22 / 111
22
「――できったぁ……とと、あれ?」
ようやく今日学ぶ範囲の最後までテキストの問題を解くことができて、思わず声を上げてしまい、慌てて口元を押さえていたのだが、気が付けばオクトール様の姿がどこにも見当たらなかった。
集中していて、部屋から出て行ったのに気が付かなかったのだろうか。
それにしても、わたしを置いて出ていくとは、なんと不用心な……。一人にしても大丈夫、と、最低限そのくらいは信用されているんだろうか。まあ、この部屋、家具ばかりで何か盗むようなものも見当たらないんだけど。そもそも侯爵令嬢だから物を盗む必要もないわけだが……。
特に何も言われていないから、ここで待っていればいいんだろうか。
広い部屋のどこにもオクトール様がいない、と、辺りを見回していると、ふと、少しだけ開いている扉を見つける。廊下に繋がる扉ではなく、いつも閉まっている。
もしかして、あの扉の先に、オクトール様がいるんだろうか。でも、勝手に扉を開けるのはな……。人の部屋だし、許可もなく動き回るのは気が引ける。
かといって、いつ戻ってくるのかも分からないし。
「……開けなければセーフかしら」
わたしは少しばかり開いている扉の前に立つ。本当に隙間が少し開いているだけなので、中を見ることはできない。多分、この開き具合、意外と勢いが足りなくてちゃんと閉まらなかった、とか、そんな感じだと思う。
「オクトール様ー、いらっしゃいますかー?」
わたしは扉に向かって声をかける。声を張り上げたわけじゃないけど、扉が開いているのなら声は届くだろう。
この扉の先にいる、というわたしの予想は当たっていたようで、「少し待ってくれ!」というオクトール様の声が聞こえた。
言われた通り、扉の前で待っていると、ばたばたという足音が聞こえてきて、扉が開かれた。
思ったよりも勢いよく扉が開く。わたしはとっさに背後へ後ずさりした。あのまま立っていたら顔面に扉がぶつかる。
「ごめ――っ、すまない」
オクトール様は、ずれていた眼鏡を一瞬で直す。ものすごい早業だ。
「中、入って」
オクトール様越しに見えるのは、なにやら散乱している部屋だ。本は山積みになっているし、紙も散らばっている。なにやらよく分からない道具も並んでいるし……物置か?
「これでも片付けた方なんだが……普段、研究室にはノーディーニ以外入れないんだ。少なくとも、一見して分かる足の踏み場は作ったから、君でも歩けるはずだ」
……研究室だった。よかった、物置ですか? とか聞かなくて。
ようやく今日学ぶ範囲の最後までテキストの問題を解くことができて、思わず声を上げてしまい、慌てて口元を押さえていたのだが、気が付けばオクトール様の姿がどこにも見当たらなかった。
集中していて、部屋から出て行ったのに気が付かなかったのだろうか。
それにしても、わたしを置いて出ていくとは、なんと不用心な……。一人にしても大丈夫、と、最低限そのくらいは信用されているんだろうか。まあ、この部屋、家具ばかりで何か盗むようなものも見当たらないんだけど。そもそも侯爵令嬢だから物を盗む必要もないわけだが……。
特に何も言われていないから、ここで待っていればいいんだろうか。
広い部屋のどこにもオクトール様がいない、と、辺りを見回していると、ふと、少しだけ開いている扉を見つける。廊下に繋がる扉ではなく、いつも閉まっている。
もしかして、あの扉の先に、オクトール様がいるんだろうか。でも、勝手に扉を開けるのはな……。人の部屋だし、許可もなく動き回るのは気が引ける。
かといって、いつ戻ってくるのかも分からないし。
「……開けなければセーフかしら」
わたしは少しばかり開いている扉の前に立つ。本当に隙間が少し開いているだけなので、中を見ることはできない。多分、この開き具合、意外と勢いが足りなくてちゃんと閉まらなかった、とか、そんな感じだと思う。
「オクトール様ー、いらっしゃいますかー?」
わたしは扉に向かって声をかける。声を張り上げたわけじゃないけど、扉が開いているのなら声は届くだろう。
この扉の先にいる、というわたしの予想は当たっていたようで、「少し待ってくれ!」というオクトール様の声が聞こえた。
言われた通り、扉の前で待っていると、ばたばたという足音が聞こえてきて、扉が開かれた。
思ったよりも勢いよく扉が開く。わたしはとっさに背後へ後ずさりした。あのまま立っていたら顔面に扉がぶつかる。
「ごめ――っ、すまない」
オクトール様は、ずれていた眼鏡を一瞬で直す。ものすごい早業だ。
「中、入って」
オクトール様越しに見えるのは、なにやら散乱している部屋だ。本は山積みになっているし、紙も散らばっている。なにやらよく分からない道具も並んでいるし……物置か?
「これでも片付けた方なんだが……普段、研究室にはノーディーニ以外入れないんだ。少なくとも、一見して分かる足の踏み場は作ったから、君でも歩けるはずだ」
……研究室だった。よかった、物置ですか? とか聞かなくて。
あなたにおすすめの小説
政治家の娘が悪役令嬢転生 ~前パパの教えで異世界政治をぶっ壊させていただきますわ~
巫叶月良成
ファンタジー
政治家の娘として生まれ、父から様々なことを学んだ少女が異世界の悪徳政治をぶった切る!?
////////////////////////////////////////////////////
悪役令嬢に転生させられた琴音は政治家の娘。
しかしテンプレも何もわからないまま放り出された悪役令嬢の世界で、しかもすでに婚約破棄から令嬢が暗殺された後のお話。
琴音は前世の父親の教えをもとに、口先と策謀で相手を騙し、男を篭絡しながら自分を陥れた相手に復讐し、歪んだ王国の政治ゲームを支配しようという一大謀略劇!
