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第一部
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わたし一人では持ちきれない分の荷物をザムさんに持ってもらいながら、わたしは店へと戻る。個数というか、サイズ感的には持てるんだけど、重さが無理だった。
まあ、本来ならイベリスさんが買ってくるはずだったものだから、それなりに重くても大丈夫だったのだろう。わたしには無理だったけど。
宿屋でもあり飲食店でも店で働くのなら、もう少し力はつけた方がいいのかな。筋力も体力もあって困るものではないだろう。
店に入ると、すぐにヴォジアさんが気が付いてくれる。どうやら掃除をしていたようだ。逆に、お客さんは一人もいない。昼営業はとっくに終わっている時間だから、当然と言えば当然か。
そういえば、お昼、食べ損ねたな……。今の時間からがっつりお昼を食べれば、夕食のときにはお腹がすいていなくて、逆に寝る直前に空腹になってしまうやつだ。ショドーとひいさまのご飯を少し用意するだけにして、わたしは我慢しよう。
「どうしたんだ、その荷物」
「イベリスさんの代わりに買い出しへ行ってきました」
「俺はその手伝い」
わたしとザムさんが答えると、ヴォジアさんは呆れたように「あの人は……」と言いながら、わたしが持っていた荷物を受け取ってくれる。
「……仕事は見つかったのか?」
受け取った荷物を片付けつつも、こちらをちらちら見ながらヴォジアさんがわたしに聞いてきた。仕事を探しに行ってくる、とヴォジアさんには言わなかったけれど、ノルンさん経由で聞いたのかもしれない。彼には、仕事が見つかるまでもう少しここの宿を借りる、と言ってお金を渡していたから。
「イベリスさんが、このまま雇ってくれるそうです。このおつかいが初仕事ですね」
「……お前、猫族のテイマースキル以外何か持ってたのか?」
「何もないですけど、店がつぶれなければいいから雇ってもいい、って言われました」と言うと、なんとも呆れたような表情を見せる。経営に適当なのは、いつものことらしい。
「これからお世話になります。スキルはないけれど、教えてもらえれば頑張って仕事を覚えますので」
わたしは軽く頭を下げ――ふと、思い出して顔を上げた。
「そういえば……ここの店って、名前、なんでしたっけ?」
考えてみれば、店の名前を聞いていない。教えてくれなかったし、そもそも聞こうという発想にならなかった。外に出るな、とは言われないなかったけど、ほとんどアルベアちゃんの世話ばかりで、外に出ることもなかったから、看板を見ることもなかったし。
「……今更?」
ヴォジアさんが何か言いたげな表情を見せた。わたしも今更だと思うけど、知らないものは仕方がない。
「そもそも、ここに連れられてきたとき、ヴォジアさんの名前すら知らなかったですし」
猫族の魔物がいる、という言葉につられてほいほいやってきたくらいだからね。
ヴォジアさんも、当時のやり取りを思い出したのか、少し気まずそうな咳ばらいをしてから、名前を教えてくれた。
「……『鈎猫(かぎねこ)亭』だよ」
鈎猫! かぎしっぽの猫、あたりが名前の由来だろうか? 縁起よさそう。
国を追放されたり、所持品をほとんど全部盗まれてしまったときはどうなるかと思ったけど――ここから、わたしのお猫様生活は始まるのだ!
ショドーとひいさまのためにも、頑張るぞ!
まあ、本来ならイベリスさんが買ってくるはずだったものだから、それなりに重くても大丈夫だったのだろう。わたしには無理だったけど。
宿屋でもあり飲食店でも店で働くのなら、もう少し力はつけた方がいいのかな。筋力も体力もあって困るものではないだろう。
店に入ると、すぐにヴォジアさんが気が付いてくれる。どうやら掃除をしていたようだ。逆に、お客さんは一人もいない。昼営業はとっくに終わっている時間だから、当然と言えば当然か。
そういえば、お昼、食べ損ねたな……。今の時間からがっつりお昼を食べれば、夕食のときにはお腹がすいていなくて、逆に寝る直前に空腹になってしまうやつだ。ショドーとひいさまのご飯を少し用意するだけにして、わたしは我慢しよう。
「どうしたんだ、その荷物」
「イベリスさんの代わりに買い出しへ行ってきました」
「俺はその手伝い」
わたしとザムさんが答えると、ヴォジアさんは呆れたように「あの人は……」と言いながら、わたしが持っていた荷物を受け取ってくれる。
「……仕事は見つかったのか?」
受け取った荷物を片付けつつも、こちらをちらちら見ながらヴォジアさんがわたしに聞いてきた。仕事を探しに行ってくる、とヴォジアさんには言わなかったけれど、ノルンさん経由で聞いたのかもしれない。彼には、仕事が見つかるまでもう少しここの宿を借りる、と言ってお金を渡していたから。
「イベリスさんが、このまま雇ってくれるそうです。このおつかいが初仕事ですね」
「……お前、猫族のテイマースキル以外何か持ってたのか?」
「何もないですけど、店がつぶれなければいいから雇ってもいい、って言われました」と言うと、なんとも呆れたような表情を見せる。経営に適当なのは、いつものことらしい。
「これからお世話になります。スキルはないけれど、教えてもらえれば頑張って仕事を覚えますので」
わたしは軽く頭を下げ――ふと、思い出して顔を上げた。
「そういえば……ここの店って、名前、なんでしたっけ?」
考えてみれば、店の名前を聞いていない。教えてくれなかったし、そもそも聞こうという発想にならなかった。外に出るな、とは言われないなかったけど、ほとんどアルベアちゃんの世話ばかりで、外に出ることもなかったから、看板を見ることもなかったし。
「……今更?」
ヴォジアさんが何か言いたげな表情を見せた。わたしも今更だと思うけど、知らないものは仕方がない。
「そもそも、ここに連れられてきたとき、ヴォジアさんの名前すら知らなかったですし」
猫族の魔物がいる、という言葉につられてほいほいやってきたくらいだからね。
ヴォジアさんも、当時のやり取りを思い出したのか、少し気まずそうな咳ばらいをしてから、名前を教えてくれた。
「……『鈎猫(かぎねこ)亭』だよ」
鈎猫! かぎしっぽの猫、あたりが名前の由来だろうか? 縁起よさそう。
国を追放されたり、所持品をほとんど全部盗まれてしまったときはどうなるかと思ったけど――ここから、わたしのお猫様生活は始まるのだ!
ショドーとひいさまのためにも、頑張るぞ!
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