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第一部

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 どうせ最低でも一泊は野宿なのだから今から向かう、というエーリングさんに付いていき、ザムさんを探しに行く準備をした最終地点――二人が取ったという宿屋にやってきて、わたしは思わず立ち尽くした。

「はわわわわ」

 両手で口元を押さえるが、わたしの情けない声は、それはもう、ぼろぼろとこぼれている。

「かわっ……えっ、かわいい……最高……」

 テイムされた魔物用の寝床だという小屋に案内され、エーリングさんの相棒だという魔物を見て、わたしはときめきが押さえられない。

 ――猫だ。

 アルベアちゃんも大きい方だとは思っていたが、それ以上に大きな猫ちゃんだ! アルベアちゃんは大型犬か、それより少し大きいくらいだったが、エーリングさんの相棒は馬くらいの大きさがある。
 子猫が一番かわいいとか、子猫のまま大きくならないで欲しいとか、寝ぼけたことをいう人もいるけれど、猫ってだけでもう尊いんだ。大きくても大きいなりに愛おしさがある。この世に存在する猫の面積は少しでも多い方がいい。

 ひいさまと同じく長毛種の猫で、毛並みは随分と手入れされている。触らなくても、もっふもふで気持ちいいのだろうな、というのが見て分かる。

「フルーネルキャット。テイマーとして依頼をこなして生きていく奴におすすめな三大魔物の一匹だ」

「ふ、フルーネルキャット……」

 エーリングさんの説明を聞き、わたしは思わずふらふら、と巨猫――もとい、フルーネルキャットに近付く。

「さ、さわっても……?」

「いいぜ」

 エーリングさんの許可が出たので、わたしはフルーネルキャットに触る。

「――……!!!」

 予想以上に手が沈む。ひいさまの手入れは欠かさないから、彼女も随分とふわっふわに仕上がっているが、その比ではない。実家にあった毛皮の高級コートにも勝る。侯爵家愛用のコートより触り心地いいって何?
 夢中になってもふもふとしていると、ごろごろと喉が鳴る音が聞こえる。体が大きいからか、聞こえてくる声も大きい。

「ひ、人懐っこいんですね?」

 感激と興奮で、わたしの声が震える。生きててよかった。いや、この場合は死んでよかったのが正しいのか?

「ああ、フルーネルキャットはどいつもこいつも大人しい性格だからな。とりわけ、アタシの相棒は甘えん坊だよ」

 この猫様と出かけるの? 最高か? いや、目的は人探し。ザムさんを見つけるために行くのだ。それは忘れてないんだけど……。

「――なぉん?」

 体のサイズからは想像できないほどの可愛らしい鳴き声。わたしは思わずフルーネルキャットに抱きついた。
 目的は忘れていない。でも、これは抱きつかずにはいられなかった。めっちゃいい匂いしゅる……。
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