47 / 61
38
しおりを挟む
騙していると思うと心苦しいけれど、わたしもこうしないと生きていけないというか……。
「――ちなみに、喧嘩をした場合、だいたいは飴を送って仲直りをするんですのよ」
わたしが黙ってしまって、何かを感じたのか、カゼミさんがそう教えてくれた。
「飴は平和の象徴ですもの」
――平和。イタリさんも、そんなことを言っていたっけ。獣人と人間の共存の象徴、とか、なんとか。
「どうして飴が平和の象徴なんですか?」
確かになにか送りあうものがあればいいのは事実だけれど、別に飴じゃなくたっていいような気もする。
「いい質問ですわ。――今でこそ、『獣人』は獣の耳としっぽくらいしか特徴を引き継いでいませんが、昔はもっと獣に近い姿だったんですの」
そう言って、カゼミさんは説明をしてくれる。
昔の獣人は、獣が二足歩行しているような姿で、今のような姿になったのは人間の血が混じるようになったから、だという。
獣に近い姿の頃は今よりもっと力強く、農作業を得意としていて、その頃から砂糖の生産がさかんだったらしい。
――でも、今のように飴細工を作ることが出来なかった。なぜなら、獣の手足で、そんな細かい作業をすることは難しいから。
そこで登場するのが人間である。
獣人が生産した砂糖で、人間が飴や飴細工を作る。だからこそ、この国では飴細工は人間と獣人、両方が手を取り合って協力しないと出来ないもの、という認識で、平和の象徴、となるのだとか。
「今でこそ、『獣人』の飴細工職人もいますが……でも、やっぱり『人間』の仕事、という印象が強いですわね」
成程。そういう歴史があるのなら、飴が平和の象徴、というのも納得である。少なくとも、この国の人に取っては、飴はそれだけ大切なもの、ということなのだ。
……べっこう飴とか作ったら、イタリさんも喜んでくれるかな。あんなカラフルで綺麗な飴を作ることはできないが、べっこう飴の作り方くらいなら知っている。前世で、小学校の頃に作った。……調理実習だったか、理科の実験だったかはちょっと忘れちゃったけど。
でも、作り方くらいは流石に覚えている。難しくないし。
「プレゼントに飴は鉄板! とりあえず飴さえ送っておけば感謝の気持ちだろうが謝罪の気持ちだろうが、ちゃんと届くこと間違いなしですわ!」
カゼミさんもこう言っているし、外さない……よね?
今度、時間があるときに作ってみようかな。……客人に台所を貸してくれるかは微妙なところ……だけど。もし無理なら、わたしが独り立ちしてから送ればいいか。
うん、そうしよう。
「――ちなみに、喧嘩をした場合、だいたいは飴を送って仲直りをするんですのよ」
わたしが黙ってしまって、何かを感じたのか、カゼミさんがそう教えてくれた。
「飴は平和の象徴ですもの」
――平和。イタリさんも、そんなことを言っていたっけ。獣人と人間の共存の象徴、とか、なんとか。
「どうして飴が平和の象徴なんですか?」
確かになにか送りあうものがあればいいのは事実だけれど、別に飴じゃなくたっていいような気もする。
「いい質問ですわ。――今でこそ、『獣人』は獣の耳としっぽくらいしか特徴を引き継いでいませんが、昔はもっと獣に近い姿だったんですの」
そう言って、カゼミさんは説明をしてくれる。
昔の獣人は、獣が二足歩行しているような姿で、今のような姿になったのは人間の血が混じるようになったから、だという。
獣に近い姿の頃は今よりもっと力強く、農作業を得意としていて、その頃から砂糖の生産がさかんだったらしい。
――でも、今のように飴細工を作ることが出来なかった。なぜなら、獣の手足で、そんな細かい作業をすることは難しいから。
そこで登場するのが人間である。
獣人が生産した砂糖で、人間が飴や飴細工を作る。だからこそ、この国では飴細工は人間と獣人、両方が手を取り合って協力しないと出来ないもの、という認識で、平和の象徴、となるのだとか。
「今でこそ、『獣人』の飴細工職人もいますが……でも、やっぱり『人間』の仕事、という印象が強いですわね」
成程。そういう歴史があるのなら、飴が平和の象徴、というのも納得である。少なくとも、この国の人に取っては、飴はそれだけ大切なもの、ということなのだ。
……べっこう飴とか作ったら、イタリさんも喜んでくれるかな。あんなカラフルで綺麗な飴を作ることはできないが、べっこう飴の作り方くらいなら知っている。前世で、小学校の頃に作った。……調理実習だったか、理科の実験だったかはちょっと忘れちゃったけど。
でも、作り方くらいは流石に覚えている。難しくないし。
「プレゼントに飴は鉄板! とりあえず飴さえ送っておけば感謝の気持ちだろうが謝罪の気持ちだろうが、ちゃんと届くこと間違いなしですわ!」
カゼミさんもこう言っているし、外さない……よね?
