64 / 102
第一部
64
しおりを挟む
シャンシャットちゃんに案内され、わたしは男性を引きずりながら、彼の部屋へとたどり着いた。こじ開けられたのか、扉のドアノブと鍵の部分は壊れていて、少しだけ開いているような状態だ。
ちなみに、アビィさんは本当に最後まで手伝ってくれなかった。ぼろぼろのザムさんが、気を使って手を貸してくれようとしたくらいである。流石に断ったが。
大変とはいえ、階段を上ることに比べたらだいぶ楽だった。息切れが治らないけど。
「ぜえ……ぜえ……、っ、おらぁ!」
最後の力を振り絞って、扉を開け、部屋の中へと男性を入れる。もはや侯爵令嬢だったころの名残なんてかけらもない叫びをあげながら。
部屋の中はそれはもう、すごかった。紙と本が散乱していて、家の中なのに『道』ができている。明らかにここを通っているんだな、と分かるくらい、唯一床が見えている道があるのだ。一直線に。研究、とやらをする机の場所に向かって。
部屋の左右には本棚が天井までぎっちりの高さでそびえているが、中身は半分以上ない。多分、本来ならば、この部屋に散乱している本たちが収まっていたのだろう。
研究に必要だから、と引っ張り出して、そのまま戻さなかったに違いない。
『ごすじんさま、ここ、おいてにゃ』
そう言って、シャンシャットちゃんがよじ登ったのはソファ。多分、二人掛けだろう。この人が寝るには狭いように見えるけど……魔法で睡眠を管理するってことは、寝心地はあんまり関係ないのかな。
っていうか、ソファの上!? 持ち上げらんないんですが!?
すでに腕はぷるぷるで、引きずるのも限界である。
「い、いや、ちょっと流石に難しいかな……」
『おいてにゃあ』
「よろこんで!!!」
あざとく首を傾げられてしまってはうなずくしかない。
わたしは部屋の入口から、男性をさらに引きずる。……通れる場所が狭くて、結構、積み上げた本が崩れてなだれを起こしたり、床にあった紙がぐしゃぐしゃと、男性と共に引きずられているけど……知らない。そこまで面倒見切れないもの。
「――ッ、っしょ!」
半ば投げ捨てるように、男性をソファの上に置く。その衝撃で、近くにあった机の上の紙束がバサバサと床の上に落ちた。……紙だし、セーフでしょ。研究道具が落下して壊れた、とかだと一大事かもしれないけど、拾えばいいだけである。本と紙が散乱している中、果たしてすぐに拾い切れるものなのかは知らないけど。
全部乗り切らなかったけど、それはどうしようもない。もとより、全部乗るとは思ってなかったし。
『ありがとにゃあ』
シャンシャットちゃんは、わたしにお礼を言うと、ソファの背もたれの上に置いてあった眼鏡を、ちょいちょい、と男性の上に落とした。猫がいたずらでよくやるようなアレである。
すると、一瞬、パッとソファを中心に、地面が光った。……物が散乱していて、かすかにしか分からなかったけど。
「ん、んん……レティ、もう朝?」
先ほど、どれだけ乱暴にゆすっても起きなかった男性が目を覚まし、がしがしと頭を掻きながら起き上がった。
ちなみに、アビィさんは本当に最後まで手伝ってくれなかった。ぼろぼろのザムさんが、気を使って手を貸してくれようとしたくらいである。流石に断ったが。
大変とはいえ、階段を上ることに比べたらだいぶ楽だった。息切れが治らないけど。
「ぜえ……ぜえ……、っ、おらぁ!」
最後の力を振り絞って、扉を開け、部屋の中へと男性を入れる。もはや侯爵令嬢だったころの名残なんてかけらもない叫びをあげながら。
部屋の中はそれはもう、すごかった。紙と本が散乱していて、家の中なのに『道』ができている。明らかにここを通っているんだな、と分かるくらい、唯一床が見えている道があるのだ。一直線に。研究、とやらをする机の場所に向かって。
部屋の左右には本棚が天井までぎっちりの高さでそびえているが、中身は半分以上ない。多分、本来ならば、この部屋に散乱している本たちが収まっていたのだろう。
研究に必要だから、と引っ張り出して、そのまま戻さなかったに違いない。
『ごすじんさま、ここ、おいてにゃ』
そう言って、シャンシャットちゃんがよじ登ったのはソファ。多分、二人掛けだろう。この人が寝るには狭いように見えるけど……魔法で睡眠を管理するってことは、寝心地はあんまり関係ないのかな。
っていうか、ソファの上!? 持ち上げらんないんですが!?