※魔法とかゲーム的要素はありません。恋愛要素、バトル要素も薄め……?
※注意:作者が悪役令嬢知識ほぼゼロで書いてます。こんなの悪役令嬢ものじゃねぇという内容かもしれませんが、ご留意ください。
※あくまでこの物語はフィクションです。政治家が全部そういう思考回路とかいうわけではないのでこちらもご留意を。
隔日くらいに更新出来たらいいな、の更新です。のんびりお楽しみください。
我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。
たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。
しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。
そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。
ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。
というか、甘やかされてません?
これって、どういうことでしょう?
※後日談は激甘です。
激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。
※小説家になろう様にも公開させて頂いております。
ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。
タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~
人見知りと悪役令嬢がフェードアウトしたら
渡里あずま
恋愛
転生先は、乙女ゲーの「悪役」ポジション!?
このまま、謀殺とか絶対に嫌なので、絶望中のルームメイト(魂)連れて、修道院へ遁走!!
前世(現代)の智慧で、快適生活目指します♡
「この娘は、私が幸せにしなくちゃ!!」
※※※
現代の知識を持つ主人公と、異世界の幼女がルームシェア状態で生きていく話です。ざまぁなし。
今年、ダウンロード販売を考えているのでタイトル変更しました!(旧題:人見知りな私が、悪役令嬢? しかも気づかずフェードアウトしたら、今度は聖女と呼ばれています!)そして、第三章開始しました!
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!
ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。
退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた!
私を陥れようとする兄から逃れ、
不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。
逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋?
異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。
この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?
ストーカー婚約者でしたが、転生者だったので経歴を身綺麗にしておく
犬野きらり
恋愛
リディア・ガルドニ(14)、本日誕生日で転生者として気付きました。私がつい先程までやっていた行動…それは、自分の婚約者に対して重い愛ではなく、ストーカー行為。
「絶対駄目ーー」
と前世の私が気づかせてくれ、そもそも何故こんな男にこだわっていたのかと目が覚めました。
何の物語かも乙女ゲームの中の人になったのかもわかりませんが、私の黒歴史は証拠隠滅、慰謝料ガッポリ、新たな出会い新たな人生に進みます。
募集 婿入り希望者
対象外は、嫡男、後継者、王族
目指せハッピーエンド(?)!!
全23話で完結です。
この作品を気に留めて下さりありがとうございます。感謝を込めて、その後(直後)2話追加しました。25話になりました。
家族から邪魔者扱いされた私が契約婚した宰相閣下、実は完璧すぎるスパダリでした。仕事も家事も甘やかしも全部こなしてきます
さら
恋愛
家族から「邪魔者」扱いされ、行き場を失った伯爵令嬢レイナ。
望まぬ結婚から逃げ出したはずの彼女が出会ったのは――冷徹無比と恐れられる宰相閣下アルベルト。
「契約でいい。君を妻として迎える」
そう告げられ始まった仮初めの結婚生活。
けれど、彼は噂とはまるで違っていた。
政務を完璧にこなし、家事も器用に手伝い、そして――妻をとことん甘やかす完璧なスパダリだったのだ。
「君はもう“邪魔者”ではない。私の誇りだ」
契約から始まった関係は、やがて真実の絆へ。
陰謀や噂に立ち向かいながら、互いを支え合う二人は、次第に心から惹かれ合っていく。
これは、冷徹宰相×追放令嬢の“契約婚”からはじまる、甘々すぎる愛の物語。
指輪に誓う未来は――永遠の「夫婦」。
悪役令嬢エリザベート物語
kirara
ファンタジー
私の名前はエリザベート・ノイズ
公爵令嬢である。
前世の名前は横川禮子。大学を卒業して入った企業でOLをしていたが、ある日の帰宅時に赤信号を無視してスクランブル交差点に飛び込んできた大型トラックとぶつかりそうになって。それからどうなったのだろう。気が付いた時には私は別の世界に転生していた。
ここは乙女ゲームの世界だ。そして私は悪役令嬢に生まれかわった。そのことを5歳の誕生パーティーの夜に知るのだった。
父はアフレイド・ノイズ公爵。
ノイズ公爵家の家長であり王国の重鎮。
魔法騎士団の総団長でもある。
母はマーガレット。
隣国アミルダ王国の第2王女。隣国の聖女の娘でもある。
兄の名前はリアム。
前世の記憶にある「乙女ゲーム」の中のエリザベート・ノイズは、王都学園の卒業パーティで、ウィリアム王太子殿下に真実の愛を見つけたと婚約を破棄され、身に覚えのない罪をきせられて国外に追放される。
そして、国境の手前で何者かに事故にみせかけて殺害されてしまうのだ。
王太子と婚約なんてするものか。
国外追放になどなるものか。
乙女ゲームの中では一人ぼっちだったエリザベート。
私は人生をあきらめない。
エリザベート・ノイズの二回目の人生が始まった。
⭐️第16回 ファンタジー小説大賞参加中です。応援してくれると嬉しいです
叶えられた前世の願い
レクフル
ファンタジー
「私が貴女を愛することはない」初めて会った日にリュシアンにそう告げられたシオン。生まれる前からの婚約者であるリュシアンは、前世で支え合うようにして共に生きた人だった。しかしシオンは悪女と名高く、しかもリュシアンが憎む相手の娘として生まれ変わってしまったのだ。想う人を守る為に強くなったリュシアン。想う人を守る為に自らが代わりとなる事を望んだシオン。前世の願いは叶ったのに、思うようにいかない二人の想いはーーー