今度、時間があるときに作ってみようかな。……客人に台所を貸してくれるかは微妙なところ……だけど。もし無理なら、わたしが独り立ちしてから送ればいいか。
うん、そうしよう。
38
あなたにおすすめの小説
【完結】 「運命の番」探し中の狼皇帝がなぜか、男装中の私をそばに置きたがります
廻り
恋愛
羊獣人の伯爵令嬢リーゼル18歳には、双子の兄がいた。
二人が成人を迎えた誕生日の翌日、その兄が突如、行方不明に。
リーゼルはやむを得ず兄のふりをして、皇宮の官吏となる。
叙任式をきっかけに、リーゼルは皇帝陛下の目にとまり、彼の侍従となるが。
皇帝ディートリヒは、リーゼルに対する重大な悩みを抱えているようで。
せっかく転生したのにモブにすらなれない……はずが溺愛ルートなんて信じられません
嘉月
恋愛
隣国の貴族令嬢である主人公は交換留学生としてやってきた学園でイケメン達と恋に落ちていく。
人気の乙女ゲーム「秘密のエルドラド」のメイン攻略キャラは王立学園の生徒会長にして王弟、氷の殿下こと、クライブ・フォン・ガウンデール。
転生したのはそのゲームの世界なのに……私はモブですらないらしい。
せめて学園の生徒1くらいにはなりたかったけど、どうしようもないので地に足つけてしっかり生きていくつもりです。
少しだけ改題しました。ご迷惑をお掛けしますがよろしくお願いします。
女嫌いな騎士が一目惚れしたのは、給金を貰いすぎだと値下げ交渉に全力な訳ありな使用人のようです
珠宮さくら
恋愛
家族に虐げられ結婚式直前に婚約者を妹に奪われて勘当までされ、目障りだから国からも出て行くように言われたマリーヌ。
その通りにしただけにすぎなかったが、虐げられながらも逞しく生きてきたことが随所に見え隠れしながら、給金をやたらと値下げしようと交渉する謎の頑張りと常識があるようでないズレっぷりを披露しつつ、初対面から気が合う男性の女嫌いなイケメン騎士と婚約して、自分を見つめ直して幸せになっていく。
竜王の「運命の花嫁」に選ばれましたが、殺されたくないので必死に隠そうと思います! 〜平凡な私に待っていたのは、可愛い竜の子と甘い溺愛でした〜
四葉美名
恋愛
「危険です! 突然現れたそんな女など処刑して下さい!」
ある日突然、そんな怒号が飛び交う異世界に迷い込んでしまった橘莉子(たちばなりこ)。
竜王が統べるその世界では「迷い人」という、国に恩恵を与える異世界人がいたというが、莉子には全くそんな能力はなく平凡そのもの。
そのうえ莉子が現れたのは、竜王が初めて開いた「婚約者候補」を集めた夜会。しかも口に怪我をした治療として竜王にキスをされてしまい、一気に莉子は竜人女性の目の敵にされてしまう。
それでもひっそりと真面目に生きていこうと気を取り直すが、今度は竜王の子供を産む「運命の花嫁」に選ばれていた。
その「運命の花嫁」とはお腹に「竜王の子供の魂が宿る」というもので、なんと朝起きたらお腹から勝手に子供が話しかけてきた!
『ママ! 早く僕を産んでよ!』
「私に竜王様のお妃様は無理だよ!」
お腹に入ってしまった子供の魂は私をせっつくけど、「運命の花嫁」だとバレないように必死に隠さなきゃ命がない!
それでも少しずつ「お腹にいる未来の息子」にほだされ、竜王とも心を通わせていくのだが、次々と嫌がらせや命の危険が襲ってきて――!
