい。息を飲む声が聞こえた。なんだか疎外感と言うか……はたしてここにいていいのか、という気持ちになってくる。場違いじゃない? 大丈夫?

「お前、それは……!」

 わたしのすぐいた虎の獣人が、思わず、と言った様子で声を上げる。

「ジェルバイドのせいで、この街がどうなったか、知らないわけじゃない。でも――せめて彼をシャルベンに帰して欲しいんだ」

 そう言って、ウィルフさんは頭を下げる。彼のこんな姿、初めて見た。
 ウィルフさんだけではなく、ルーネちゃんの夫たちも、考え込むルーネちゃんの言葉を待っている。
 ルーネちゃんはしばらく考え込んだ後、口を開いた。

「――……分かりました」

 パッとウィルフさんが顔を上げる。

「ルーネ! ジェルバイドが何をしたのか分かってるのか!?」

 ライオンの獣人が抗議の声を上げた。しかし、ルーネちゃんは軽く首を横に振るだけで、その抗議を聞き入れることはない、と示す。

「でも無条件で釈放することはできません。えっと、例えば、この街に入ることができないとか、ある程度制限はつく、と、思います。ううん、私が付けます。後、すぐに釈放出来るお約束はできません。そもそも書類制作や申請に時間がかかりますし、恩赦と言っても、刑期が短くなるだけという可能性も、あると、思います」

 なんでも叶う、と言われていたわりには、あれこれ条件がつく返答だった。それでもウィルフさんはそれで満足だったようで、「それでいい」と言った。

「釈放の際は立ち会いますか?」

「いや、いい。俺が個人的に、勝手に会いに行く」

「分かりました。それでは、申請等済ませておきます。えーっと……そう、後日、連絡はしますから」

 それでは、と、双方話し残したことがないか確認して、報告は終わった。
 冒険者ギルドを出ると、陽が暮れ始めていた。まだ真っ暗ではないが、夕日が伸びている。

「……少し早いが飯でも食いに行くか」

 ふと、ウィルフさんがそんなことを言った。確かにお腹は空き始めているけど……。

「フィジャたちに声をかけにいかなくていいんですか?」

 ここを出て、東の森に行く際に声をかけたのだ。今回はわたしも行くことになったからと。それなら、無事に帰ってきた、ということも報告したほうがいいのでは、と聞いてみたのだが……。

「気になるんだろ、ジェルバイドが誰なのか」

「……!」

 確かに気にはなっていたけど……そんなにも顔に出ていただろうか。

「む、無理に話さなくても……」

「いや、いい。全部知ったお前になら、今更知られて困ることもない」

 全部。それは言わずもがな、彼が隠したかった、魔物だったという秘密のことだろう。

「……じゃあ、聞かせてください」

 わたしはそう答えるのだった。
しおりを挟む
感想 27

あなたにおすすめの小説

この世界、イケメンが迫害されてるってマジ!?〜アホの子による無自覚救済物語〜

具なっしー
恋愛
※この表紙は前世基準。本編では美醜逆転してます。AIです 転生先は──美醜逆転、男女比20:1の世界!? 肌は真っ白、顔のパーツは小さければ小さいほど美しい!? その結果、地球基準の超絶イケメンたちは “醜男(キメオ)” と呼ばれ、迫害されていた。 そんな世界に爆誕したのは、脳みそふわふわアホの子・ミーミ。 前世で「喋らなければ可愛い」と言われ続けた彼女に同情した神様は、 「この子は救済が必要だ…!」と世界一の美少女に転生させてしまった。 「ひきわり納豆顔じゃん!これが美しいの??」 己の欲望のために押せ押せ行動するアホの子が、 結果的にイケメン達を救い、世界を変えていく──! 「すきーー♡結婚してください!私が幸せにしますぅ〜♡♡♡」 でも、気づけば彼らが全方向から迫ってくる逆ハーレム状態に……! アホの子が無自覚に世界を救う、 価値観バグりまくりご都合主義100%ファンタジーラブコメ!

