言葉の通じない世界に転生した侯爵令嬢は、気が付いたら婚約破棄されて獣人騎士の新しい夫に愛されてました

ゴルゴンゾーラ三国

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 ご飯を食べ終わり、わたしは用意してもらった部屋に戻る。風呂は入ったばかりなので、今日はもう、後、寝るだけだ。
 ふわふわの布団の上に横になれば、どっと疲れが蘇ってきて、一気に眠たくなる。よくよく考えてみれば、ミステラなんとかへ行くために、ずっと馬車に揺られていて、こんなにふわふわなベッドに寝たのは久しぶりだ。

 衣食住に関して、外面を気にしているのか、一応、十分なものを与えられてはいたから、家のベッドはしっかりしたものだったけど、道中の宿は質が悪かった。わたしが質を選べるような立場じゃないのは理解しているけど、あの家にあったベッドと比べてしまうと、どうしても劣っているように感じる。あの、ミステラなんとかの少し手前の森で、わたしが殺されることが決まっていたのなら、最期くらい、お金を使わなくていいと思われていたのかも。

 本当なら、ずっと、わたしにお金を使いたくない、とすら思っていたかもしれない。

 とりあえずごろり、と部屋に入ってすぐ、ベッドの上に横たわったが、もうすることもないし寝てしまおうか、と灯りを消す為に起き上がると――。

 ――トントン。

「起きているだろうか」

 イタリさんの声が聞こえてきた。もうメイドはいないので、わたしは自分で扉を開けに行く。
 扉を開けると、いくらかラフな格好をしたイタリさんがいた。
 部屋に入れるよう、わたしが入口から少しずれると、「このままで構わない」と静止された。

「もう遅い時間だからな。僕も君も、今は未婚の身。下手に部屋で二人きりになるのは良くない」

 そう言われてしまえば、彼の言葉に従うしかない。廊下にはイタリさん以外誰も居なくて、視線がないが――だからこそ、入るわけにはいかないんだろう。万が一、夜の部屋で二人きりであったことを誰かに知られたら、弁明できない。何もなかったと証言してくれる人がいないのだ。

「一つ、報告に来ただけだ。すぐに戻る」

「報告……ですか?」

「ああ。ソルテラ侯爵家に確認が取れた。確かにミステラヴィスに娘を向かわせ、その娘の名前はアルシャであった、と」

 ……もう確認が取れたんだ。早いな。どの時点で確認をしたんだろう。一度、門で別れたときかな。
 この世界、電話に近しい通信機器は存在するけれど、国をまたいで対話することは出来ないから、わざわざ誰かを使いに出したんだろうか。

「……両親は、なんと?」

 帰ってこい、とでも言われたんだろうか。

「好きにしたらいい、と」

 ……。本当に、わたし、あの人たちにとって、どうでもいい存在だったんだ。まあ、言葉の通じない、貴族の娘として政略結婚の道具にも使えないような女だ。その反応も当然か。
 もしわたしが本当に貴族の娘なら、隣国に連れ去られたら、結構な騒ぎになると、思うのに。

 わたしが勝手に落ち込んでいると、イタリさんはかなりの爆弾発言を落とした。

「そんなわけで、後程、順を追って説明するが――君を我がウィンスキー家の客人ではなく、僕の婚約者として迎え入れることになった」

 え――……えっ?
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