すでに腕はぷるぷるで、引きずるのも限界である。
「い、いや、ちょっと流石に難しいかな……」
『おいてにゃあ』
「よろこんで!!!」
あざとく首を傾げられてしまってはうなずくしかない。
わたしは部屋の入口から、男性をさらに引きずる。……通れる場所が狭くて、結構、積み上げた本が崩れてなだれを起こしたり、床にあった紙がぐしゃぐしゃと、男性と共に引きずられているけど……知らない。そこまで面倒見切れないもの。
「――ッ、っしょ!」
半ば投げ捨てるように、男性をソファの上に置く。その衝撃で、近くにあった机の上の紙束がバサバサと床の上に落ちた。……紙だし、セーフでしょ。研究道具が落下して壊れた、とかだと一大事かもしれないけど、拾えばいいだけである。本と紙が散乱している中、果たしてすぐに拾い切れるものなのかは知らないけど。
全部乗り切らなかったけど、それはどうしようもない。もとより、全部乗るとは思ってなかったし。
『ありがとにゃあ』
シャンシャットちゃんは、わたしにお礼を言うと、ソファの背もたれの上に置いてあった眼鏡を、ちょいちょい、と男性の上に落とした。猫がいたずらでよくやるようなアレである。
すると、一瞬、パッとソファを中心に、地面が光った。……物が散乱していて、かすかにしか分からなかったけど。
「ん、んん……レティ、もう朝?」
先ほど、どれだけ乱暴にゆすっても起きなかった男性が目を覚まし、がしがしと頭を掻きながら起き上がった。
205
あなたにおすすめの小説
メインをはれない私は、普通に令嬢やってます
かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール
けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・
だから、この世界での普通の令嬢になります!
↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
白いもふもふ好きの僕が転生したらフェンリルになっていた!!
ろき
ファンタジー
ブラック企業で消耗する社畜・白瀬陸空(しらせりくう)の唯一の癒し。それは「白いもふもふ」だった。 ある日、白い子犬を助けて命を落とした彼は、異世界で目を覚ます。
ふと水面を覗き込むと、そこに映っていたのは―― 伝説の神獣【フェンリル】になった自分自身!?
「どうせ転生するなら、テイマーになって、もふもふパラダイスを作りたかった!」 「なんで俺自身がもふもふの神獣になってるんだよ!」
理想と真逆の姿に絶望する陸空。 だが、彼には規格外の魔力と、前世の異常なまでの「もふもふへの執着」が変化した、とある謎のスキルが備わっていた。
これは、最強の神獣になってしまった男が、ただひたすらに「もふもふ」を愛でようとした結果、周囲の人間(とくにエルフ)に崇拝され、勘違いが勘違いを呼んで国を動かしてしまう、予測不能な異世界もふもふライフ!
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
異世界で目覚めたら、もふもふ騎士団に保護されてました ~ちびっ子だけど、獣人たちの平穏のためお世話係がんばります!!~
ありぽん
ファンタジー
神のミスで命を落とした芽依は、お詫びとして大好きな異世界へ転生させてもらえることに。だが転生の際、またしても神のミスで、森の奥地に幼女の姿で送られてしまい。転生の反動で眠っていた瞳は、気づかないうちに魔獣たちに囲まれてしまう。
しかしそんな危機的状況の中、森を巡回していた、獣人だけで構成された獣騎士団が駆け付けてくれ、芽依はどうにかこの窮地を切り抜けることができたのだった。
やがて目を覚ました芽依は、初めは混乱したものの、すぐに現状を受け入れ。またその後、同じ種族の人間側で保護する案も出たが、ある事情により、芽依はそのまま獣騎士団の宿舎で暮らすことに。
そこで芽依は、助けてくれた獣騎士たちに恩を返すため、そして日々厳しい任務に向かう獣人たちが少しでも平穏に過ごせるようにと、お世話係を買って出る。
そんな芽依に、当初は不安だった獣人たちだったが、元気で明るい瞳の存在は、次第に獣人たちの力となっていくのだった。
これはちびっ子転生者の芽依が、獣人や魔獣たちのために奮闘し、癒しとなっていく。そんな、ほっこりまったり? な物語。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革
うみの渚
ファンタジー
八歳の時に木から落ちて頭を打った衝撃で、前世の記憶が蘇った主人公。
優しい家族に恵まれたが、家はとても貧乏だった。
家族のためにと、前世の記憶を頼りに寂れた領地を皆に支えられて徐々に発展させていく。
主人公は、魔法・知識チートは持っていません。
加筆修正しました。
お手に取って頂けたら嬉しいです。
婚約破棄された地味姫令嬢は獣人騎士団のブラッシング係に任命される
ゴルゴンゾーラ三国
恋愛
社交界で『地味姫』と嘲笑されている主人公、オルテシア・ケルンベルマは、ある日婚約破棄をされたことによって前世の記憶を取り戻す。
婚約破棄をされた直後、王城内で一匹の虎に出会う。婚約破棄と前世の記憶と取り戻すという二つのショックで呆然としていたオルテシアは、虎の求めるままブラッシングをしていた。しかしその虎は、実は獣人が獣の姿になった状態だったのだ。
虎の獣人であるアルディ・ザルミールに気に入られて、オルテシアは獣人が多く所属する第二騎士団のブラッシング係として働くことになり――!?
【この作品は、別名義で投稿していたものを加筆修正したものになります。ご了承ください】
【この作品は『小説家になろう』『カクヨム』にも掲載しています】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる