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第一部
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それは流石に難しいでしょ、と思っていたのだが、イベリスさんはあっさりと、「別にいいんじゃない?」と言ってのけた。
「ノルンとヴォジアで必須スキル足りてるし、売り上げ的にも一人、二人増えたところで大丈夫だと思うし」
「え、え、え」
予想外の反応に、わたしは慌ててしまう。
ちなみに、必須スキルとは、店を経営していく上で、必要なスキルのことで、そのスキルを持っている人間を雇うことが法律で定められているのだと、わたしが聞く前にこっそりとザムさんが教えてくれた。
……でも、確かに、あの店って、すごく条件がいいんだよね。
わたしがアルベアちゃんを世話しているときには、最初から住み込みの仕事として雇ってもらったから部屋代はかからなかったけど、今後も部屋代さえ払えば住み込みにさせてもらえる可能性は十分ある。
アルベアちゃんの世話をしていた頃よりは給料が下がるだろうから、住み込みが厳しいかもしれないが、今更、ショドーとひいさまがいるのは無理、とはならないだろう。
「給料はノルンが決めると思うけど……ノルンとヴォジアが、多いときでマイレイク銀貨三枚、普段はレギーヌ銀貨二十五枚前後を月にもらっているから、それより少なくて……二十行かないくらいじゃない?」
レギーヌ銀貨、というと……確か表面に女性の絵が彫り込まれている方だよね。マイレイク銀貨は男性の絵だったはず。
この世界、王制国家だと、大体、金貨と銀貨、銅貨がそれぞれ二種類ずつ存在する。男性の絵が国王で、女性の絵が王妃。国王が即位するたびに新しく作り変えられる。
で、マイレイク様がこの国の国王で、レギーヌ様は王妃で。――その銀貨となると、一枚で一万くらいだから……二十万いくかいかないか、ってところ? マイレイク銀貨は一枚十万くらいになるから、ノルンさんとヴォジアさんは月に二十五~三十万稼いでいるのか。
ちなみに、アルベアちゃんを世話していたときは、一日で、レギーヌ銀貨、二、三枚もらっていました。日給二、三万ということ。やばいよね。
閑話休題。
あの店の宿代、長い期間まとめて借りると少し安くなって、一週間でレギーヌ銀貨二枚で借りられるから……うん、宿代払っても、なんとかなる。
並みのお嬢様なら耐えられないかもしれないが、わたしは庶民暮らしをした前世の記憶がある令嬢なので。ショドーとひいさまと健康的に暮らせれば、贅沢ができなくても十分なのだ。
……えっ、だいぶ魅力的な話だな?
「……わたし、ネコ科限定での、テイムスキルしかないんですけど、いいんですか?」
確認のため聞くが、イベリスさんは「いいよ」と適当そうな返事しかしない。歓迎、というか、本当にどうでもいいから好きにしたら、という風ではあるが。
「……ありが――」
「じゃ、うちの従業員になったのなら、これお願いね」
わたしが礼を言い切るより早く、イベリスさんが何かを握らせてきた。……紙?
単語が箇条書きに並べられた小さな紙で……これ、買い出しメモか?
「やー、オレが入りにくい店もあって困ってたんだよね。じゃ、よろしく」
わたしの返事も待たずにイベリスさんは颯爽と去っていく。……この人、もとよりわたしにおつかいを押し付けるつもりだったな?
「……ともあれ、仕事が見つかってよかったな? 俺もアルベアを迎えに、どうせ店へ行くから手伝うよ」
「……ありがとうございます」
わたしはザムさんへと礼を言う。
なんだか、イベリスさんには雇ってもらった礼を言わなくてもいい気がしてきた。
「ノルンとヴォジアで必須スキル足りてるし、売り上げ的にも一人、二人増えたところで大丈夫だと思うし」
「え、え、え」
予想外の反応に、わたしは慌ててしまう。
ちなみに、必須スキルとは、店を経営していく上で、必要なスキルのことで、そのスキルを持っている人間を雇うことが法律で定められているのだと、わたしが聞く前にこっそりとザムさんが教えてくれた。
……でも、確かに、あの店って、すごく条件がいいんだよね。
わたしがアルベアちゃんを世話しているときには、最初から住み込みの仕事として雇ってもらったから部屋代はかからなかったけど、今後も部屋代さえ払えば住み込みにさせてもらえる可能性は十分ある。
アルベアちゃんの世話をしていた頃よりは給料が下がるだろうから、住み込みが厳しいかもしれないが、今更、ショドーとひいさまがいるのは無理、とはならないだろう。
「給料はノルンが決めると思うけど……ノルンとヴォジアが、多いときでマイレイク銀貨三枚、普段はレギーヌ銀貨二十五枚前後を月にもらっているから、それより少なくて……二十行かないくらいじゃない?」
レギーヌ銀貨、というと……確か表面に女性の絵が彫り込まれている方だよね。マイレイク銀貨は男性の絵だったはず。
この世界、王制国家だと、大体、金貨と銀貨、銅貨がそれぞれ二種類ずつ存在する。男性の絵が国王で、女性の絵が王妃。国王が即位するたびに新しく作り変えられる。
で、マイレイク様がこの国の国王で、レギーヌ様は王妃で。――その銀貨となると、一枚で一万くらいだから……二十万いくかいかないか、ってところ? マイレイク銀貨は一枚十万くらいになるから、ノルンさんとヴォジアさんは月に二十五~三十万稼いでいるのか。
ちなみに、アルベアちゃんを世話していたときは、一日で、レギーヌ銀貨、二、三枚もらっていました。日給二、三万ということ。やばいよね。
閑話休題。
あの店の宿代、長い期間まとめて借りると少し安くなって、一週間でレギーヌ銀貨二枚で借りられるから……うん、宿代払っても、なんとかなる。
並みのお嬢様なら耐えられないかもしれないが、わたしは庶民暮らしをした前世の記憶がある令嬢なので。ショドーとひいさまと健康的に暮らせれば、贅沢ができなくても十分なのだ。
……えっ、だいぶ魅力的な話だな?
「……わたし、ネコ科限定での、テイムスキルしかないんですけど、いいんですか?」
確認のため聞くが、イベリスさんは「いいよ」と適当そうな返事しかしない。歓迎、というか、本当にどうでもいいから好きにしたら、という風ではあるが。
「……ありが――」
「じゃ、うちの従業員になったのなら、これお願いね」
わたしが礼を言い切るより早く、イベリスさんが何かを握らせてきた。……紙?
単語が箇条書きに並べられた小さな紙で……これ、買い出しメモか?
「やー、オレが入りにくい店もあって困ってたんだよね。じゃ、よろしく」
わたしの返事も待たずにイベリスさんは颯爽と去っていく。……この人、もとよりわたしにおつかいを押し付けるつもりだったな?
「……ともあれ、仕事が見つかってよかったな? 俺もアルベアを迎えに、どうせ店へ行くから手伝うよ」
「……ありがとうございます」
わたしはザムさんへと礼を言う。
なんだか、イベリスさんには雇ってもらった礼を言わなくてもいい気がしてきた。
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