ハーレム系ギャルゲの捨てられヒロインに転生しましたが、わたしだけを愛してくれる夫と共に元婚約者を見返してやります!

ゴルゴンゾーラ三国

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 そんなオクトール様の顔には、眼鏡がかかっていない。最近はわたしと二人きりか、あるいはそこにノーディーニさんが加わる場合のみ眼鏡を外していたけれど、こうして眼鏡という『武装』を外したまま、外に出ているのを見るのは初めてだ。ベルデリーンに壊されて、結果として眼鏡なしで外にいたことはあるけれど、あれは例外だろう。

「眼鏡はいいんですの?」

 明らかに忘れている様子ではないオクトール様に質問する。オクトール様は、「いいんだ」と、なんでもないことのように答えた。

「ちゃんとした姿で、君の隣に立ちたいから」

「――……っ」

 頬を染めて笑うオクトール様。そんなことを言われたら、何も言い返せないではないか。
 ……というか、わたしは『武装』をしたままなのに。いや、流石に靴を脱いで結婚式をするわけにはいかないけれど。
 でも、そんな風に言われて、わたしだけお嬢様しているのが、なんだか居心地が悪いような。謎の悔しさすらある。ずるい、とでも言うべきか。

 わたしは少し考えこんで、オクトール様にかがんでもらうようにお願いする。そして、周りにカリスやグレーリア、城のメイドがいないことを確認して、彼のこめかみのあたり、やや頬よりの場所に軽くキスをした。口紅が移らない程度に。

「好きよ、オクトール」

 『お嬢様』ではない、わたしの言葉。
 小さくささやくと、バッとオクトール様が顔を離し、耳元を手で押さえていた。
 目を丸くして驚いていたが、徐々に状況を理解していったのか、顔が赤くなり、同時に、彼の頬が緩んでいく。
 その表情の変化のなんと愛おしいことか!
 くしゃ、とオクトール様が笑って、それと同じくらいのタイミングで、扉がノックされる。

「お時間です。準備はよろしいでしょうか」

 グレーリアの声だ。もう、式の始まる時間らしい。

「オクトール様、行きましょう」

 わたしは軽くドレスが崩れていないか確認し、彼に手を差し伸べた。オクトール様が、その手を取り、エスコートしてくれる。わたしもオクトール様も二人して手袋をしているはずなのに、そんな布のへだたりなどないように、彼の体温を感じたような、錯覚があった。
 わたしは開かれた扉を、オクトール様と共にくぐる。結婚式の、式場へ向かうために。

 ――この世界に前世の記憶を持ったまま生まれて、この世界が『シックス・パレット』と酷く似た世界だと気が付いて。アインアルド王子をハーレムエンドに導こうとして、『おさがり』、なんて呼ばれるようになって、何年過ぎたのだろう。

 でも、今日のわたしは『おさがり』でも何でもない。正真正銘の主役、主人公だ。
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