異世界推し生活のすすめ

八尋
恋愛
 現代で生粋のイケメン筋肉オタクだった壬生子がトラ転から目を覚ますと、そこは顔面の美の価値観が逆転した異世界だった…。  この世界では壬生子が理想とする逞しく凛々しい騎士たちが"不細工"と蔑まれて不遇に虐げられていたのだ。  身分違いや顔面への美意識格差と戦いながら推しへの愛を(心の中で)叫ぶ壬生子。  異世界で誰も想像しなかった愛の形を世界に示していく。​​​​​​​​​​​​​​​​ 完結済み、定期的にアップしていく予定です。 完全に作者の架空世界観なのでご都合主義や趣味が偏ります、ご注意ください。 作者の作品の中ではだいぶコメディ色が強いです。 誤字脱字誤用ありましたらご指摘ください、修正いたします。 なろうにもアップ予定です。

甘い匂いの人間は、極上獰猛な獣たちに奪われる 〜居場所を求めた少女の転移譚〜

具なっしー
恋愛
「誰かを、全力で愛してみたい」 居場所のない、17歳の少女・鳴宮 桃(なるみや もも)。 幼い頃に両親を亡くし、叔父の家で家政婦のような日々を送る彼女は、誰にも言えない孤独を抱えていた。そんな桃が、願いをかけた神社の光に包まれ目覚めたのは、獣人たちが支配する異世界。 そこは、男女比50:1という極端な世界。女性は複数の夫に囲われて贅沢を享受するのが常識だった。 しかし、桃は異世界の女性が持つ傲慢さとは無縁で、控えめなまま。 そして彼女の身体から放たれる**"甘いフェロモン"は、野生の獣人たちにとって極上の獲物**でしかない。 盗賊に囚われかけたところを、美形で無口なホワイトタイガー獣人・ベンに救われた桃。孤独だった少女は、その純粋さゆえに、強く、一途で、そして獰猛な獣人たちに囲われていく――。 ※表紙はAIです

眺めるだけならよいでしょうか?〜美醜逆転世界に飛ばされた私〜

波間柏
恋愛
美醜逆転の世界に飛ばされた。普通ならウハウハである。だけど。 ✻読んで下さり、ありがとうございました。✻

ちょっと不運な私を助けてくれた騎士様が溺愛してきます

五珠 izumi
恋愛
城の下働きとして働いていた私。 ある日、開かれた姫様達のお見合いパーティー会場に何故か魔獣が現れて、運悪く通りかかった私は切られてしまった。 ああ、死んだな、そう思った私の目に見えるのは、私を助けようと手を伸ばす銀髪の美少年だった。 竜獣人の美少年に溺愛されるちょっと不運な女の子のお話。 *魔獣、獣人、魔法など、何でもありの世界です。 *お気に入り登録、しおり等、ありがとうございます。 *本編は完結しています。  番外編は不定期になります。  次話を投稿する迄、完結設定にさせていただきます。

面倒くさがりやの異世界人〜微妙な美醜逆転世界で〜

波間柏
恋愛
 仕事帰り電車で寝ていた雅は、目が覚めたら満天の夜空が広がる場所にいた。目の前には、やたら美形な青年が騒いでいる。どうしたもんか。面倒くさいが口癖の主人公の異世界生活。 短編ではありませんが短めです。 別視点あり

私が美女??美醜逆転世界に転移した私

恋愛
私の名前は如月美夕。 27才入浴剤のメーカーの商品開発室に勤める会社員。 私は都内で独り暮らし。 風邪を拗らせ自宅で寝ていたら異世界転移したらしい。 転移した世界は美醜逆転?? こんな地味な丸顔が絶世の美女。 私の好みど真ん中のイケメンが、醜男らしい。 このお話は転生した女性が優秀な宰相補佐官(醜男/イケメン)に囲い込まれるお話です。 ※ゆるゆるな設定です ※ご都合主義 ※感想欄はほとんど公開してます。

花嫁召喚 〜異世界で始まる一妻多夫の婚活記〜

文月・F・アキオ
恋愛
婚活に行き詰まっていた桜井美琴(23)は、ある日突然異世界へ召喚される。そこは女性が複数の夫を迎える“一妻多夫制”の国。 花嫁として召喚された美琴は、生きるために結婚しなければならなかった。 堅実な兵士、まとめ上手な書記官、温和な医師、おしゃべりな商人、寡黙な狩人、心優しい吟遊詩人、几帳面な官僚――多彩な男性たちとの出会いが、美琴の未来を大きく動かしていく。 帰れない現実と新たな絆の狭間で、彼女が選ぶ道とは? 異世界婚活ファンタジー、開幕。

処理中です...