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第六部
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単語を書き終え、ついでとばかりに「シーバイズ語の辞書を作れませんかね?」なんてイエリオから言われて、話を展開させていると、ベルが鳴った。
ベルが鳴るなんて知らなくて、わたしは恥ずかしいくらい大げさに、肩を跳ねさせた。
「こ、これ、なんのベル?」
ドキドキと、自分でも心臓の音が聞こえる中、わたしはイエリオに聞く。
「ああ、驚きました? これは正午のベルですよ」
イエリオ曰く、始業時間と正午、そして終業時間にベルがなるようになっているのだという。そう言えば、今まで来るときは、絶妙にその周辺の時間に当たらなかったように思う。
「前文明への情熱はともかくとして、ここにいるのは皆研究好きの獣人ばかりですから。時間を忘れたり、感覚が狂ったりするのを防ぐ為に、一日三回、決まった時間に、それぞれのベルが鳴るんです。……まあ、意味がないときもありますけど」
よっぽど集中していると、普通に聞き逃すこともあると、イエリオは教えてくれた。それ、ベルの意味ある……? ちなみに食事休憩自体は自由に取れるらしい。昼だけに限定していると、食いっぱぐれる人が続出するらしい。
イエリオは机に広げていた資料等を片付けながら、わたしに提案をしてくる。
「よければ外へご飯を食べに行きますか?ここの食堂、いつでも自由に使えるんですが……正直、あまり美味しくないんですよねえ」
「そうなの?」
その割には、食堂を通るときには、それなりに人が居たように記憶しているが。
「食事を抜きがちな所員のために、栄養バランスを最優先にしているそうです。所員側も、食べられればいい、みたいな人が大半なので、文句が出ず、味の改善がされないんです。かく言う私も味に文句を言わない側の獣人ですが……フィジャの料理を食べていると、どうにも舌が肥えるんですよ」
研究や解析に忙しい日は、全く気にならないのに、こうして余裕がある日はどうにも食べる気にはならないらしい。
まあ、フィジャの料理を食べると舌が肥える、というのには全面的に同意だ。
イエリオが美味しくない、と言い切ってしまう料理に全く興味がないわけではないが、折角ならおいしいものが食べたい。別に、今後この研究所に二度と来ない、というわけではない。むしろ、また何度か呼ばれることがあるだろう。食堂の料理はまた今度でいいや。
わたしはイエリオの提案を受け入れ、わたしたちは、研究所を出てすぐの場所にある飲食店へと足を運ぶことになった。
ベルが鳴るなんて知らなくて、わたしは恥ずかしいくらい大げさに、肩を跳ねさせた。
「こ、これ、なんのベル?」
ドキドキと、自分でも心臓の音が聞こえる中、わたしはイエリオに聞く。
「ああ、驚きました? これは正午のベルですよ」
イエリオ曰く、始業時間と正午、そして終業時間にベルがなるようになっているのだという。そう言えば、今まで来るときは、絶妙にその周辺の時間に当たらなかったように思う。
「前文明への情熱はともかくとして、ここにいるのは皆研究好きの獣人ばかりですから。時間を忘れたり、感覚が狂ったりするのを防ぐ為に、一日三回、決まった時間に、それぞれのベルが鳴るんです。……まあ、意味がないときもありますけど」
よっぽど集中していると、普通に聞き逃すこともあると、イエリオは教えてくれた。それ、ベルの意味ある……? ちなみに食事休憩自体は自由に取れるらしい。昼だけに限定していると、食いっぱぐれる人が続出するらしい。
イエリオは机に広げていた資料等を片付けながら、わたしに提案をしてくる。
「よければ外へご飯を食べに行きますか?ここの食堂、いつでも自由に使えるんですが……正直、あまり美味しくないんですよねえ」
「そうなの?」
その割には、食堂を通るときには、それなりに人が居たように記憶しているが。
「食事を抜きがちな所員のために、栄養バランスを最優先にしているそうです。所員側も、食べられればいい、みたいな人が大半なので、文句が出ず、味の改善がされないんです。かく言う私も味に文句を言わない側の獣人ですが……フィジャの料理を食べていると、どうにも舌が肥えるんですよ」
研究や解析に忙しい日は、全く気にならないのに、こうして余裕がある日はどうにも食べる気にはならないらしい。
まあ、フィジャの料理を食べると舌が肥える、というのには全面的に同意だ。
イエリオが美味しくない、と言い切ってしまう料理に全く興味がないわけではないが、折角ならおいしいものが食べたい。別に、今後この研究所に二度と来ない、というわけではない。むしろ、また何度か呼ばれることがあるだろう。食堂の料理はまた今度でいいや。
わたしはイエリオの提案を受け入れ、わたしたちは、研究所を出てすぐの場所にある飲食店へと足を運ぶことになった。
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