これはちょっと不遇な育ちの平凡ヒロインが、知らなかった能力を開花させ竜王様に溺愛されるお話。
設定はゆるゆるです。他サイトでも重複投稿しています。
番が逃げました、ただ今修羅場中〜羊獣人リノの執着と婚約破壊劇〜
く〜いっ
恋愛
「私の本当の番は、 君だ!」 今まさに、 結婚式が始まろうとしていた
静まり返った会場に響くフォン・ガラッド・ミナ公爵令息の宣言。
壇上から真っ直ぐ指差す先にいたのは、わたくしの義弟リノ。
「わたくし、結婚式の直前で振られたの?」
番の勘違いから始まった甘く狂気が混じる物語り。でもギャグ強め。
狼獣人の令嬢クラリーチェは、幼い頃に家族から捨てられた羊獣人の
少年リノを弟として家に連れ帰る。
天然でツンデレなクラリーチェと、こじらせヤンデレなリノ。
夢見がち勘違い男のガラッド(当て馬)が主な登場人物。
【完結】たれ耳うさぎの伯爵令嬢は、王宮魔術師様のお気に入り
楠結衣
恋愛
華やかな卒業パーティーのホール、一人ため息を飲み込むソフィア。
たれ耳うさぎ獣人であり、伯爵家令嬢のソフィアは、学園の噂に悩まされていた。
婚約者のアレックスは、聖女と呼ばれる美少女と婚約をするという。そんな中、見せつけるように、揃いの色のドレスを身につけた聖女がアレックスにエスコートされてやってくる。
しかし、ソフィアがアレックスに対して不満を言うことはなかった。
なぜなら、アレックスが聖女と結婚を誓う魔術を使っているのを偶然見てしまったから。
せめて、婚約破棄される瞬間は、アレックスのお気に入りだったたれ耳が、可愛く見えるように願うソフィア。
「ソフィーの耳は、ふわふわで気持ちいいね」
「ソフィーはどれだけ僕を夢中にさせたいのかな……」
かつて掛けられた甘い言葉の数々が、ソフィアの胸を締め付ける。
執着していたアレックスの真意とは?ソフィアの初恋の行方は?!
見た目に自信のない伯爵令嬢と、伯爵令嬢のたれ耳をこよなく愛する見た目は余裕のある大人、中身はちょっぴり変態な先生兼、王宮魔術師の溺愛ハッピーエンドストーリーです。
*全16話+番外編の予定です
*あまあです(ざまあはありません)
*2023.2.9ホットランキング4位 ありがとうございます♪
好きすぎます!※殿下ではなく、殿下の騎獣が
和島逆
恋愛
「ずっと……お慕い申し上げておりました」
エヴェリーナは伯爵令嬢でありながら、飛空騎士団の騎獣世話係を目指す。たとえ思いが叶わずとも、大好きな相手の側にいるために。
けれど騎士団長であり王弟でもあるジェラルドは、自他ともに認める女嫌い。エヴェリーナの告白を冷たく切り捨てる。
「エヴェリーナ嬢。あいにくだが」
「心よりお慕いしております。大好きなのです。殿下の騎獣──……ライオネル様のことが!」
──エヴェリーナのお目当ては、ジェラルドではなく獅子の騎獣ライオネルだったのだ。
魅了魔法…?それで相思相愛ならいいんじゃないんですか。
iBuKi
恋愛
サフィリーン・ル・オルペウスである私がこの世界に誕生した瞬間から決まっていた既定路線。
クロード・レイ・インフェリア、大国インフェリア皇国の第一皇子といずれ婚約が結ばれること。
皇妃で将来の皇后でなんて、めっちゃくちゃ荷が重い。
こういう幼い頃に結ばれた物語にありがちなトラブル……ありそう。
私のこと気に入らないとか……ありそう?
ところが、完璧な皇子様に婚約者に決定した瞬間から溺愛され続け、蜂蜜漬けにされていたけれど――
絆されていたのに。
ミイラ取りはミイラなの? 気付いたら、皇子の隣には子爵令嬢が居て。
――魅了魔法ですか…。
国家転覆とか、王権強奪とか、大変な事は絡んでないんですよね?
いろいろ探ってましたけど、どうなったのでしょう。
――考えることに、何だか疲れちゃったサフィリーン。
第一皇子とその方が相思相愛なら、魅了でも何でもいいんじゃないんですか?
サクッと婚約解消のち、私はしばらく領地で静養しておきますね。
✂----------------------------
不定期更新です。
他サイトさまでも投稿しています。
10/09 あらすじを書き直し、付け足し?しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる